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2009年2月

2009年2月27日 (金)

本31・・ドリアン・グレイの肖像

ドリアン・グレイの肖像・・オスカー・ワイルド著

41r056mam6l__sl500_ワイルドはデカダン派の唯美主義者か、グレイは世紀末の小型ファウストか。

画家のバジル・ホールウォードは、ドリアン・グレイの輝く美貌に惚れ込み彼の肖像画を描く。ドリアンはバジルの紹介でヘンリー・ウォットン卿と知り合い、その多大な影響力で背徳や退廃に染まっていく。肖像画が出来上がり対面したドリアンは、自分の若さはこのままで絵の方が老い込んでいくのならどんな代償も厭わない、魂だってくれてやると。ドリアンは小さな劇場で可憐な女優シビル・ヴェインを知り婚約を交わすが、彼女が彼との現実の恋に因り舞台上の演技に生気を失ったため関係の終りを告げる。彼女は絶望し自殺するが、ドリアンには改悛の情も無い。以来、ドリアンの悪徳の度に絵に変化が現れ始める。彼は誰の目にも触れさせないため寝室の奥の屋根裏部屋に絵を隠すが、その絵はドリアンに影のように纏い付き(ドリアンの良心とも云える)逃れることが出来ない。ある日、絵を観たがって訪れたバジルを逆恨みし殺し、弱みを握るアラン・キャムベルに始末をさせ、アランはその後自殺。誰にも咎められることなく、しかし現在の自分を恨めしく思うあまり、絵と対峙して絵の中の自分にナイフを(良心と刺し違える)突き刺す。元通り美しいドリアンの肖像画の前で、醜く変貌したドリアンが胸にナイフを刺したまま事切れる。

生身のドリアンとその肖像は、現実と芸術、実生活と虚構の世界を表し、現実が芸術を支配するのではなく、作られた第二の自我が生身の人間を引きずり破滅に導びく。

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2009年2月25日 (水)

本30・・詩「雪」

レミ・ド・グールモン作

シモオン 雪はお前の襟足のように白い
シモオン 雪はお前の膝のように白い

シモオン お前の手は雪のように冷たい
シモオン お前の心は雪のように冷たい

雪を溶すには 火の接
お前の心を解くには 別れの接吻

雪はさびしげに 松の枝の上
お前のひたいはさびしげに 黒かみのかげ

シモオン お前の妹 雪は庭に眠つている
シモオン お前は私の雪 そうして私の恋人

堀口大学訳

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2009年2月24日 (火)

本29・・辞世の句さまざま

辞世の句さまざま

∇願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃(西行)

∇ちりぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ(細川ガラシャ)

∇あはれなりわが身の果てや浅縁つひには野辺の霞と思えば(小野小町)

∇大ていは地に任せて肌骨好し紅粉を塗らず自ら風流(武田信玄)

∇極楽も地獄も先は有明の月の心に懸かる雲なし(上杉謙信)

∇是非に及ばず(織田信長)

∇曇りなき心の月を先だてて浮世の闇を照らしてぞ行く(伊達政宗)

∇動かねば闇にへだつや花と水(沖田総司)

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2009年2月22日 (日)

本28・・ドストエフスキーについて

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

200pxdostoevsky_18721821年、父親は医師で、次男として出生。15歳で母親が病死。2年後、父親が殺害される(アルコール障害に因る癇癪持ちで、辛く当ったため農奴達の恨み)。ドストエフスキーは父が殺されたことから癲癇を発病したとされるが、疑問視も。その頃から、罪の意識と浪費・賭博に捉われる。44年、川の辺で幻視に見舞われ「貧しき人々」を書く。46年、ユートピア社会主義のサークルに参加し始める。49年、会合でベリンスキーがゴーゴリに宛てた手紙を朗読し、ロシア正教会への批判と政府転覆の可能性があるとしてメンバーと共に逮捕される。銃殺刑が下るも、ニコライ一世の恩赦(若いことと、未遂で)により、シベリア送りに。この経験が「死の家の記録」。4年後、兵役に付き、改心を公にするも、その後も皇帝権力の監視下に。59年、ペテルブルグに戻る。その頃ロシアはクリミア戦争で屈辱的な敗北を喫すが、帝政ロシアの弱体と後進性が理由と云われる。社会は、農奴解放への歴史的予感に湧き出す。

ドストエフスキーは、恋敵のいる奪われる予感の中でしか愛せないマゾヒストであった。64年、苦痛が快楽であるという「地下室の手記」を書き、これは転向の書とされる。ある種の理論が人間の意識や行動に及ぼす影響力により、社会の犠牲者や意識的な復讐者が生まれるとし、66年「罪と罰」を発表。68年「白痴」、71年「悪霊」と続き、78年、未完の書と云われる「カラマーゾフの兄弟」へ。81年、持病の肺気腫による喉からの出血で死亡。享年60歳。

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2009年2月14日 (土)

本27・・カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟・・フョードル・M・ドストエフスキー著

4102010106主な登場人物・・フョードル・カラマーゾフ(55歳、好色で老獪な道化・冒瀆の田舎紳士)、ドミトリー(長男28歳、豪放磊落だが激情的で哀しいほどに傷つき易さと高潔さを持つ)、イワン(次男24歳、無神論で知性派)、アレクセイ(三男20歳アリョーシャ、 敬虔な修道僧)、スメルジャコフ(下男でシニカルな人嫌い、フョードルの私生児か?)、グリゴーリー(真面目な従僕 、妻はマルファ)、カテリーナ(モスクワ出身の知性派、ドミトリーと婚約中)、グルーシェニカ(奔放な?女、フョードルとドミトリーの争いの種にも)。

イワンがアリョーシャに、自分の世界観について語る。ヨーロッパやロシアの幼児虐待に触れ、「神が創ったこの世界は認められない」と。物語詩「大審問官」を引用・・大審問官に捕縛されたキリストに、審問官が問う。キリストの言う自由「人はパンのみにて生くるに非ず」と現実の歴史との間にある矛盾を突き、地上のパンを与える自分達は悪魔の側に付いているのだと・・イワンは、ゾシマ=アリョーシャの永久調和に対し、神の世界の不合理により調和はないと告げる。

臨終のゾシマ長老が弟子達に説く。幼い頃、17歳で死んだ兄から教えられた「人間は全ての人に対して罪がある」を受け、改心し全ての傲慢を捨てよと。ゾシマ長老の死と、それに纏わる腐臭や周りの動揺に衝撃を受けるアリョーシャの内面の変化。

グルーシェニカがアリョーシャに話す「一本の葱」。小話「カルマ」の挿話・・意地の悪い女が死に、悪魔達が女を火の海に投げ込む。彼女の守護天使が、その女が一本の葱を乞食女に与えたと訴える。神が、一本の葱で女を引き上げたら天国へと。引き上げ始めると他の罪人達が女にしがみつき、女が蹴り落としたところで葱が切れる。

アリョーシャは、長老の棺の前で祈るうちに福音書に書かれた夢を見、心に再び豊かな蘇りが起き大地に口付ける。

ドミトリーには己の恥辱と、グルーシェニカには過去の恋との葛藤が。彼はグルーシェニカとの生活を夢見、金策に奔走し彼女の下へ走るが、その間にフョードルが殺され父殺しで逮捕される。父親の3000ルーブルの行方など、状況証拠は圧倒的に不利。イワンとスメルジャコフ・・スメルジャコフが、仮病を使いフョードルを殺し金を奪ったと告白。イワンの暗黙の了解(神がなければ全てが許される)の下での事だと。優秀な弁護と父殺しを否定するドミトリー。イワンがスメルジャコフの犯行だと証言するも幻覚症状と片付けられ、陪審は有罪の評決。

エピローグ・・アリョーシャが気に掛けていたイリューシャ少年の死。社会主義だと憚らないコーチャ少年。ドミトリーの脱獄計画を立てるイワン・・

ドストエフスキーは第二の本編(主人公達の13年後)を目指していたが、死亡により最後の未完作と云われている。

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2009年2月 7日 (土)

映画46・・博士の愛した数式

博士の愛した数式(2005・日本)

D0017307_12353953原作・小川洋子、監督・ 小泉堯史、出演・ 寺尾聰、深津絵里、吉岡秀隆、浅丘ルリ子・・

ルートが成長し数学の教師になり、新任の教室で自分の名前の由来を語り始めるところから、この物語が始まる。

若いシングルマザーの家政婦が、事故の障害で記憶が80分しか持たない数学博士のもとに。足の悪い未亡人から、義弟である博士への助けを依頼されて。博士の背広にはクリップでメモ用紙。博士は話すことに戸惑い混乱すると、数式を用いる。博士の数学は、小難しくなく温かくて美しい。家政婦に子供がいると聞くと、心配し学校が終わったらここへと。博士はその10歳の男の子をルートと呼ぶ。「どんな数字でも嫌がらずに匿ってやる、偉大な記号だよ」と。未亡人には、愛するものへといういう文字と共に「e(πi)=-1」の数式が。ルートの野球の応援で熱を出した博士を、親子で泊まり看病。目覚めた博士の「僕の記憶は80分しか・・」という言葉に、その意味する苦しみを目の当たりにし胸を突かれる。その看病がもとで解雇されるが、その後、未亡人から連絡。「有るがままを生きてみよう」という博士のもとで再び働く・・孤高、静けさ、清明。

 

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2009年2月 3日 (火)

機織り・・その24

08120733_0025枚で3セット(+無地1本)その3の②

ベージュ地に、藤色系と臙脂系の更紗。

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