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2009年6月

2009年6月29日 (月)

映画66・ママの遺したラヴソング

ママの遺したラヴソング(2004・アメリカ)

519qfowg1ul監督・シェイニー・ゲイベル、出演・スカーレット・ヨハンソン、ジョン・トラボルタ、ガブリエル・マクト・・

フロリダで怠惰な生活を送るパーシー(ヨハンソン)に、深い確執のため長年会わずにいた母の訃報。ニューオーリンズの生家に帰ったパーシーを待っていたのは、見知らぬ二人の男。元文学部教授のボビー・ロング(トラボルタ)と、彼を慕う作家志望の青年ローソン(マクト)。古ぼけた一軒家で、嫌々ながら同居生活。新しい生活、文学との出会い、初恋、そして初めて聞く亡き母の横顔。ささくれ立っていたパーシーの心が、少しづつ癒されていく。そしてある日、母が自分に宛てた一通の手紙を発見。
トラヴォルタが繊細な表情を見せる。生きることに躓きまた歩き出そうとする、全ての人に優しい話。ニューオリンズが持つ「酒とバラの日々」的雰囲気と、南部のゆったり流れる空気感。文学的な表現とジャズのBGM。奇妙な3人の暮らし。娘と母の元恋人の諍いや葛藤、次第に温かな感情が芽生え、同居する大人の男2人によって、投げやりだった娘は自分と向き合う。・・母が誰にも知らせなかった彼女の父親はボビーであった。

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2009年6月16日 (火)

本43・・無罪と無実の間

無罪と無実の間・・ジェフリー・アーチャー著

3z14469初の戯曲。舞台は法廷と主人公の自宅のみ。イギリスの法曹に携わる人々の特異性を描く。

アーチャー・・29才で国会議員→破産で辞職→ベストセラー作家→保守党副幹事長に抜擢→コールガールとのスキャンダルで辞任。

勅撰弁護士デイヴィッド・メトカーフは、妻殺害の容疑で起訴され、自らの手で自身を弁護。検事側の勅撰弁護士ブレア・ブースは、巧みな弁舌と有力な証言を揃え彼を追い詰める。投機に失敗し多額の借金を抱えた彼が、妻の遺産で窮地を脱したこと。毎晩のように酒を飲み妻に暴力を振るい、妻に薬を飲ませるのを見たと言う家政婦の証言。デイヴィッドの妻ミリセントは、不治の病で週に一度劇薬を服用していた。劇薬をデイヴィッドは本当にミリセントに飲ませたのか? 飲ませたとすれば故意だったのか? 陪審員の評決は無罪。第三者には測り知れない夫婦間だけの愛と世界がそこにあり、ラスト・・デイヴィッドは同僚で友人のハミルトンを招き、妻に故意に飲ませたと告白。

裁判の結果「無罪」を勝ち取ることはあっても、それが即ち「無実」の証明を勝ち取ったことにはならないという話。

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2009年6月14日 (日)

本42・・復活

復活・・レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ著

51fs07ya31l__sx230_友人から見聞したエピソードで、自身も似た過去を持つため執筆に至る。単なるネフリュードフとカチューシャの物語ではなく、諸々の世俗的な権威(裁判所、元老院、官庁、刑務所)の仮面を剥ぎ、その偽善性を摘発し、上流と下層階級の相対性も描く。

青年貴族ネフリュードフは、軽はずみに叔母の小間使カチューシャと関係。ネフリュードフが去った後、妊娠したカチューシャは追い出され、子供も喪い自ら娼婦となり、10年後、客の商人を毒殺した咎で法廷に。奇しくもネフリュードフはこの裁判の陪審員。カチューシャは無罪だったが、不運な手違いで有罪となりシベリアへの徒刑に。カチューシャに不幸を齎した基と自覚したネフリュードフは、贖罪のため、彼女と共に旅しその更正に尽力する積りで、自身の生活を一変し判決を覆そうと奔走。過酷な旅に同行する中、様々な場面や人々に触れ思いを新たにするネフリュードフ。下った判決に特赦が与えられたカチューシャは、ネフリュードフを再び愛し始めるが、自分に因って彼の一生を台無しにしてしまうとし、彼を解放するべく政治犯のシモンソンと共に行くと告げる。煩悶の後、ネフリュードフは自らの更正の道標を見出す・・人間精神の「復活」。

ネフリュードフの悟り・・罪の無い者はいない。従って、他人を罰したり矯正する事は出来ない。犯罪者を罰して犯罪は絶滅したか? 逆に、判事・検事・看守等の犯罪のため増大。社会や秩序が存在しているのは、合法的犯罪者(裁いたり罰したりする者)がいるからではなく、寧ろ、堕落した現状の中で人々が互いに愛し憐れみ合うからだ。悪人でありながら悪を正そうという、不可能な事をやろうとするために悪が絶えない矛盾。人々を苦しめる悪から救われる唯一の確実な方法は、常に自分を罪深い者として自覚し、他人を罰したり矯正する資格の無いことを認めればよい。

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2009年6月13日 (土)

映画65・・パルプ・フィクション

パルプ・フィクション(1994・アメリカ)

Ac071ka監督・クエンティン・タランティーノ、出演・ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ブルース・ウィリス、ティム・ロス、ハーヴェイ・カイテル、エリック・ストルツ、クエンティン・タランティーノ、ユマ・サーマン、マリア・デ・メディロス・・

L・Aで起きる、くだらない話というタイトルのオムニバス。

∇レストランで、パンプキン(ロス)が彼女と強盗する話。ビンセント(トラボルタ)とジュールズ(ジャクソン)が、裏切り者の所から取引の品を取り戻す・・プロローグ

∇ビンセントがボスから妻のミア(サーマン)の世話を頼まれ、食事に出掛け帰り際にミアがヘロインの過剰摂取、売人のランス(ストルツ)を頼り息を吹き返させる。

∇落ち目のボクサー、ブッチ(ウィリス)。ボスから八百長を持ち掛けられ裏切って勝ち、相手が死ぬ。彼女のファビアン(メディロス)と逃げようとし、形見の時計を取りに戻りビンセントを殺し、逃げるところをボスと出くわし、後のことを忘れる約束で解放され逃亡。

∇ジュールズとビンセント。裏切り者の一人を車に乗せて帰る途中、ビンセントの銃の暴発で車中で殺し、ジュールズの友人ジミー(タランティーノ)を頼るが、恐妻家のジミーにキレられ、始末屋のウルフ(カイテル)を呼んで処理。

∇一連の厄介事を片付けたジュールズとビンセントはレストランへ。強盗事件が発生、足抜けして更正する積りのジュールズが上手く立ち回り、カップルを帰らせ自分達も去る・・エンディング

時系列・・ビンセントとジュールズが取引の品を取り戻す→横領したギャングを追い込むも反撃に合い全弾逸れ、奇跡を実感。ビンセントが誤射で一人を殺したためウルフが掃除→ビンセントとジュールズがレストランで食事。パンプキンが彼女と強盗(オープニング)。ビンセントとジュールズ、事態を収めレストランを去る(エンディング)→ブッチが八百長を裏切りトラブルに。ブッチを追っていたビンセント、アパートで鉢合わせ殺される→逃げるブッチとボスが鉢合わせ、なし崩し的に変態に監禁される。事態を切り抜けボスへの貸しで八百長事件がチャラになり、ブッチは逃亡。

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2009年6月12日 (金)

映画64・・日曜日のピュ

日曜日のピュ(1992・スウェーデン)

Songdasbarn_2脚本・イングマール・ベルイマン、監督・ダニエル・ベルイマン、出演・ヘンリク・リンロース、トミー・ベルイグレーン・・

「日曜日に生まれた子供は不思議な力を持っている。他の人には見えないものを見ることが出来る幸福な子供」

1920年代、スウェーデンの田園地帯を舞台に、8歳の少年イングマール(愛称ピュ)のひと夏の思い出と、初老を迎えた現在の姿をフラッシュバックさせながら描く。巨匠ベルイマンが幼少期を綴った脚本を、息子のダニエルが初映画化。

ピュは、子ども扱いされる事に不満を抱いたり、父への愛情を上手く表現出来なかったり、時計職人の死に纏わる不思議で怖い話に驚かされたりする少年。牧師である父に畏敬の念を抱きくが、打ち解けられず怖い存在と。ある日曜日、遠く離れた教区への二人だけの旅の帰り、池で泳いだり、花の名前を教えて貰ったり、雷雨に遭遇し雨宿りした時、打ち解けられたかのよう。冒頭の言葉は、同じ日曜日生まれの父に言われたこと。牧師でありながら人に厳しく、家族に恐れられていた孤独な父。50年も連れ添った妻の死後、日記に見つけた辛辣な言葉。息子の冷たい態度。語り尽くせない父と息子の絆と、その死に臨み父の苦悩を理解し許そうとする。

淡々とした物語の背景として描かれる、穏やかな北欧の深い森や湖、たおやかな小川の流れや木漏れ日の美しさ。澄み切った風景の中にある、晩年不仲だった主人公の父に対する憧憬が眩しい。

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2009年6月 8日 (月)

調理・・その2

鶏の松風焼き

F3ad5545816b60634270aa2b733e19f8正月料理の一品。

材料・・鶏挽き肉、味噌、芥子の実(白胡麻)、味醂、卵、パン粉・・

天板(フライパンにアルミホイルを敷いても)で20分ほど焼き、冷めたら扇面に切り、串を刺す。

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2009年6月 7日 (日)

機織り・・その28

090412_00709(21)年度、特選その3

再注文。観世水柄。漆糸の青とオレンジ使用。

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2009年6月 6日 (土)

音楽8・・ミーナ

ミーナ

Minafotoミーナ・マッツィーニ 。イタリア、カンツォーネ歌手。

1940年、ロンバルディア州生まれ、クレモナ育ち。クラブ歌手からスタート、58年デビュー、59年に「ネッスーノ」をヒット、抜群のスタイルと美貌で一躍スターに。

クラシックの声楽を学んだ、華やかで力強い歌声である。ダリダの「甘い囁き」もこちらが本家であり、映画「太陽は一人ぼっち」の主題歌も彼女である。「月影のナポリ」「砂に消えた涙」もカバーされて有名だが、「別離(わかれ)」は秀逸。

63年に私生児を出産、一時期、テレビ・ラジオから追放されるが、その後再起し数々のヒットを飛ばす。74年以降はテレビやコンサート出演を止め、アルバム製作やライブ活動に専念。60年代には幾つかの日本語盤も出す。私生活は恋人や配偶者との離・死別を繰り返し、必ずしも恵まれたものではなかった。

http://www.youtube.com/watch?v=k6awD8mWRLY

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2009年6月 5日 (金)

本41・・イワン・イリイチの死

イワン・イリイチの死・・レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ著

Photo_519世紀ロシアの一裁判官の死。不条理な死が、精神の覚醒の切っ掛けとなる。

主人公はアレクサンドル2世時代の司法改革の尖兵として働き、人生の盛りで控訴院判事という要職に就くが、些細な事故(梯子から落ち脇腹を打つ)を切っ掛けに病を得(最後まで病名は不明)、3ヶ月程の闘病生活後に死ぬ。1881年に死んだ実在の裁判官がモデル。心理学者の描く、病や死の受容の諸段階(恐れ→拒絶→怒り→戦い→取引→絶望→鬱→受け入れ)を踏む。死とは、誰にも代わってもらえぬ固有な経験であり、他者との交渉が断絶する孤独な経験であり、その向こう側が見えない究極の可能性であり、絶対確実な可能性と共に時間的に規定できない未決定な可能性である。様々な価値が二極化(世俗的な価値が、精神的な価値によって相対化)される。

トルストイの世界では、人格としての復活や来世の感覚は無く、死に直面して真実の価値に目覚める瞬間が新しい誕生で、人生を浄化してくれる恵みであるとする。

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2009年6月 1日 (月)

本40・・クロイツェル・ソナタ

クロイツェル・ソナタ・・レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ著

Photo_4社会的な地位のある地主貴族の主人公が、嫉妬が元で妻を刺し殺す話。

主人公の独特な思想とは・・夫婦の背信や嫉妬・憎しみは、個別の因果関係で説明するものではなく一般的な理由を持っている。合法的な性愛関係の形成、財産の維持、家系や種の存続といった多様な目的を持つ結婚制度と、キリスト教の説く純潔や隣人愛の精神とのズレが根本的な原因で、夫婦間に生ずる様々な問題はその結果に過ぎない。だから、ある日突然嫉妬から妻を殺したのではなく、その遥か以前に結婚という形の殺人を犯していた。結婚という幻想の破綻を味わい、殺人という行為によって決定的な真実に気付く。求婚とは女性という奴隷を巡る市場取引であり、妻は長期の売春婦、性交は暴力、結婚生活は憎しみと性欲の波の交代である。

男女間の愛の観念や、結婚制度そのものの欺瞞性を批判。

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