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2009年7月

2009年7月24日 (金)

本49・・幸福な死

幸福な死・・アルベール・カミュ著

9583初期に書かれ、生前は陽の目を見なかった作品。「異邦人」等の資料になった原型。青春時代のカミュの様々な生の形を表現。

主人公マルソーは、貧苦からの脱出が「幸福な生」を約束するものとし、死への恐怖は、死を意識の至福の状態に高揚させ克服出来ると信じた。恋人マルトの元恋人のザグルーを殺して金を奪い、「世界をのぞむ家」で三人の女性と幸福な日々を過ごし、やがてチェヌーアに隠遁する経過は巻末に訪れる「幸福な死」に備えたもの。マルソーが迎える「幸福な死」とは、世界と一体となる生の充足感だが、そのために「世界をのぞむ家」や親しい仲間達と離れ人里離れた別荘で一人暮らすという、生きながらにして既に孤独な生や死に馴染まねばならない。故に、幸福への意志や生は死への道行きに他ならぬというある種の矛盾を有し、それが生の不条理への膨らみを見せずに短絡されて収斂される。マルトやリュシエンヌとの心理的葛藤の罠に嵌るまいとし、自尊心と嫉妬に心乱され、頑なに愛を拒否しアンパランス(外観)と呼ばれる・・「異邦人」のムルソーも同じで、他人や世界の中に足を踏み入れることを怖れ、自分を侵すことの無い「世界の優しい無関心」にだけ心を開く。

カミュ自身も、何かに束縛されそうになると野獣のように身を翻した(夫人言)。

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2009年7月21日 (火)

本48・・デミアン

デミアン・・ヘルマン・ヘッセ著

20050126083847対戦前のヨーロッパの退廃的な文明や既成の社会倫理観や宗教観に批判を加えたため、初めは匿名で発表。ヘッセの仮借なき自己追及の記録だが、重傷を負った兵士の遺稿の形を採る。

少年シンクレールが、年長の友人デミアンの手引きで真の自我を求めて行く過程を描く。全ての人間の生活は自己自身への道で、真に自己自身になることは最も容易なようで最も困難。自己に忠実でないことが様々な不幸な源と。

シンクレールは、年上の不良少年に睨まれまいとして心にもない嘘を言ったことで、脅迫めいた付き纏いをされる。謎の少年デミアンに救われ、成長と共に明暗の生活を始める。悪魔をも内包する神への憧れと観念は放縦に身を持ち崩すも引き戻され、自己を求め始めた人間にとっては自分の真の運命を生きる義務があると悟る。俗習を越えた孤独の中でデミアンを求め、巡り会ったデミアンの母は無意識に慕っていた母なる恋人であった。彼等は文明の内的荒廃と共に世界の大きな運命が近付いて来るのを予感し、今や世界が生まれ出るために崩壊しようとしていると感ずる。デミアンもシンクレールも大きな運命の意志を認識し、古い世界の終りは新しい世界の始まりと悟り甘んじて運命に身を委ねる。シンクレールは戦場で最後に、結局自分の指導者デミアンは自分の似姿に他ならず、自己を導くものは即ち自己であると知る。

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2009年7月19日 (日)

映画69・・ショー・ガール

ショー・ガール(1995・アメリカ)

Photo監督・ポール・バーホーベン、出演・エリザベス・バークレー、ジーナ・ガーション、ジーナ・ラヴェラ、カイル・マクラクラン・・

弱肉強食のショー・ビジネスの世界で、トップ・ダンサーを夢見るヒロインの奔放で逞しい生き様を描く。

トップダンサーを目指すノエミ(バークレー)は、ヒッチハイクでラスベガスに。高級ホテル「スターダスト」で開催中のショー〈女神〉の衣装係、モリー(ラヴェラ)と親友になったノエミは〈女神〉のトップスター、クリスタル(ガーション)を紹介してもらうが、冷たくあしらわれる。その夜、ノエミがヌードダンサーとして踊る三流のクラブ「チーター」に、恋人であり〈女神〉の興行主ザック(マクラクラン)を連れたクリスタルが訪れる。クリスタルはノエミに、ザックを挑発するダンスを踊るよう命じる。屈辱的なダンスは、男女3人のラヴ・ゲームに変わり、ザックはノエミに圧倒され、クリスタルも彼女に魅了される。翌日、ノエミは〈女神〉の関係者にスカウトされオーディションに合格。クリスタルが裏で手を回しており、彼女はノエミにかつての自分を見た。クリスタルの代役が策謀でケガ。ザックと寝たノエミは代役オーディションを聞く。選考会でザックはノエミを選ぶが、クリスタルは実力を認めながら代役は許さない。クリスタルは楽屋でステージで、ノエミを挑発し追い詰める。ある時、舞台終了後、ノエミは階段でクリスタルを押し重傷を。主役にノエミが抜擢されベガスの新スターに。パーティーの席でノエミはモリーに、彼女がファンの歌手アンドリューを紹介し、モリーは彼にレイプされる。騒ぐノエミにザックは「金でカタをつけろ」と、引き下がらないノエミに、過去の悲惨な家族関係、麻薬や売春の逮捕歴を暴く。「スターにしてやる」と言う彼に唾を吐き去るノエミ。アンドリューの部屋を訪れたノエミは、誘惑に乗ったと見せ掛け、彼にナイフを突き付け、ハイヒールで何度も激しく蹴り上げる。 入院中のモリーを見舞い仕返しを告げ、次にクリスタルを見舞ったノエミは、引退の時期を図っていた彼女の真意を知る。そして彼女はベガスを後にし、新しい街を目指して去って行く。

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2009年7月17日 (金)

映画68・・エリザベス

エリザベス(1998・イギリス)

Img_795503_28695454_0監督・シェカール・カプール、出演・ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、ジョセフ・ファインズ・・

16世紀、イングランド。国内では旧教とカトリック、新教とプロテスタントが争っていた。時の女王メアリーはプロテスタントを弾圧、新教派のエリザベス(ブランジェット)もロンドン塔に投獄される。程無くメアリー女王が他界。1558年、エリザベスに王位が継承。新しい女王に、フランスのアンジュー公、スペイン王との結婚話が持ち上がるが、エリザベスは恋人のロバート(ファインズ)と逢い引きを重ねる。国内の財政は苦しく、スコットランドとの戦争にも敗れたイングランド。エリザベスは新教派のウォルシンガム(ラッシュ)を味方に付け、国を新教に統一することを決定。これを怒ったローマ法王は英国に密使。ウォルシンガムは不穏な動きを抑えるため、スコットランド女王メアリーを暗殺。臣下等は結婚で身を守るようエリザベスに薦め、ロバートには既に妻がいると。国内では旧教派のノーフォーク卿が、法王と結託し反撃に出ようと。意を決したエリザベスはローマからの密使を探し、ノーフォーク卿を始めとする旧教派を一網打尽。愛に破れ、祖国と生きようと決意したエリザベスは、人々の前で「私は国家と結婚します」と宣言。

その後、処女王となったエリザベスを、ウォルシンガムが警護。

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2009年7月14日 (火)

絵画13・・フランチェスコ・アイエツ

フランチェスコ・アイエツ(1791~1882)

イタリア画家。生まれは貧しく美術修復家等の弟子となり、1806年アカデミー・オブ・ファイン・アーツに入学。09年アカデミア美術館のコンペティション入選、ローマのディ・サン・ルーカで学び、50年ブレラ美術館ディレクター。

Meditation The_kiss Ruth Secret_accusation Il_consiglio_alla_vendetta La_monaca_di_monza

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2009年7月12日 (日)

本47・・アトランティスのこころ

アトランティスのこころ・・スティーヴン・キング著

309528901960年、11才のボビーが母のリズと住む小さなアパート。上の階に紙袋を提げて越して来たテッドという不思議な力を持つ老人と関わり、子供達に様々な事が起きる夏の日々を描く。

テッドは、自転車が欲しいボビーに新聞を読むバイトを持ち掛け、他所者を見掛けたら教えるように言う。父のいないボビーは、テッドを通し男親の頼もしさに包まれる幸せを知り、それが奪われる痛みに人生の儘ならなさを知る。テッドに出会ったことで読書の素晴らしさを教えられ、友情を信じ、母親が言うのとは違う愛する父親の本当の姿を心に刻む喜びも知る。テッドがいなくなることを恐れ、異変や尋ね人の張り紙などに気付いても言い出せない。幼馴染みのガールフレンドのキャロルが地元の高校生に襲われ、見つけたボビーは彼女を抱いて歩きテッドの下へ。介抱するテッドを、母親が誤解し謝礼金欲しさに通報したためテッドが連れ去られる。

ボビー達に少年時代の終りが訪れ、それぞれの道を歩み出す。数年後、キャロルを通して、テッドからバラの花びらが届き、テッドが再びどこかで自由になったことを知る。悪仲間の一人ウィリーが盗ったボビーのグローブが、遊び仲間だったサリーの所に現れ、サリーの死でボビーの下に返ってくる。数十年振りに訪れた故郷でサリーの葬儀に出、懐かしい場所へ。キャロルが現れ、グローブにあったテッドからの伝言を見せる・・過ぎ去った少年の日を想う気持ちが胸に沁み、暗い話の間を涼しい風が吹き抜けるような清々しさのある悲しみや遣る瀬ない淋しさ。人は多くのことを失いながら大人になる。アトランティスという幻の国のように。

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2009年7月 9日 (木)

映画67・・白い風船

白い風船(1966・イラン)

B406a1909fa042f4ce34f110_l監督・ジャファール・パナヒ、出演・アイーダ・モハマッドカーニ、モフセン・カリフィ・・

イスラム暦の大晦日。ラジエー(モハマッドカーニ)は、お母さんに新年飾りの金魚を買ってくれとせがむが、家の水盤の金魚と同じだと取り合ってくれない。市場の金魚は太っていてヒレが大きくて花嫁さんみたいに綺麗なのに・・お兄ちゃんのアリ(カリフィ)がお母さんと掛け合い、やっと買ってもらえることに。大事なお札を金魚鉢に入れ市場に走るラジエー。途中で寄り道して意地悪な蛇使いにお金を巻き上げられそうになり、相棒の小父さんがお金を返してくれる。ところが金魚屋に着くとお金がない。来た道を探したら見つかるよと小父さんに言われ、親切な老婦人も一緒に。お札は道端の側溝の格子に引っ掛かっていた。ラジエーが駆け寄る直前にオートバイがその上を通り、お札は側溝に落ちる。老婦人は傍の仕立屋のバフティアリさんに頼んでくれたが、老婦人が去るとバフティアリさんは客との喧嘩に夢中でラジエーのお札どころではない。金魚屋の小父さんにお金が見つかったと知らせ、小父さんは金魚をくれたが、お金が取れるまで預かってもらう。側溝のそばで困っているとお兄ちゃんが心配して来た。バフティアリさんは隣の店の人が帰ったら取ってもらえばいいと。お兄ちゃんは店の人の家を探しに行き、ラジエーは兵隊さんに話し掛けられる。彼には彼女と同じくらいの妹が二人いるが、お金がないので田舎に帰れないそうだ。今度はアフガン人の風船売りの少年が通り掛かり、お兄ちゃんは彼の風船の棒を強引に借りる。最初は怒っていた少年だが、事情が判るとお札をくっつけるためのガムまで買ってくれ、おかげでやっとお札が取れた。兄妹は一目散に金魚屋に走る。後には、白い風船の棒を持った風船売りの少年だけがぽつんと。新しい年が明ける。

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2009年7月 5日 (日)

本46・・生きるヒント2

生きるヒント2・・五木寛之著

19558586∇励ます・・モノが豊かなら文化国家と言えるかというのと同じで、健康と幸福は必ずしも同じではない。医は否定から始まり、健康を強要し、健康が善で病気は悪=対冶。老いを否定できるか、病気も同じ、テロなどの社会問題も然り。静かに側に寄り添い一緒に涙することによって、その人の心の重荷を少しでも自分の方に引き受ける=同治。

∇感じる・・身体が変調のシグナルを発する時は、素直にその言葉を聴く耳を持ち、束の間の休息を。

∇忘れる・・大きな希望を抱く心の深部には、重く暗い絶望の闇がある。笑うことが好きな人は人に見せない涙を隠しているかも知れず、美しい物語を求める人は恐ろしく醜い生の赤裸々な姿を見た者かも知れない。忘れない筈のことを思い出せないのは、忘れたくて忘れているのではないか。

∇教える・・メーテルリンクの「青い鳥」。通説では、探しても見つからず戻るとすぐ側にとなっているが、実際は、青い鳥は飛び立ってしまい、様々な放浪の苦労の末に挫折して、やっと真実はここにあると気付く。人生に青い鳥などいない・・しかし人にはそれが必要だ(希望)。希望も夢も幸福も予め準備されていず、自分の手で作って行くしかない。

∇認める・・咲き誇る桜を見て憂うのは、散る事が前提で人の世も同じかとの諦念が無意識にあるから。自由になる事とならない事があり、強い意志さえあれば問題を克服出来るとは限らない。そもそも生まれて来る時から死を宿す存在で、若さの真っ只中に老いを抱えて生きて行くのであるから、不自由である不条理を認めるしかない、かなりの勇気を要するが。

∇属する・・落葉帰根(何処にいようと元に戻って土に還る)。落葉帰土(その時いた場所で土に還る)。デラシネ(根無し草)は、属すべき祖国や強い民族感情を持たない。古来より、文化は異邦人の手で作られ、彼等は帰るべき根を強く求めない。風のように見えない故郷を持ち、今生きている所を母国と感じられたら。

∇愛する・・宗教や科学も、元々は雑然として怪しげなもの。洗練され、形成され、削ぎ落とされ、貧しくなる。全ての文化の行き着くところである。修行して悟ったら籠るのではなく、俗世間に塗れて生きるのが究極の悟り。愛するのはこちらの勝手であり、報われることを求めない。人は変わるのだから愛も変わる、親子もまた同じ。

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2009年7月 4日 (土)

本45・・生きるヒント1

生きるヒント1・・五木寛之著

3z12323∇歓ぶ・・まず自分を歓ばせる必要がある。手の爪先から髪の毛までに言葉を掛け、励まし感謝する。自ずと身体の方も心の宿り主にお返ししようとする。

∇惑う・・登り坂で文化は生まれない。登り詰めてゆっくり降り始める時に生まれる。降りて行く自覚を持ち、惑い悩みながらの中に。孤独・・戸惑うと必ず孤立感を覚えるが、寧ろ孤独を求めて生きるもあり、少しずつ持ち物を減らし、付き合いを狭め、死ぬまでに綺麗に整理。惑うのは人に与えられた凄い能力の一つで、その人にしか見えない大事なものもある。

∇悲しむ・・朝顔は朝の光によって咲くにあらず、それに先立つ夜の時間の冷たさと闇の深さが不可欠。深く悲しむ人ほど真の喜びに出合い、暗さのどん底に降りて行く人こそ明るい希望に出合える。

∇買う・・買い物にも一期一会があり、そういう品物に出合った時はすぐ手に入れないと二度と廻り合えない(縁があるかどうか)。どれを選ぶかは、その人の個性・生活環境・背景・思想など全てが滲み出る。

∇飾る・・装う気持ちや飾る気持ちは、その反対側の、内面をしっかり生き現実的に人間関係を処理していく事と、相反するのではなく両立する。

∇知る・・「知恵の悲しみ」あり、知ることは、逆にそれだけ悲しみが深くなり憂鬱さが色濃く感じられるもので、諸刃の剣。知識という言葉にも、人生の知恵とそれに伴う暗い裂け目がその底に潜む。

∇想う・・人が年を重ねるのは、必ずしも人格が豊かになることではなく、失われるものも多い。現実の中で避けてきたものと、いつかどこかで正面から向き合わねばならず、人生に希望は・・無い。何故なら、この世に生まれて来る時その条件を何も選べず、生まれた瞬間から死に向かい近づいて行く存在で、期限を越えられないため。どうすべきか・・生の問題を幼少から身近に考え、生きてあるうちに死を想うこと。諸々の重さを背負い、様々な不条理を跳ね返し、人生の変転の中で生きてある自身を肯定。死を前提に生を受けた者であり・・人は皆泣きながら生まれて来る・・よく生きてきたね、と。

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2009年7月 3日 (金)

本44・・カリギュラ・誤解

カリギュラ・誤解・・アルベール・カミュ著

01796579∇「カリギュラ」・・その暴虐によって、ネロと並び称されるカイウス・カリグラ。幸福だった皇帝は、妹で情婦でもあったドリジュラの突然の死に因り、この世を耐え難い不条理なものと知り、是が非でも月や不死、この世ならざるものを、つまり不可能なものを手に入れようと決心。「運命が不可解なものである以上、自身が運命になる」、または「神々に比肩する方法は、神々と同じく残酷になることだ」と。カリギュラは既成価値から自由になり、徹底的な破壊行為に向かい自らがペストとなり不条理となる。悲劇の衝撃に近い何かを与えうるのは、カリギュラの悲劇的意識だけでなく、不可能なものを目指す情念の劇を、愚かしく不可能な道化芝居を、それと知りながら最後まで論理的に演じ通した意志があるからで、古代ローマの皇帝の狂気とは異なる、極めて現代的な怪物性がある。不条理の哲学の根底にある問いと闘い、そこに生まれる内面的な悲劇性が描かれる。

∇「誤解」・・暗い故郷の風土を嫌い南の国に憧れる娘マルタ。夫を亡くし息子に去られ、娘と小さな宿を営む母親。ある日、母と妹を助けるため息子ジャンが帰郷するが、すぐには身分を明かさない。生活もままならず、母娘は泊り客の金を目当てに客を殺し川に捨てていたが・・気付いた時既に遅く、母親は息子の後を追い、マルタとジャンの妻マリヤの二人が対峙するが解り合えない。成功した息子の帰郷と、それと気付かぬ肉親による彼の殺害がテーマ。その情念の荒れ狂う様を示し、その荒廃を現し、その挫折を描く。

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2009年7月 1日 (水)

機織り・・その29

090412_011_209(21)年度、特選その4

短冊に数種の柄と地模様。横段入れ、ベージュ地糸。色を渋派手にしメリハリ感。

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