本14・・ネオン・レイン
ネオン・レイン・・ジェイムズ・リー・バーク著
ルイジアナ州、ニュー・オーリンズ。殺人課刑事デイヴ・ロビショーは、バイユー(米南部の沼や入り江)で黒人娼婦の死体を発見。真相を隠そうとする一団から次々と命を狙われ、警察を停職させられてまでも 巨悪追求に孤独な闘いをする。高潔で知性があり、正義の怒りを持ち、同情心と悔恨を忘れない。デイヴは、元アル中で妻に逃げられ、ベトナム帰りで競馬狂。オールド・ジャズのファンで、湖に浮かべたハウスボートで暮らすケイジャン(カナダからルイジアナに入植したフランス人の子孫で、ミシシッピ河口からテキサス州境に住む人々)である。あだ名は、ストリーク(縞頭)、頭髪に縞が走っている。ニュー・オーリンズはジャズと欲望の街と云われ、「欲望という名の電車」が撮られた所。雨の街でもあり、アメリカのヨーロッパとも云われるほど美しい街。それでも、中南米系のマフィアの進出や麻薬の蔓延、メキシコ湾から吹き上げる風がバイユー・カントリー(湖沼地帯)を湿らせる。
リリシズム・緻密な人物造形やプロット・ローカル色が高い。狂気と背中合わせの全ての関係者にひとり関わり、裏切りや狎れ合いの中一つずつ決まりを付けていく様子が一人称で語られる。中には良き上司もいて優秀な警官として認められもするが、苦い結末の後、職を退き恋人と貸しボート屋を始める。「バイユーの水面に囁きのように落ちる紅葉、自然のサイクルに合わせて生き、季節のなすがままに任せるのは罪ではない。秋の空はマッチを擦れそうなほど硬い青をし、黄色い陽光は樫の樽に寝かされていたように柔らかい」と。
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