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2008年8月

2008年8月28日 (木)

映画33・・めぐりあう時間たち

めぐりあう時間たち(2002・アメリカ)

Img_876767_9376336_0原作・マイケル・カニンガム、監督・スティーブン・ダルドリー、出演・ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ・・

異なる時代と場所で、三人の女性が共有する、生の不安、自分らしく生きること、社会的役割とのギャップ、死の影、レスビアニズム。時代を超え、「ダロウェイ夫人」に導かれ、一つの物語へと紡がれる、その運命的一日を綴る。

1923年、作家ヴァージニア・ウルフ(キッドマン)は、精神病の療養でロンドン郊外のリッチモンドに住み「ダロウェイ夫人」を執筆中。午後にはパーティーが。

1951年、ロサンジェルス。「ダロウェイ夫人」を読む妊娠中のローラ(ムーア)は、自分を偽り夫の望む妻を演じるのに疲れながら、息子と二人で夫のバースディ・ケーキを焼く。

2001年、ニューヨーク。「ダロウェイ夫人」と同名の編集者クラリッサ(ストリープ)は、元恋人でもある友人でエイズの作家リチャード(ローラの息子)の受賞で、パーティーの準備。

真摯に人生を全うしようとするほど圧し掛かかる、世間、肉親、他人。人生を模索する表情に隠されたもう一つの顔、言葉に隠された真意・・ヴァージニアは、自分を鮮やかに生きようと入水自殺を決行・・ローラは、自分らしく生き難い時代に、家族を捨て、息子に自殺され、一人取り残される・・クラリッサは、自我を抑えながらも公然と女性と同居・・三つのパーティー、女達は眠り、目覚め「花は、私が買ってくる」と。

繊細な傷つきやすさに満ち、苦悩の末に選び取る人生は、たとえ悲劇に見えても価値がある。

 

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2008年8月25日 (月)

絵画2・・アルフォンス・ミュシャ

アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)

ボヘミア(現・チェコ)生まれ。25歳からミュンヘン美術院、28歳からパリのジュリアンで学ぶ。チェコ時代に描いた「スラブ叙事詩」。女優サラ・ベルナール依頼のポスター「ジスモンダ」で有名。

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2008年8月21日 (木)

映画32・・蝶の舌

蝶の舌(1999・スペイン)

Img12438004zik1zj原作・マヌエル・リバス、監督・ホセ・ルイス・クエルダ、出演・マヌエル・ロサノ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス・・

人生は情熱に燃え、儚くも尊い翼で羽ばたくことを許される。脆くて儚い人生をコツコツと築くこと、その人生を全体主義権力の偏執が破壊する。

8歳の少年モンチョ(ロサノ)が、大好きなグレゴリオ先生(ゴメス)と出会い、大自然の驚異に触れながら成長、やがてスペイン内戦という悲劇的な時代に直面するまでを描く。

1936年、老先生はクラスを森に連れて行き、「ティノリンコ」という鳥は繁殖期になるとメスに蘭の花を贈ること、蝶には細くてゼンマイのように巻かれた舌があると教える。先生引退の日、子供達に「自由に飛び立ちなさい」と。夏の日、先生は少年に、スティーブンソンの冒険小説「宝島」と虫取り網をプレゼント。

ファシズムの影が忍び寄るスペイン内戦前夜、激しく揺れ動く時代の中で、楽しい夏休みが一転・・まだ「さよなら」の仕方も知らない少年は、ある決断を迫られる。自分の感情を裏切るか、家族の平和を脅かすか。先生の「蝶の舌は、普段は巻かれていて見えない。花の蜜の匂いを嗅ぐと、蝶は舌を伸ばし花の奥にある蜜を吸うんだ」という教えには、いつかきっと訪れる自由な世界へのメタファー(暗喩)が。「人が死ぬとどうなるの? 地獄はあるの?」との問いに「あの世に地獄など無い、地獄は人間が作るものだ」と・・ファシズムに反対し、繋がれて連れ去られる先生に、母に命じられ「アテオ(不信人者)、アカ!」と叫ぶが、車を追って石を投げながらも「ティノリンコ! 蝶の舌!」と叫ぶ、別れの言葉が痛切に響く。

「汚れなき悪戯」「ミツバチのささやき」「エル・スール」に並び称される、好奇心に満ちた子供達の無垢な眼差しを繊細に描く。

 

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2008年8月18日 (月)

映画31・・彼女を見ればわかること

彼女を見ればわかること(1999・アメリカ)

Things_you_can_tell_just_by_looing_監督・ロドリゴ・ガルシア、出演・グレン・クローズ、ホリー・ハンター、キャシー・ベイカー、キャリスタ・フロックハート、エイミー・ブレネマン、キャメロン・ディアス・・

L.A.郊外に住む、5人の女性の悩み多き日常と転機を描くオムニバス。

☆キーナー医師の場合・・認知症の母を介護する女性医師エレイン(クローズ)。母との会話は最早成り立たず、同僚に何度電話するも相手はつれない。占い師は、彼女の満たされない心の空白を当て、近い将来の出会いを示唆するが。

☆レベッカへの贈り物 ・・銀行支店長をしながら不倫を続けて3年のレベッカ(ハンター)。妊娠し医師から最後のチャンスと、相手に理解されず中絶を決意するが、その前夜副支店長とベッドを共に。彼女に付き纏うホームレスの女との奇妙な関係にさえ、心を慰められる。

☆ローズのための誰か・・教師をしながら童話を書いているローズ(ベイカー)は多感な15歳の息子と暮らすが、向かいに越してきた男性に好意を。

☆おやすみリリー、クリスティーン・・他人に助言するのは得意でも、恋人リリーを喪おうとする今、途方に暮れるクリスティーン(フロックハート)。死に向かい合うのを恐れ、心を閉ざしているのは彼女。

☆キャシーを待つ恋・・刑事のキャシー(ブレネマン)は恋人がいないが、盲目の妹キャロル(ディアス)は自分の容姿に自信が有り経験も豊富。高校時代の同級生の自殺を追いながら、その話を妹に。愛の無い人生に絶望したのだろうと泣く妹の、弱く傷つき易さを見る。

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2008年8月14日 (木)

映画30・・ナイト・オン・ザ・プラネット

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991・アメリカ)

41p257wbdtl監督・ジム・ジャームッシュ、出演・ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、ベアトリス・ダル、ロベルト・ベニーニ・・

同時進行の5話のオムニバス。異なるタイムゾーン、大陸、言語。タクシードライバーと客達、夜を走り抜けながら、車内の狭い空間で、目的地までの、宙ぶらりんの束の間の関係。夕暮れから宵闇のロサンジェルス→夜のニューヨーク→深夜のパリ→そしてローマ→夜が明けゆくヘルシンキ。

∇L.A.・・ドライバーのコーキー(ライダー)が、スカウト・エージェントの女性(ローランズ)を乗せ、チェーン・スモーキングを窘められながら彼女の自宅まで。そこで女優にスカウトされるが、車のエンジニアになりたいと断る。残念がり、少し羨まし気に見送るローランズ・・ハリウッドの論理を一蹴。

∇N.Y.・・東ドイツからの元道化師のドライバー。道も車にも詳しくなく、乗せた客に運転してもらう始末。次第に打ち解け、客の自宅まで。料金を確認しないドライバーに客が確かめろと。道に迷いながらニューヨークに戻る・・ニューヨークの金の論理を一撃。

∇パリ・・見下す外交官2人を降ろし、盲目の若い女(ダル)を乗せるドライバー。指図する彼女を見下す積りで絡むが「色が見え、皮膚で愛を感じる」と返される。目的地のロワーズ河岸で降ろし「気をつけて」と言うが「あんたこそね」と。歩く彼女の耳に、車の衝突音。「目が見えてるのか!」と怒鳴られるドライバー・・人間の感性に訴えて。

∇ローマ・・司教を乗せたドライバー(ベニーニ)は、セックス絡みの罪を勝手に懺悔。司教は辟易し、心臓の薬を零して飲めずに死亡。気付いたドライバーは、公園のベンチに司教を置き去り。ベニーニのマシンガントーク・・死が対照的に絡む。

∇ヘルシンキ・・雪の街で3人の酔客を拾うドライバー。寝てしまった同僚の不運を嘆く2人に「やっと子供を授かったが、未熟児で1週間保たないと。辛いので愛情を持たないようにしていたが、妻に諭され、愛を掛けた矢先に死なれた」と。2人は痛く同情。寝ていた客を無事に降ろし、走り去る・・これも死が対照的。

奇妙な可笑しさと粋な会話。背景に広がる、空しさに満ちた荒涼感・・タクシーは走り続ける。

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2008年8月11日 (月)

本14・・ネオン・レイン

ネオン・レインジェイムズ・リー・バーク著

404246601xルイジアナ州、ニュー・オーリンズ。殺人課刑事デイヴ・ロビショーは、バイユー(米南部の沼や入り江)で黒人娼婦の死体を発見。真相を隠そうとする一団から次々と命を狙われ、警察を停職させられてまでも 巨悪追求に孤独な闘いをする。高潔で知性があり、正義の怒りを持ち、同情心と悔恨を忘れない。デイヴは、元アル中で妻に逃げられ、ベトナム帰りで競馬狂。オールド・ジャズのファンで、湖に浮かべたハウスボートで暮らすケイジャン(カナダからルイジアナに入植したフランス人の子孫で、ミシシッピ河口からテキサス州境に住む人々)である。あだ名は、ストリーク(縞頭)、頭髪に縞が走っている。ニュー・オーリンズはジャズと欲望の街と云われ、「欲望という名の電車」が撮られた所。雨の街でもあり、アメリカのヨーロッパとも云われるほど美しい街。それでも、中南米系のマフィアの進出や麻薬の蔓延、メキシコ湾から吹き上げる風がバイユー・カントリー(湖沼地帯)を湿らせる。

リリシズム・緻密な人物造形やプロット・ローカル色が高い。狂気と背中合わせの全ての関係者にひとり関わり、裏切りや狎れ合いの中一つずつ決まりを付けていく様子が一人称で語られる。中には良き上司もいて優秀な警官として認められもするが、苦い結末の後、職を退き恋人と貸しボート屋を始める。「バイユーの水面に囁きのように落ちる紅葉、自然のサイクルに合わせて生き、季節のなすがままに任せるのは罪ではない。秋の空はマッチを擦れそうなほど硬い青をし、黄色い陽光は樫の樽に寝かされていたように柔らかい」と。

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2008年8月 7日 (木)

映画29・・パリ、ジュテーム

パリ、ジュテーム(2006・フランス)

Img_532834_12003714_2_2監督・ブリュノ・ポタリデス・・、出演・ジーナ・ローランズ、ジェラール・ドパルデュー、スティーヴ・ブシェミ・・

18編×5分のオムニバス。パリの街のそれぞれの場所のエピソードが綴られる。一見バラバラな話が自然に繋がり、美しいハーモニーを醸す。

チェイルリー駅で、アメリカ人の男がチョットした騒動に巻き込まれ(ブシェミ)・・カルチェラタンで、初老の夫婦が粋なやり取りをし(ローランズ)・・盲目の学生は、電話で恋人から突然の別れを告げられ・・息子を亡くした女性は、夜のヴィトワール広場でカウボーイと出会い(ビノシュ)・・深夜のマドレーヌ界隈で、人間を襲ったばかりのヴァンパイアと出くわすバックパッカーの青年(イライジャ・ウッド)・・印刷所に現れた青年は、そこで下働きをしている青年に電話番号を残し(ギャスパー・ウリエル)・・セーヌ河畔で、友人とナンパしていた青年がアラブ系の女性に惹かれ・・愛人のいる男が妻に別れを切り出そうとした時、妻が末期の白血病と聞かされ・・移民の女性が朝も暗いうちから子供を預け、ベビー・シッターをし子守唄を・・

街のそこかしこでの出逢い、別れ、通りを駆け抜け、微笑。パリの街へのオマージュ。

 

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2008年8月 4日 (月)

機織り・・その18

0807133_002藤色地の変形色紙に、古典花柄を。その上に、稲妻形の二通りの地模様を斜めに置く。

久方振りの、5枚で3セットのその1、1セット目。

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