本25・・悪霊
悪霊・・フョードル・M・ドストエフスキー著
ネチャーエフ事件・・1869年、スイスの世界革命運動の大立者バクーニンに取り入り、70年までにロシアに大暴動を起こし専制国家を覆滅せよという「ジュネーブ指令」(架空)を携えて帰国し、そのロシア支部を名乗った狂信的な青年革命家で、事件は彼が学生の間に組織した5人組(斧の会)のイワノフをスパイ容疑の転向者として惨殺したもの。 ネチャーエフに心酔していた晩年のニーチェは「悪霊」を反動的とし、作中のキリーロフの人神思想に注目。
キリーロフの人神思想・・神に従わず我意を貫いた時、神は存在せず自分が神となり、完全な我意は自殺である」。キリーロフは成り行きでは有るものの、一身に組織の罪を負い自殺。
ドストエフスキーは、西欧から移入された無神論革命思想を聖書にある「悪霊」に見立て、それに憑かれたネチャーエフ(ピョートル)その他は湖に溺れ死に、悪霊が離れて病癒えた男・即ちロシアは、イエスの足元に坐しているとした。その後疑問が生じ、土着ロシアの怨念の化身・イワン皇子に擬える。始め、主人公をピョートルとしようとするも半ば喜劇性を帯びさせ、病癒えた男としてスタヴローギンを当て嵌める。「悪霊」の真の悲劇性は、イワン皇子が終に出現せず僭称者として破滅した事。退屈と無為に因り、明晰な意識を持って自殺の道を選ぶスタヴローギン。
∇ニコライ・スタヴローギン・・美貌と知力・体力を持つ、徹底したニヒリスト。図らずも、主要登場人物に影響を及ぼす。
∇カルマジーノフ・・文豪気取りの俗物作家。ツルゲーネフがモデル。
∇G(アントン・ラヴレンチェヴィチ)・・新聞記者であり、語り手。
∇スタヴローギンの告白・・文中の「少女を陵辱して自殺に追いやり・・」などの表現により、当時新聞掲載を拒否され原稿も不明に。1921年頃、発見され出版。
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