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2009年10月

2009年10月31日 (土)

映画135・・ロスト・ハイウェイ

ロスト・ハイウェイ(1997・アメリカ)

D110481795 監督・デヴィッド・リンチ、出演・ビル・プルマン、パトリシア・アークエット、バルサザール・ゲティ・・

謎のビデオテープを発端に、妻殺しの容疑者の男をめぐる悪夢を描いた一遍。

夜のハイウェイに流れる「ディック・ロラントは死んだ」。早朝、サックス奏者のフレッド(プルマン)は玄関のインターフォンでその声を聞く。翌朝、妻のレネエ(アークェット、ブルーネットの髪)が玄関にあった封筒を見つけ、その中には1本のビデオが。夫妻の家の玄関前が映っていた。次の日の朝もビデオがあり、今度は夫妻の寝室と、眠る二人の姿が。警察を呼んだが、打つ手はない。その夜、レネエの友人アンディのパーティにて。白塗りのミステリー・マン(ロバート・ブレイク)がフレッドの前に。「私はあなたの家にいる」フレッドが彼の言うまま、自宅に電話してみると、目の前の男の声が自宅から響く。アンディに聞くと、彼はディック・ロラントの友人という。混乱したまま帰宅したフレッドに、またあのビデオが出現。映っていたのは何とレネエのバラバラ死体。意識が寸断したまま、フレッドはいつしか警察にいた。妻殺しの容疑で彼は死刑を宣告される。ところが、独房にいたはずのフレッドは、いつしか別人の修理工の青年ピート(ゲティ)に変わっていた。ある晩、ピートの自宅の前で何かが起こったのだというが、両親も恋人も何も話してくれない。釈放されたピートは職場に戻るが、そこに現れたのが知り合いで町の顔役ミスター・エディ(ロバート・ロッジア)。ある日、エディはアリス(アークェット)という愛人のブロンド美女を連れて現れた。見つめあうピートとアリス。二人はやがて深い仲になって密会を続ける。アリスはピートに、エディにはポルノ映画の女優として買われたと打ち明け、大金を知人の家から盗む算段をつけるから、一緒に逃げようと誘う。計画実行の晩、ピートはアリスの知人のアンディの邸宅へ。手筈通りピートはアンディを殴り倒すが、息を吹き返した彼はテーブルの角に額をめり込ませて惨死。二人は逃げるが、アリスの様子が怪しい。砂漠にぽつんと建つ小屋。砂の上でからみあう二人。やがてアリスは裸のまま立ち去った。残されたピートは立ち上がったが、何と彼はフレッドの姿に変わっている。小屋の中にはミステリー・マンが。「アリスなんて女はいない。彼女はレネエだ」フレッドは密会に使っていたモーテルに戻る。ベッドでもつれあうエディとレネエ。フレッドはエディをトランクに叩き込んで砂漠に拉致した。トランクを開けた途端、エディはフレッドに飛びかかるが、フレッドはミステリー・マンが渡したナイフでエディの喉を切り裂く。銃で止めを刺したのはミステリー・マンだった。早朝、自宅に戻ったフレッドはインターフォンに囁く。「ディック・ロラントは死んだ」と。そこへパトカーが追撃してきた。ハイウェイを車で逃走するフレッド。いつしか夜に。錯乱するフレッドは運転席で喚き、顔をふり乱す。闇の中、白いセンターラインがヘッドライトに照らしだされては消えていく・・

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2009年10月30日 (金)

本96・・知られざる傑作

知られざる傑作・・オノレ・ド・バルザック著

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☆「ことづけ」・・主人公が乗り合い馬車でパリからムーランへ行く途中、同年輩の男と一緒になって気が合い、お互いにかなりの年上の恋人がいることがわかり話し込むが、馬車が転覆して、相手の男が下敷きになり不慮の死を迎える。彼から、愛人である伯爵夫人への「ことづけ」を頼まれ、はるばる彼の地を訪ない伝える。夫人からも、不如意を察しられて心尽くしを受けるという、優しいお話。

☆「恐怖時代の一挿話」・・ルイ16世の首があえなく打ち落とされた翌日、パリの冬の真夜中、生命の危険を冒して執り行われる追悼のミサ。しがなく屋根裏部屋に暮らす神父と二人の修道女の所へ、見知らぬ男がミサを依頼しに来る・・彼は首切り役人で、己の贖罪も兼ねていた。

☆「ざくろ屋敷」・・ロワーヌ河を見下ろす、トゥレーヌ州の「ざくろ屋敷」に、ヴィレムセンス夫人と二人の息子が移り住む。二人は母の言いつけを守る純真な子供たちであったが、病により日に日に死に向かう夫人は、上の息子ルイに遺言を・・自分の亡き後、二人には僅かな金しか残らず屋敷も出て行かなくてはならぬと。弟マリーを中学に入れ、古い家政婦に金を託し弟を見守ってもらい、自分は船に乗りいずれ出世して戻ると答えるルイ。母は、名家の出ながら心ならずも親元を離れ夫もなく、しめやかに葬られる。

☆「知られざる傑作」・・芸術の無限と人間性の限界との衝突。「芸術の使命は自然を模写する事ではなく、これを表現する事にある」という信念のもとに、一つの作品「美しき諍い女」に10年の精進をささげた老画家が、限りなき理想と限りある人間の力量との隔絶に絶望し、終に心血を注いだ画布を焼き捨てて自殺する経緯を描いている。

・・他2編

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2009年10月27日 (火)

本95・・サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇

サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇・・オスカー・ワイルド著

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☆「サロメ」・・月の妖しく美しい夜、ユダヤ王ヘロデの王宮に死を賭したサロメの乱舞。知の滴る生首の唇に女の淫蕩の血が滾る、怪奇と幻想と恐怖の世紀末を描く・・ヘロデは、自分の兄の前王を殺し妃を奪い今の座に就いたが、妃の娘である王女サロメに魅せられて、淫らな目を彼女に向ける。その視線から逃れるように、サロメは宴の席を外れ、預言者ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)が閉じ込められている井戸に向かう。預言者は不吉な言葉を喚き散らすため、妃から嫌がられている。預言者との接触は王により禁じられているのだが、サロメは色仕掛けで見張り番であるシリアの青年(後に自害)に禁を破らせて、預言者を見てしまう。そして彼に一目で恋をするのだが、預言者は彼女の忌まわしい生い立ちを詰るばかりである。ヨナカーンの首と引き換えに、王の頼みで踊るサロメ。王は、生首を我が物にしたサロメを殺せと命ずる。

☆「ウィンダミア卿夫人の扇」・・夫の情婦といわれる女(アーリン夫人)が臆面も無く夫人の催す舞踏会に姿を現すが・・ダーリントン卿に仄めかされ、ベリック公爵夫人から夫ウィンダミア卿の情婦について聞かされ、不信感を持つようになる卿夫人(マーガレット)。夫は、真実を妻に告げられぬまま釈明するが聞き入れられない。そこへ、ダーリントンから告白を受けたマーガレットは、迷いながらも彼のもとへ。自分の二の舞をさすまいと、マーガレットを追うアーリン。アーリンは、ダーリントンの所に扇を置き忘れた事で、疑われるマーガレットを庇う。夫婦の危機が過ぎたところで、自分が母親であることは最後まで隠し、娘の扇と写真を胸に立ち去る。

☆「まじめが肝心」・・ワイルド劇の頂点といわれ、無垢の・無害の完全無欠な表現で、傷つけたり傷つけられたりすることの不可能な世界、ナンセンス(やり取りが如何にもな喜劇風)な世界を描く・・アルジャノンとジャックは友人で、お互いに秘密の(嘘の)弟を設定し、都合により街と田舎を行き来したり気ままに暮らしている。ジャックはアルジャノンの従妹のグウェンドレンに恋している。グウェンドレンとセシリー(ジャックが後見人)は、共にアーネスト(真面目な)という名前の男に恋している。アルジャノンはジャックを出し抜き、彼の領地を訪れセシリーに恋する。ジャックの出生は謎だったのだが、グウェンドレンを追ってきた母親のブラックネル卿夫人とセシリーの家庭教師が顔を合わせたことにより、その昔、家庭教師の手違いで捨て子のようになり、実は卿夫人の妹の息子(アルジャノンの兄)だと判明し、大団円へ。

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2009年10月25日 (日)

映画134・・バーバー

バーバー(2001・アメリカ)

D112038770 監督・ジョエル・コーエン、出演・ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マクドーマンド、ジェームズ・ガンドルフィーニ、スカーレット・ヨハンソン・・

冴えない床屋の数奇な運命をスタイリッシュな映像で描いた作品で、古い映画の様な作り。

1949年夏、北カリフォルニアのサンタ・ローザ。エド・クレイン(ソーントン)は、義兄フランク(マイケル・バダルコ)の経営する小さな理髪店で働く床屋。妻ドリス(マクドーマンド)はデパートの帳簿係で、店のオーナーであるデイヴ(ガンドルフィーニ)と深い関係にあった。ある日、理髪店にセールスマン、トリヴァー(ジョン・ポリト)がやってくる。彼はベンチャー・ビジネスの話をエドにした。エドはドリスとの不倫をネタにデイヴへ脅迫状を送り、1万ドルを手にしてトリヴァーと契約する。しかし脅迫状の送り主だということがデイヴにバレたエドは、襲いかかられて思わずデイヴを刺殺。が、デイヴの殺人容疑で逮捕されたのはドリスだった。エドは腕利きの弁護士リーデンシュナイダー(トニー・シャルーブ)を雇うが、ドリスは自殺(妊娠していた)。トリヴァーとも連絡がつかないエドは、客である弁護士の娘バーディ(ヨハンスン)に心の安らぎを求め、ピアノが好きな彼女をサンフランシスコの音楽教師のもとへ連れていく。だが彼女の演奏は認められず、帰りの車中、今回の結果を詫びるエドにバーディは女として迫り、そのまま交通事故。バーディは軽傷だったが、病院で目を覚ましたエドは、トリヴァー殺害容疑(デイヴに因る殴殺)により逮捕され、死刑を宣告されてしまう。死刑室に向かうエド。だが彼の心は安らかで、何一つ後悔していないと自分の人生を振り返るのだった。

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2009年10月23日 (金)

映画133・・ミート・ザ・ペアレンツ

ミート・ザ・ペアレンツ(2000・アメリカ)

D112762199 監督・ジェイ・ローチ、出演・ロバート・デ・ニーロ、ベン・スティラー、テリー・ポロ、ブライス・ダナー、 ジェームズ・レブホーン、ジョン・エイブラハムズ・・

シカゴの病院で働く看護士グレッグ(スティラー)は、小学校の教師をしているパム(ポロ)との結婚を許してもらうため、彼女の両親、父ジャック(デ・ニーロ)と母ディーナ(ダナー)が住むロング・アイランドの高級住宅地へと向かう。なんとかジャックに気に入られようと努力するグレッグだったが、猫好きのジャックは彼が猫嫌いなのも、また姓がファッカーに似たフォッカーなのも気に入らず、全ては仇となるばかり。そして、ジャックは嘘発見器なるものを持ち込み、グレッグを質問責めにする。実はジャックは元CIAで、心理尋問のプロだったのだ。しかも翌日、貸し衣裳屋で、ジャックはグレッグが脱いだ上着のポケットにマリファナパイプを見つけて、彼の麻薬疑惑を深めてしまう。さらにパムの前の婚約者だったケヴィン(オーウェン・ウィルソン)の豪邸で、ジャックは空港から届いたスーツケースの中にあったSM道具をグレッグのものだと勘違いして、身元調査まで始めてしまった。やがてさんざんな目に遭い、家を追い出されてしまったグレッグは、一人寂しく空港に向かう。しかし娘が本当に彼を愛していると気づいたジャックは、空港まで車を走らせグレッグを引き止めに行った。かくしてグレッグとパムの結婚は許されたのだが、先の滞在中に隠しカメラで撮られた、グレッグがジャックに悪態をつく姿の映像を、ジャックが一人見つめるというオチがつく。

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2009年10月19日 (月)

本94・・ナイン・ストーリーズ

ナイン・ストーリーズ・・D.J.サリンジャー著

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自己の儚い理想と暴虐過酷な現実との間に挟まれて、抜き差しならなくなった人々の自我の内奥を照らし切り込んだサリンジャー自薦の作品集。消化しきれぬ自意識の過剰を感覚的に捉えた「バナナフィッシュにうってつけの日」・・戦地帰りの彼を待っていた彼女とリゾート地に出かけ、ある日、彼女の寝顔を見ながら拳銃自殺する・・など、都会人好みのスマートで洒落た意匠の中に、象徴を駆使し、喚起力の強いイメージを散りばめながら、作者の鋭敏で繊細な感受性と緻密な計算とが作り上げた九つの物語。

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2009年10月18日 (日)

映画132・・理由

理由(1995・アメリカ)

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原作・ジョン・カッツェンバック、監督・アーネ・グリムシャー、出演・ショーン・コネリー、エド・ハリス、ローレンス・フィッシュバーン、ブレア・アンダーウッド、ケイト・キャプショー・・

死刑反対論者であるハーバート大学の法学部教授ポール・アームストロング(コネリー)の許に、エヴァン・ジェリン(ルビー・ディー)という老婦人がやってきた。少女誘拐殺人の濡れ衣を着せられ、死刑監房に入れられている孫の命を助けて欲しいという彼女の申し出を一度は断ったポールであったが、もと弁護士の妻ローリー(キャプショー)の説得で、事件の解明に乗りだすことに。フロリダに飛んだポールは刑務所のボビー・アール(アンダーウッド)と面会、彼は警官タニー・ブラウン(フィッシュバーン)らの苛酷な取調べに屈し、自分が犯人であると告げたと語る。ポールは事件の起きた町オチョビーに赴き、閉鎖的な町の実体を垣間見る。そして黒人というだけで煙たがられていたボビーの身の上と、彼を犯人に仕立てるべくおざなりな捜査が行なわれていたことを確信する。再度刑務所に行ったポールはボビーの口から、同じ死刑囚にして連続殺人鬼のブレア・サリバン(ハリス)こそ真犯人であると知らされ、そのブレアも誇らしげに自分がやったと語った。ボビーを無罪にする交換条件に、自分の両親を殺させたのだ。ボビーの無実を立証できる証拠(サリバンの言った所から凶器のナイフを発見)を手にしたポールは再審を要求、ボビーは勝訴し釈放された。ところが、ポールの妻ローリーと娘がボビーに誘拐される。ボビーの本当の目的はローリーを殺すことだった。ボビーは少女殺人事件の前にも犯罪を犯して逮捕されており、その時警官たちの虐待に遭って去勢されてしまった。その事件の担当弁護士がローリーだった。彼女を逆恨みしたボビーは復讐を決意するが、数年後に犯した少女殺しのため刑務所に入れられてしまった。目的を達成するためには無実を勝ち取って出所するしかない。そこで敏腕な法律学者であり、ローリーの夫でもあるポールに白羽の矢を立てたのだ。ポールは、ボビーが真犯人であると見抜いていたタニーと協力し家族を救い、ボビーはポールに刺され鰐の餌食に。

ローレンス・フィッシュバーンが良い。

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2009年10月16日 (金)

本93・・アドルフ

アドルフ・・バンジャマン・コンスタン著

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若くして倦怠に悩みながら田舎町に住むアドルフは、愛されたい、女を征服したいとの動機から、年上の貴族の情婦エレノールに恋心を抱くが、望みを果たしてみると、耐え難い重荷を感じて彼女と手を切ろうとするのだが・・情熱の解放を求めながらも、ひとたび愛を得ると冷却し、その負担に悩む男のエゴイズムを分析し追及したもの。

というより・・作者コンスタンの自伝的作品ということだが・・

焦燥を抑える力も無く、一時の悔恨で塞いでやった傷口を、また開けてしまうようなかりそめの憐憫。何とか説明がつけば、それで言い訳が立つというような自惚れ。自分の行った悪を語りながら、自身のことのみを気に掛け同情を勝ち得ると自負し、自分は無傷のまま人の破滅を見下ろし、後悔も無く自己分析するような虚栄。自身の無力を他人のせいにし、悪は周囲の中にあるのではなく己の中にあることの解らぬ弱さ。何一つ決まった道も辿らず、何一つ役に立つ職にも就かず、気紛れにずるずると引き摺られ、焦燥をただ一つの力として才能をすり減らし、場所を変えても自分が矯(た)め直されないので、いたずらに未練に後悔を加え、苦悩に過失を加えていく。本心を知った彼女はショックで死んでいくのだが、それでもなお惑い続ける。・・となると、う~ん・・

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2009年10月14日 (水)

本92・・愛と同じくらい孤独

愛と同じくらい孤独・・フランソワーズ・サガン著

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「念願は、十歳に戻ることです。大人でありたくないのです」というサガン。

処女作「悲しみよ こんにちは」を18歳で著し、世界の脚光を浴び、周囲が勝手に作った伝説を纏わされた彼女が、自らその仮面を剥ぎ取り、生い立ち、悪戯だった少女時代、結婚、息子ドニとの生活を優雅な饒舌で語る。愛について、孤独について・・その人生観を浮彫りにした作家サガンのポートレートである。

その作品の登場人物の背後には、実は優しく、また淡々とした淋しさが漂っている。思う存分好きなように人生を突っ走っていく姿勢の裏に、孤独が広がっている。それまでの、センチメンタルで生ぬるい女性文学をよそに、文学理論に拘泥することもなく、シンプルで鋭い文体で、直截に人間の持つ残忍さや孤独を、一見もの哀しいメロディーに包んで描く。

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2009年10月12日 (月)

映画131・・姉のいた夏、いない夏

姉のいた夏、いない夏(2000・アメリカ)

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原作・ジェニファー・イーガン「インヴィジブル・サーカス」、監督・アダム・ブルックス、出演・キャメロン・ディアス、ジューダナ・ブリュースター 、クリストファー・エクルストン、ブライス・ダナー 、パトリック・バーギン・・

1976年。高校を卒業したばかりのフィービー(ブリュースター)は、サンフランシスコで母親ゲイル(ダナー)と二人暮らし。彼女には、世界を変えたいとヒッピー・ムーヴメントにのめり込んでいたフェイス(ディアス)という姉がいたが、7年前、恋人ウルフ(エクルストン)とヨーロッパに行ったきり、その地で自殺して帰らぬ人となる。以来、姉の死はフィービーにとって謎のまま。そこで彼女は、母の反対を押し切り、姉の足跡を辿るべくヨーロッパへと旅立つ。パリに着いたフィービーはウルフを訪ねる。今はフランス人女性クレール(パスコ)と平穏な暮らしをしている彼は、フェイスの死に触れることを語ろうとしなかったが、やがて彼女に口止めされていたというベルリンでの出来事を語りだす。その話にショックを受けたフィービーは、ウルフと共に、姉が死を選んだポルトガルのエスピシェル岬へ向かった。姉は、もっと自分が出来るはずと行動を起こした結果、罪の無い人を死なせてしまい後悔を拭えず償いとして、ウルフの止めも遺された家族への思いも振り切り、飛び降り自殺したのだった。

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2009年10月11日 (日)

絵画34・・フランツ・クサファー・ヴィンターハルター

フランツ・クサファー・ヴィンターハルター

1805年、バーデン大公国(旧ドイツ)の小さな村に生まれ、弟のヘルマンも画家であった。1818年、素描とリトグラフを学ぶため、13歳で故郷メンツェンシュヴァントを離れ、ルードヴィヒ・シューラーの下で1824年までリトグラフの職業訓練を受けた。その後、18歳で奨学金を得てミュンヘン芸術アカデミーに留学、ペーター・コルネリウスの下で絵画を学び、後に流行の肖像画家ヨーゼフ・シュティーラーの下で働く。レオポルト大公夫妻の支援を受け、その肖像画を描き、彼は大公宮廷の画家となった。その後、バーデンを離れフランスへと移り、「デカメロン」を描き賞賛を受ける。スイス、ベルギー、英国でも肖像画を描く。左から2番目の、オーストリアのエリザベート像は有名。

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2009年10月 9日 (金)

本90・・桜の園・三人姉妹

桜の園・三人姉妹・・アントン・チェーホフ著

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☆桜の園・・南ロシアの地主であるラネーフスカヤ夫人は夫と死別後、息子の死などもあり、愛人とパリで暮らしていたが、愛人に裏切られ、経済的にもいきづまって、古い領地に帰ってくる。だが、その領地も抵当に入っており、破産は目前である。美しい「桜の園」を舞台に、旧地主・貴族階級の没落とそれに取ってかわる新興ブルジョワジーの台頭。急変していく現実を理解せず華やかな昔の夢に溺れたため、先祖代々の土地を手放さざるを得なくなった、夕映えのごとく消えゆく貴族階級の哀愁が描かれている。

☆三人姉妹・・単調な田舎の生活の中で、モスクワに行くことを唯一の夢とする三人姉妹が、仕事の悩みや不幸な恋愛などを乗り越え、真に生きることの意味を理解するまでの過程を描く。人間の美しい夢が、俗悪な、日常的な現実の中で次第にしぼんで枯れ果てていくが、悲劇的な基調と、喜劇的な色彩の交錯した一種混合的な人生劇になっている。

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2009年10月 8日 (木)

本91・・トニオ・クレーゲル、ヴェニスに死す

トニオ・クレーゲル、ヴェニスに・・トーマス・マン著

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☆トニオ・クレーゲル・・憂鬱で思索型の一面と、優美で感性的な一面を持つ青年を主人公に、孤立ゆえの苦悩とそれに耐えつつ芸術性を頼りに生を支えてゆく姿を描く・・思索好きの読書家で内向的なトニオは、明るく社交的なハンスに対し愛情にも似た友情の念を持っていた。また、典型的なお嬢様気質で美人のインゲボルグに、気付いたときには恋をしていた。両親亡き後故郷を後にし、時が経ち、詩人として名を成した後、トニオは芸術とは何かに対する答えを求め、まず故郷を身分を明かさぬまま訪ね、その後デンマークへ旅行することになる。しかし、旅先のホテルで偶然にも、学生時代の憧れだったハンスとインゲボルグを目撃する。懐かしさと愛情とで話しかけたいトニオだが、彼らに映る「理性的(俗世的)」な華やかさを見るにつけ動揺する。自分の考えるように理性で隠さない感情というものを大切にすべきか、それとも芸術的高尚さを目指すべきか。そして、トニオは一人孤立しながらも自分の信じる芸術を頼りに生きねばならないと決意する。その反面、悔恨と郷愁に堪えられず、すすり泣いてしまう。

☆ヴェニスに死す・・死に魅惑されて没落する初老の芸術家の悲劇を描く・・20世紀初頭のミュンヘン。著名な作家グスタフ・フォン・アッシェンバハは、執筆に疲れて英国式庭園を散策した帰り、異国風の男の姿を見て旅への憧憬をかきたてられる。いったんアドリア海沿岸の保養地に出かけたが、嫌気がさしてヴェネツィアに足を向ける。ホテルには長期滞在している上流階級のポーランド人家族がおり、その十代初めと思われる息子タージオの美しさにアッシェンバハは魅せられてしまう。やがて海辺で遊ぶ少年の姿を見るだけでは満足できなくなり、後をつけたり家族の部屋をのぞきこんだりするようになる。様々な栄誉に包まれた「威厳ある」作家である彼は、こうして美少年への恋によって放埒な心情にのめりこんでいく。だが、ヴェネツィアにはコレラが迫っていた。滞在客たちが逃げ出し閑散とするなか、しかしアッシェンバハは美少年から離れたくないためにこの地を去ることができない。そして、少年とその家族がついにヴェネツィアを旅立つ日、アッシェンバハはコレラに感染して死を迎えるのであった。

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2009年10月 6日 (火)

本89・・星の王子さま

星の王子さま・・アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著

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「大切なものは、目に見えない」・・生命とは、愛とはといった人生の重要な問題に答える指針。

操縦士の「ぼく」は、サハラ砂漠に不時着する。1週間分の水しかなく、周囲1000マイル以内に誰もいないであろう孤独で不安な夜を過ごした「ぼく」は、翌日、1人の少年と出会う。話すうちに、「ぼく」は少年がある小惑星からやってきた王子であることを知る。

子供の心を忘れてしまった大人に向けた示唆である。王子が訪れた小惑星で出会うのは、いずれも愚かさを風刺化された大人たちであるし、子供の心を持ち続けようとする「ぼく」も、飛行機の修理に夢中になるあまりに、王子の話をぞんざいに聞いてしまったりする。また、別の場面に登場する、何をするにつけても急ぎ、どこに行くかもよく理解しないまま特急列車であちこちに移動したり、時間を節約する事にあくせくして、節約した時間で何をするかを考えていなかったりという大人たちの姿も、作者による痛烈な批判である。

キツネとの対話は、この作品の重要な場面である。 あるものを他と違って愛しく思うことができるのはなぜなのか。自分の愛情の対象であった小惑星やバラへの自信を失って悩む王子に対して、キツネは「仲良くなる」とはどういうことかを通じて、友情、ひいては愛情(人間愛ではなく恋愛的な意味での愛情)についてを語る事になる。「大切なものは、目に見えない」という作品上の重要な台詞が登場するのもこの場面である。この台詞に基づく考えは後にも登場し、「砂漠が美しく見えるのは、そのどこかに井戸を隠しているから」、さらには「夜空が美しく見えるのは、そのどこかに王子が今もバラと暮らしているから」という考え方に繋がるのである。

「星の王子さま」の最後のシーンでは、「ぼく」の最後ははっきりとは描かれていない。そして、作者のサン=テグジュペリ自身は、敵軍の偵察に向かうため飛行機で基地を飛び立ったまま消息を絶ち、二度と戻って来なかったのである(享年44才)。

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2009年10月 4日 (日)

本88・・マルテの手記

マルテの手記・・ライナー・マリア・リルケ著

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リルケの唯一の長編小説。デンマーク出身の青年詩人マルテが、パリで孤独な生活を送りながら街や人々、芸術、自身の思い出などについての断片的な随想を書き連ねていくという形式で書かれているため、小説でありながら筋らしいものはほとんどない。主人公マルテのモデルとなっているのは、実際にパリで生活し、無名のまま若くして死んだデンマークの詩人オプストフェルダーである。

断片的な感想、過去の追憶、備忘ノート、散文詩の一節、折々の風景描写、日記、手紙などをまとめた手記体の作品。マルテという一青年作家を、パリのあらゆる不安、汚濁、恐怖、絶望などに取り巻かれた死の影が差す厳しい孤独の中に置き、その偽り無い生活や内部体験を通して「生」と「存在」との不安が描かれ、詩人リルケの魂の告白の書とされる。

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2009年10月 2日 (金)

機織り・・その32

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大小の麻の葉に、露芝。

時節柄、紅葉風かも。

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2009年10月 1日 (木)

本87・・知と愛

知と愛・・ヘルマン・ヘッセ著

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「君は母の胸に眠るが、ぼくは荒野にさめている。ぼくにとっては太陽が照るが、君にとっては月が照り、星が光る。君の夢は少女を夢みるが、ぼくの夢は少年を……」

精神の人になろうとして修道院に入った美少年ゴルトムントは、そこで出会った若い師ナルチスによって、自分は精神よりもむしろ芸術に奉仕すべき人間であることを教えられ、知を断念して愛に生きようと、愛欲と放浪の生活に入って行く・・

冒頭の言葉は、ナルチスがゴルトムントに言ったもので、原題は「ナルチスとゴルトムント」であり、少年ゴルトムントが修道院でナルチスと接触する期間の五章・女性を知った事で修道院を脱出し、恋愛遍歴と彫刻修行をする十章・修道院に戻り、木彫りの製作とナルチスとの友情に生きて死ぬまでの五章から成る。

「悪魔と魔人とを知らず、それらに対して絶えず戦うことをしないような、高貴な高められた生活は無い」とする知の人であり禁欲者であるナルチスは、愛欲の子ゴルトムントへの理解者であり、官能や悪と不断に戦いながら浄化と解放を美的行為に求め、ナルチスに憧れを持ち続けるゴルトムント。人間の最も根源的な欲求である「知」と「愛」が、反発しあいながら互いに慕い合う姿を描いた作品である。

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