ある日は絵画の話 その4
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蝶の舌(1999・スペイン)
原作・マヌエル・リバス、監督・ホセ・ルイス・クエルダ、出演・マヌエル・ロサノ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス・・
人生は情熱に燃え、儚くも尊い翼で羽ばたくことを許される。脆くて儚い人生をコツコツと築いていくこと、その人生を全体主義権力の偏執が乱暴に破壊すること。
8歳の少年モンチョが大好きな先生と出会い、大自然の驚異に触れながら成長し、やがてスペイン内戦という悲劇的な時代に直面するまでを描いた運命の物語である。
1936年、グレゴリオ先生はクラスを森に・・「ティノリンコ」という鳥は繁殖期になるとメスに蘭の花を贈ること、蝶には細くてゼンマイのように巻かれた舌があること・・先生引退の日、子供達に「自由に飛び立ちなさい!」と教える・・夏の日、先生は少年にスティーブンソンの冒険小説「宝島」と虫取り網をプレゼントする・・・ファシズムの影が忍び寄るスペイン内戦(新しい体制のもと、これまでの価値観がくずれ共和派の取締りが・・)前夜、激しく揺れ動く時代の中で、楽しい夏休みが一転・・まだ「さよなら」の仕方も知らない少年は、ある決断を迫られ・・自分の感情を裏切るか、家族の平和を脅かすか・・ラストで叫ぶ「別れの言葉」が、痛切な響きとなり・・「蝶の舌は、普段は巻かれていて見えない。花の蜜の匂いを嗅ぐと、蝶は舌を伸ばし花の奥にある蜜を吸うんだ」という先生の教えには、いつかきっと訪れる自由な世界へのメタファー(暗喩)が込められて・・「人が死ぬとどうなるの?地獄はあるの?」の問いに「あの世に地獄など無い、地獄は人間が作るものだ」と・・連れ去られる先生に、母に囁かれ「アテオ(不信人者)、アカ!」と叫ぶが、車を追って石を投げながらも「ティノリンコ!蝶の舌!」と・・
「汚れなき悪戯」「ミツバチのささやき」「エル・スール」に並び称される、好奇心に満ちた子供達の無垢な眼差しを繊細に描き出している・・
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彼女を見ればわかること(1999・アメリカ)
監督・ロドリゴ・ガルシア、出演・グレン・クローズ、ホリー・ハンター、キャシー・ベイカー、キャリスタ・フロックハート、エイミー・ブレネマン・・
L.A.郊外に住む、5人の女性の悩み多き日常とささやかな転機を描くオムニバス。
監督の父は、作家のガルシア・マルケスである。
認知症の母を介護する女性医師の心の拠り所とは・・母との会話はもはや成り立たず、何度も同僚医師に電話するも相手からはなしのつぶて。占い師は、エレインの満たされない心の空白を当て、近い将来の出会いを示唆する・・
不倫関係の末に妊娠した女性の葛藤と決断とは・・銀行支店長をしながら不倫を続けて3年。妊娠し主治医から最後のチャンスと言われるが、相手には理解されず中絶を決意するが、その前夜副支店長とベッドを共に。彼女に付き纏うホームレスの女との奇妙な関係にさえ、心を慰められ・・
思春期の息子を持つシングルマザーの新たな恋とは・・教師をしながら童話を書いているローズは15歳の息子と暮らしているが、向かいに越してきた男性が気になり・・
死に行く恋人を見つめるレズビアンの占い師は・・他人に助言するのは得意でも、恋人を喪おうとする今、途方に暮れるクリスティーン。死に向かい合うことを恐れ、心を閉ざしているのは彼女の方だった・・
盲目の妹との関係を通して愛を模索する女性刑事は・・キャシーは恋人がいないが、妹(キャメロン・ディアス)は自分の容姿に自信が有り経験も豊富。高校時代の同級生の自殺を追いながら、その話を妹にする。愛の無い人生に絶望したのだろうと泣く妹にも、弱く傷つきやすさがあるのだと気付く・・
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ナイト・オン・ザ・プラネット(1991・アメリカ)
監督・ジム・ジャームッシュ、音楽・トム・ウェイツ、出演・ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、ベアトリス・ダル、ロベルト・ベニーニ・・
同時進行の5話のオムニバス。異なるタイムゾーン・大陸・言語。タクシードライバーと客達・・夜を走り抜けながら・・車内の狭い空間で・・目的地までの、宙ぶらりんのつかの間の関係。夕暮れから宵闇のロサンジェルス→夜のニューヨーク→深夜のパリ→そしてローマ→夜が明け行くヘルシンキ。
※L.A.・・ドライバーのコーキー(ライダー)が、スカウト・エージェントの女性(ローランズ)を乗せ、チェーン・スモーキングを窘められながらも彼女の自宅に到着。そこで女優としてスカウトされるが、車のエンジニアになりたいからと断る。残念がりながらも、少し羨ましげに見送るローランズ、かっこいい!ハリウッドの論理を一蹴・・
※N.Y.・・東ドイツからの元道化師のドライバー。道も車にも詳しくなく、乗せた客に運転してもらう始末。次第に打ち解け、客の自宅まで。料金を確認しないドライバーに客が確かめろ、と。道に迷いながら、ニューヨークに戻ろうと・・ニューヨークの金の論理を一撃・・
※パリ・・見下す外交官2人を下ろし、盲目の若い女(ダル)を乗せるドライバー。指図する彼女を見下す積りで絡むが「色が見え、皮膚で愛を感じる」と。目的地のロワーズ河岸で下ろし「気をつけて」と言うが「あんたこそね」と返される。歩く彼女の耳に、車の衝突音が。「目が見えてるのか!」と怒鳴られるドライバー。人間の感性に訴えて・・
※ローマ・・司教を乗せたドライバー(ベニーニ)。セックス絡みの罪を勝手に懺悔。司教は辟易し心臓の薬を飲もうとするが、こぼして飲めずに死亡。気付いたドライバーは、公園のベンチに司教を置き去り。ベニーニのマシンガントーク。死が対照的に絡み・・
※ヘルシンキ・・雪の街で3人の酔客を拾うドライバー。寝てしまった同僚の身の不運を嘆く2人に「やっと子供を授かったが、未熟児で1週間持たないと・・辛いので愛情を持たないようにしていたが、妻に諭され、愛を掛けた矢先に死なれた・・」と。2人は痛く同情する。寝ていた客を無事に下ろし、走り去る・・これも死が対照的に描かれ・・
http://jp.youtube.com/watch?v=6USU93KPSUc
奇妙な可笑しさと卓越したセンスの会話。背景に広がる、空しさに満ちた荒涼感・・タクシーは走り続け・・
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ネオン・レイン(ジェイムズ・リー・バーク著)
ルイジアナ州、ニュー・オーリンズ。殺人課刑事デイヴ・ロビショーは、バイユー(米南部の沼や入り江)で黒人娼婦の死体を発見。真相を隠そうとする一団から次々と命を狙われ、警察を停職させられてまでも 巨悪を追求する為に孤独な闘いをする。高潔で知性があり、正義の怒りを持ち、同情心と悔恨を忘れない・・
デイヴ・・元アル中、妻に逃げられ、ベトナム帰り、競馬狂。オールド・ジャズのファンで、湖に浮かべたハウスボートで暮らすケイジャン(カナダからルイジアナに入植したフランス人の子孫で、ミシシッピ河口からテキサス州境に住む人々)である。あだ名は、ストリーク(縞頭)、頭髪に縞が走っている。
ニュー・オーリンズ・・ジャズと欲望の街といわれ、ジャズの発祥の地であり「欲望という名の電車」が撮られた所である。雨の街でもあり、アメリカのヨーロッパとも言われるほど美しい街でもあるとか。それでも、中南米系のマフィアの進出や麻薬の蔓延、メキシコ湾から吹き上げる風がバイユー・カントリー(湖沼地帯)を湿らせる。
作者が文学出だとかでその要素が強く、リリシズム・緻密な人物造形やプロット・ローカル色が高い。狂気と背中合わせの全ての関係者にひとり関わり、裏切りや狎れ合いの中一つずつ決まりを付けていく様子が一人称で語られる・・中には良き上司もいて優秀な警官として認められもするが、苦い結末の後、職を退き恋人と貸しボート屋を始める・・「バイユーの水面に囁きのように落ちる紅葉、自然のサイクルに合わせて生き、季節のなすがままに任せるのは罪ではない。秋の空はマッチを擦れそうなほど硬い青をし、黄色い陽光は樫の樽に寝かされていたように柔らかい・・」
詩情豊かなハードボイルド。後の「シマロン・ローズ」も読んでみたい。
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パリ、ジュテーム(2006・フランス)
監督・ブリュノ・ポタリデス・・、出演・ジーナ・ローランズ、ジェラール・ドパルデュー、スティーヴ・ブシェミ・・
18編×5分のオムニバス作品である。パリの街のそれぞれの場所のエピソードが綴られる。一見バラバラな話がごく自然に繋がっていて、美しいハーモニーを醸し出している。
チェイルリー駅で、アメリカ人の男性がチョットした騒動に巻き込まれ(ブシェミ)・・カルチェラタンで、初老の夫婦が粋なやり取りをし(ローランズ)・・盲目の学生は、電話で恋人から突然の別れを告げられ・・息子を亡くした女性は、夜のヴィトワール広場でカウボーイと出会い(ビノシュ)・・深夜のマドレーヌ界隈で、人間を襲ったばかりのヴァンパイアと出くわすバックパッカーの青年(イライジャ・ウッド)・・印刷所に現れた青年は、そこで下働きをしている青年に電話番号を残し(ギャスパー・ウリエル)・・セーヌ河畔で、友人とナンパしていた青年がアラブ系の女性に惹かれ・・愛人のいる男が妻に別れを切り出そうとした時、妻が末期の白血病と知らされ・・移民の女性が朝も暗いうちから子供を預け、ベビー・シッターをし子守唄を・・
街のそこここでの出逢い・別れ・通りを駆け抜け・微笑・・パリの街へのオマージュ・・
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コーヒー&シガレッツ(2003・アメリカ)
監督・ジム・ジャームッシュ、出演・ロベルト・ベニーニ、ケイト・ブランシェット、スティーヴ・ブシェミ、ルネ・フレンチ・・
コーヒーと煙草をテーマにした11編のオムニバスである。モノクロ映像で、センスのいい音楽とユーモアがある。ジャームッシュが18年の歳月を掛けて、80年代から現代までのそれぞれを描き、観る人各人の映画体験を呼び覚ますようだ。永遠の時を刻み続けるのが、カフェインと紫煙。そこには、緩くて粋な時間が流れている・・
☆変な出会い(ベニーニ)・・外のカフェテリア、二人の男、コーヒーを置き換えたり、掛ける椅子を換えたり、相手の診察券で歯医者へ・・
☆双子(ブシェミ)・・双子がコーヒーを飲みながら服や靴のことで言い合いを、ウエイターのブシェミ現れコミカルに絡む・・
☆ルネ(ルネ)・・ルネが雑誌を読みながら煙草とコーヒーを、ウエイター何度も現れコーヒーを注ごうとする・・
☆問題なし・・久しぶりに会った友人同士、会いたかっただけという友人に何かあったのだろうと最後まで疑っているもう一人・・
☆いとこ同士(ブランシェット)・・女優のケイトがホテルのロビーで従姉妹に会う、ケイトの一人二役・・
☆幻覚(ビル・マーレイ)・・二人の男がコーヒーを、バイトのマーレイ現れポットのままコーヒーを・・
☆シャンパン・・老いた男二人、仕事の休憩中に不味いコーヒーをシャンパンと思おうと言う、寝るから休憩終わりに起こしてくれ、もう2~3分しか・・
淡々とした日常の風景が、他愛も無い会話のそこここに漂っている・・
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デッド・カーム(1988・アメリカ・オーストラリア)
製作・ジョージ・ミラー、監督・フィリップ・ノリス、出演・ニコール・キッドマン、サム・ニール、ビリー・ゼーン
息子を事故で喪ったジョン(ニール)とレイ(キッドマン)夫婦は、傷を癒すためにヨットでの旅に出る・・そこへ、小型ボートで漂流していた男ヒューイ(ゼーン)と遭遇・・助けを求めてきた男の説明によると・・乗務員が全員、食中毒で死亡したと・・男の様子や話に疑問を感じたジョンは男をキャビンに閉じ込め、その帆船の様子を見に行く・・そこには、殺害された男女の遺体があり・・ジョンはヨットに戻ろうとしたが、男に乗っ取られたヨットはジョンを置き去りに・・沈没しかかった船で、一人奮闘するジョン・・興奮気味の危なげな男の隙を付いて、ジョンを助けに戻ろうと奮闘するレイ・・無線で、何とか意思の疎通を図ろうとするジョンとレイ・・レイがやっと男に傷を負わせ、ヨットに繋いだ救命ボートに乗せ海に・・機転とレイの助けでヨットに戻ったジョンは、男のボートを銃で撃ち・・穏やかな時間が戻り、シャンプーするレイの髪に触れる手は・・照明弾を・・
劇場未公開だが、テレビ放映されDVDにも。キッドマンのブレイク前の作品。
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