« 本104・・サキ短編集 | トップページ | 本106・・不思議の国のアリス »

2010年1月17日 (日)

本105・・モンテ・フェルモの丘の家

モンテ・フェルモの丘の家・・ナタリア・ギンズブルグ著

518tcrhk7kl__sl500_aa300_ジュゼッペとルクレツィアを取り巻く人々の、それなりの年を重ねた、それぞれの生活の倦怠感と新しい模索の時の流れを、書簡集という形式で描く。60年代後半から70年代にかけて、各々が謳歌した自由のツケを、遣る瀬無さと砂を噛む思いで払わされる。

「モンテ・フェルモ」とは不動の山を意味し、ルクレツィアの住む「マルゲリーテ館」は、友情の可視的な象徴として永続することを誰も疑わなかった。50才を超えたジュゼッペは生活に倦み、全てを放棄して兄の住むアメリカのプリンストン(現実感の乏しい、彼の虚構の空間)に移り住む。間も無くその兄が急死し、疎んでいた筈の嫂を二度目の妻とするがやがて病死され、それに前後して、上手く付き合って来れなかったゲイである息子アルベリーコをも、友人のイザコザに巻き込まれ殺されて喪う。ルクレツィアは理解のあるピエロの妻として暮らすが、ある不倫によって自ら結婚を崩壊(マルゲリーテ館も無くなる)させ、生まれた赤ん坊を亡くし、不実な不倫相手も失う。他の人々も、明白に妥協でしかない結婚や愛人関係に身を委ねて行く。数年の内に家も友情も惨めに崩壊し、それぞれが流され、移ろって行く。物語は、ルクレツィアがジュゼッペに宛てた切々たる手紙で終わる。

イタリア作家の著者が描き続ける「家族像」は、自身が受けた辛苦に満ちた家庭体験(最初の夫をレジスタンス運動に因り拷問で亡くし葬ることも許されず、二度目の夫にも先立たれる。ユダヤ人の伝統的な血への継承への固執が色濃い)で、物理的・精神的に欠損している家庭が描かれる。

|

« 本104・・サキ短編集 | トップページ | 本106・・不思議の国のアリス »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 本104・・サキ短編集 | トップページ | 本106・・不思議の国のアリス »