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2008年12月 8日 (月)

本19・・国境の南、太陽の西

国境の南、太陽の西・・村上春樹著

4062060817中産階級の一人っ子として生まれたハジメは5年生の時、同じ一人っ子の島本さんと親しくなる。彼女は左足を引きずる転校生で、タフで自覚的。よく彼女の家で レコードを聴いた。ナット・キング・コールの「プリテンド」・・辛い時には幸せなフリをしよう、それはそんなに難しいことじゃない。そして「国境の南」。中学から別々に。高校2年でイズミというガールフレンドが出来たが、心を開けない。イズミの従姉の大学生と出会い、激しく惹かれあい2ヶ月間愛しもせず抱き合う。イズミに知られ後悔はするが、身勝手で残酷になれるのは自身の傾向かと。大学から出版社に就職、努力はしたが退屈。30歳になるまでの12年間を、失望と孤独と沈黙の内に過ごす。28歳、島本さんに似た女性を見かけ追いかける。30歳、旅先で知り合った有紀子と結婚。ジャズを流すバーを開き順調に。イズミから従姉の死亡通知。古い同級生から、変わってしまったイズミの消息を聞く。秋の終りの雨の夜、店に島本さんが現れ、足は手術し治り働いた事はないと。海に流れ込む綺麗な川を訊ね、2人で川へ。去年亡くしたという女の子の灰を流す。空港へ戻る途中、彼女が急病になり落ち着くものの訳は訊くなと。ハジメは今までの年月の空白を埋めたいと、彼女はその歳月を空白にしてしまいたいと。彼女が現れなくなり、人生が再び失われたと思う。半年後の雨の夜現れた時、ハジメは告げる。「しばらく・・と言うが、待っている方には長さが計れない。たぶん・・と言うが、重さが量れない言葉だ」と。レコードをプレゼントされ、2人で別荘へ。「国境の南」を聴く。彼女が「太陽の西」について語る・・シベリアの農夫が荒野に1人で住み、そこには東西南北に地平線。ある日彼の中で何かが死んでしまい、畑を耕す事を止め、西に向かって憑かれたように歩き続け、やがて倒れ死んでしまうのだと。求める彼に、全部取るか何も取らないかで中間はないと。全ての秘密を教えてくれと頼むと、明日話すと。翌朝、彼女は消えていた。痕跡も無く、レコードさえも。別荘への道中、彼女が死ぬ積りでいた事に気付く。彼女は、全てを呑み込んだまま姿を消したのだと。国境の南には「たぶん」が存在するかもしれないが、太陽の西には存在しないのだ。時間と共に不在と存在が曖昧に、現実感が遠のいて行く。ある日、島本さんに似た人を見掛けるが見失う。眩暈に襲われ眼を上げると、タクシーの窓にイズミの顔。その顔に果てしない空白。自身を取り囲んでいた島本さんの幻影と残響が、そして自分の中の何かが、音も無く決定的に途絶えてしまった。自分の中の致命的な欠落が、飢えと渇きを齎し、これからもそれに苛まれ続けていく・・

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