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2010年2月

2010年2月25日 (木)

本121・・オーランドー

オーランドー・・ヴァージニア・ウルフ著

9784480034298_2英国ケント州の小さな町・セヴノークスに、700年以上前から「ノール(丘)」というオーランドーの館がある。ノールは、高僧たちの住まいであったがヘンリー八世に贈られ、後にエリザベス一世が従弟のトマス・サックヴィルに贈与して以来、1946年までの4世紀余りサックヴィル家のもので、エリザベス朝の頃は英国最大の広大な私邸であった。オーランドーは、ヴィクトリア・サックヴィル=ウェスト(ヴィタ)がモデルと云われる。

菫色の瞳を持つ美少年オーランドーは、館を訪れたエリザベス一世に薔薇水の鉢を捧げる。女王は館を少年の父親に贈り、やがて少年は女王の寵臣に。ロンドンの宮廷でのスキャンダルと失恋(婚約者がいながら、ロシアの姫君サーシャに振られる)。失意のオーランドーは館に籠り、7日間の眠りから覚め悲劇を書き捲るが、ルーマニアの皇女に付き纏われ、大使としてトルコに逃げ活躍する。暴動が起こり再び7日間の眠りの末、女に変身。ジプシーの仲間入りをし、望郷の念で英国に帰郷。人生と恋を求めて18世紀のロンドン社交界に出入りする内、文士達のパトロンに。19世紀のオーランドーは、ヴィクトリア朝の時代精神に侵され感傷的なヘボ詩しか書けない。結婚病に掛かり、海の男と結婚するが男は海に去り、オーランドーは館に籠り詩作に励む。16世紀以来書き続けて来た詩集「樫の木」が完成し出版、文学賞受賞。20世紀、男児を出産し36才になったオーランドーは、車でロンドンに買い物に出、やがて飛行機で帰ってきた夫を迎える。両性具有の幻想。

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2010年2月22日 (月)

本120・・ハプスブルクの涙

ハプスブルクの涙・・マリールイーゼ・フォン・インゲンハイム著

4087602931中央ヨーロッパの盟主として隆盛を誇るオーストリア帝国。19世紀も終盤を迎えて、華麗なるハプスブルク家の前途にも暗雲が漂う。襲い来る運命の嵐に抗うように、旅に明け暮れていた皇妃エリザベート(シシー)の身辺でも次々と悲劇が起こる。激動の時代、風のように駆け抜けて行った「流離いの皇妃」。

シシー29才の折りに起こったメキシコ皇帝マクシミリアンの銃殺、19年後のバイエルン国王ルートヴィヒ二世の謎の溺死(狂人だとされ幽閉されていたため自殺であったと思われる)、マイヤーリングの狩猟用城館での皇太子ルードルフの情死等、精神的に深く結ばれた相手の死だっただけに、彼女にとっては致命的な打撃に。その後、「一所不在」の強迫観念に駆られるように諸国を漂泊し、遂には旅先のジュネーヴでイタリア人の無政府主義者ルイジ・ルケーニに、単に政府筋の有名人だった一人として刺殺される。

「皇妃エリザベート」の続編で、30才から61才までの生涯を描く。

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2010年2月21日 (日)

本119・・皇妃エリザベート

皇妃エリザベート・・マリールイーゼ・フォン・インゲンハイム著

408760280x栄華を極めたオーストリア帝国が、最後の輝きを放っていた19世紀後半。田舎育ちで父譲りの自由奔放な、バイエルン王の分家である公爵令嬢エリザベート(シシー)は、16才で皇帝フランツ・ヨーゼフの妃として、華麗なるハプスブルク家の帝室に迎えられ、母の姉である伯母のソフィー大公妃を姑とし、その対立など波乱の人生の幕が上がる。

伝記も多いが、これも虚実取り混ぜて14才から30才までの「エリザベートとその周辺」を伝える。

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2010年2月19日 (金)

本118・・目は嘘をつく

目は嘘をつく・・ジェイン・スタントン・ヒッチコック著

4151000763ニューヨークで騙し絵画家として暮らすフェイス。ある日、有名な大富豪の未亡人で、美術品のコレクターとしても知られるフランシス・グリフィンに、屋敷の舞踏室の壁画を依頼される。そこは15年前にグリフィン夫妻の一人娘カッサンドラが刺殺され、事の真相が迷宮入りしていた場所。フランシスは何故、死んだ娘と瓜二つのフェイスを呼び寄せ、敢えて古傷を抉るような真似をするのか。フェイスは気付かず、老女の仕掛けた奇妙なゲームに巻き込まれて行く・・親友であったハリー亡き後、彼がフランシスとは旧知の間柄でゲームに積極的に参加していたことを知る。カッサンドラの夫であったロベルトもフランシスも、犯人を知りながら口外せず15年。富豪一族の出であり高潔な紳士であった筈のホールト・グリフィンと、結婚前は無名だったフランシスとの関係。ホールトとカッサンドラ。フランシスは孤独に耐えかね(余命の無いフリまでし)、娘への償いと称してフェイスとの養子縁組を計る。独立性を選びフランシスの要求を拒んだフェイスは、翌日、無残にも酸で塗り潰された自らの壁画を見出す。

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2010年2月17日 (水)

本117・・マンスフィールド短編集

マンスフィールド短編集・・キャサリン・マンスフィールド著

32942689☆「園遊会」・・楽しく華やかな園遊会を通して、近所の人の死によって感じやすい少女の心に投じられた一抹の陰影。

☆「パーカーおばあさんの人生」・・その人生に流れる、哀愁と孤独感。

☆「理想的な家庭」・・老境に入った実業家の、悲哀と幻滅。

その他12編。人生の入り口に立つ少女の、極めて敏感で懐疑的な心理の陰影が、微妙に表現される。華やかな光の中に、暗い哀しみの中に。

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2010年2月15日 (月)

本116・・にんじん

にんじん・・ジュール・ルナール著

00325531髪の赤い、そばかすだらけの男の子は「にんじん」と呼ばれ、実の母親の苛めにあい愛情に飢え傷つく少年の孤独、という固定観念があるが・・著者の自伝的作品とされる。

それほど父親は無関心でもなし、兄と姉もまあごく普通であり、母親にしても躾は厳しいが「にんじん」の方にもそれなりの理由もあって、母と子の対立はいつの世にも何処にも有りがちであるし、家族といえども相性もあれば気持ちの擦れ違いもある。勿論、子供の成長に歪みが生ずるとなれば、親の影響や責任は大であるが。心の表現を心得ない者同士の悲劇であり、思い込みで相手の術を取り違えてしまう喜劇でもある。

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2010年2月14日 (日)

本115・・メルヒェン

メルヒェン・・ヘルマン・ヘッセ著

41npnozsdvl__sl500_aa240_☆「アウグスツス」・・独りで、生まれる子を待ち受ける貧しい女性。微かに心を慰める音楽が流れてくる隣の家に、一人の不思議な老人が住んでいた。老人の計らいで無事に出産を終え、名付け親になってもらう。誰からも愛される子に、という母の祈りが叶えられ、アウグスツス少年は人々の愛に包まれて育つ。アウグスツスは、老人の家で暖炉の静かな炎を見詰めながらお話を聴くのが大好きで、時には優しい音楽が聞こえ天使の舞うのが見えるのだった・・成長するにつれ、アウグスツスは人々の愛を当然のように思い、感謝もせずむしろ傲慢になり、周りの人々を傷付けて行く。時は移り、何をしても虚しく孤独なアウグスツスは、ある夜、自殺をしようとすると懐かしい老人が現れる。心が再び幸せで清く朗らかに成るために願いを掛けるよう言われ、古い魔力が無くなって人を愛せるようにと祈る。長年の人々の憤懣が押し寄せ、報いを全て受け、流浪の民となりながら、人生の美しさや愛すべき哀しみを味わうアウグスツス。長い時が過ぎ、冬の到来と共に故郷に辿り着くと、疲れ果てた彼を「長い旅をして来たね」と老人が優しく迎え入れる。アウグスツスは、暖炉の炎の前で再びあの音楽と天使たちに包まれ、眼を閉じる。

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2010年2月10日 (水)

本114・・春の嵐

春の嵐・・ヘルマン・ヘッセ著

414awdgnxjl__sl500_aa240_少年時代の淡い恋が、暴走した橇と共に過ぎ去った時、不具になったクーンは改めて音楽を志す。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼に留まり、二人の間に不思議な友情が生まれる。やがて彼等の前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する。自分は孤立している、いかなる人間も自分には関係が無い、いかなる人間も自分を理解しない、人はみな他人に自分を本当に解らせることは出来ない、何者も他人と分かち合い共にすることは出来ないのか。運命は親切でなく、人生はむら気で酷く、自然には親切も理解も存在しない、偶然に翻弄される我々の中には存在し得るのか・・精神的な世界を志向する詩人が、幸福の意義を求めて描いた孤独者のエレジー。

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2010年2月 9日 (火)

映画97・・ロングウェイ・ホーム

ロングウェイ・ホーム(1981・アメリカ)

Fro0059s_l監督・ロバート・マーコウィッツ、出演・ティモシー・ハットン、ロザンナ・アークエット、ブレンダ・ヴァッカーロ・・

幼い頃離れ離れになった3人の孤児が、苦難の末、16年後に再会するまでを描く実話。

リリアン(ヴァッカーロ)は、フロリダ州立児童擁護センターに就職。リギンズ所長から収容されている哀れな子供達について教わる。ドナルド、デイヴィッド、キャロラインの3人兄妹が彼女の注意を引く。両親が兄妹を捨てて姿を消して以来、ドナルドが親代りを務め廃家などで暮らして来たと・・ある朝、デイヴィッドとキャロラインは里子に。それを知ったドナルドが、弟達の乗せられた自動車を「連れて行かないで!」と必死に追う・・

5年後、センターにドナルド(ハットン)が現れ、弟達の居所を教えてくれと頼むが、リリアンは彼が18歳になる迄は無理と。ドナルドはブース夫婦に引き取られ、優れた子だが心を本当には開かないドナルドに養父は悩む。18歳の誕生日に再びセンターを訪れたドナルドに、リリアンは弟、妹の里親が住所を教えることを拒んだと。ドナルドは養父と喧嘩し家を出ることに、養母が何かの足しにと金を手渡す。自活しながら高校に通い、ローズ(アークェット)と知り合う。卒業式の日、草刈り仕事をしていたドナルドの所へ養父が卒業証書を持って来、ドナルドは養父母に感謝。弟妹が見つからぬまま4年。ドナルドはローズと結婚するが弟妹を思わぬ時は無く、ローズはそんな夫に不満を感じもするが理解し探し続けるよう励ます。弟妹は2人共養家から家出していた。リリアンはデイヴィッドの養家の近くで消息を聞き、電気屋を営む彼に会いに行く。リリアンの尽力で兄弟は再会出来たが、キャロラインの消息は未だ知れず。リギンズ所長の引退で、リリアンは耳よりなことを聞く。キャロラインが軍隊に入る時、軍から照会されたと。早速軍に問い合わせ、彼女がある少尉と結婚したと判明。軍基地に電話するが、話したくないという返事に動揺するドナルド。キャロラインの手紙がリリアンに届き、自分の本当の姓を忘れあんな返答をしたと。キャロラインは兄2人と電話で話し、コロンバス空港で会うことに。もどかしさに耐え、遂に3人は16年振りに再会。共に抱き合い、ドナルドは「これがホームだ・・」と。

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2010年2月 8日 (月)

本113・・クヌルプ

クヌルプ・・ヘルマン・ヘッセ著

41s8wpztrwl__sl500_aa240__313才、年上の娘への初恋が裏切られた時からクヌルプの漂泊の人生が始まる。旅職人となった彼は、器用でありながらまともな親方にはならなかったが 、自然と人生の美しさを見出す生活の芸術家となり、行く先々で人々の息苦しい生活に一脈の明るさと寛ぎをもたらす。40才となり肺を病み、最後に故郷へ帰る。雪の中で倒れた彼に、神様はクヌルプは彼らしく生きた、と語りかける・・永遠に流浪する市井の芸術家の魂を描く。

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2010年2月 7日 (日)

本112・・黒猫・黄金虫

黒猫・黄金虫・・エドガー・アラン・ポー著

30428158☆「黒猫」・・発作的に殺した黒猫の呪いを受けて、転落して行く自己破滅型の病的心理を持つ男の姿を、恐怖と戦慄の内に象徴化。溺愛していた黒猫を、天邪鬼という邪悪な衝動でその片目をペンナイフで抉り取り、やがて猫を庭の木に吊るす。その後不審火で家が焼け落ち、二匹目の黒猫にも嫌悪感を覚え殺そうとしたが、庇った妻の脳天に斧を打ち込んでしまう。妻と猫の死骸を壁に塗り込めるが、家宅捜索を上手く切り抜けたところで、再び天邪鬼により死体のありかを教えてしまう。

☆「黄金虫」・・隠された伝説の財宝を巡る怪奇的推理小説。サウスカロライナのサリヴァン島に住む男が、不思議な黄金虫を捕まえたところから、それを包んでいた羊皮紙にあった暗号を読み解き、その昔海賊が隠しておいたという財宝を手に入れる。

☆「アッシャー家の崩壊」・・暗鬱と荒涼と、心を凍らせるような幻想に満ちた散文詩風の短編。荒んだ屋敷に住む、神経をすり減らした病弱な双子の兄妹。乞われて友人が訪れるが、死んだはずの妹が現れ兄を圧死させ、家が崩れ落ち、陰鬱な沼が飲み込んで行く。

☆「ウィリアム・ウィルスン」・・ウィルスンは、イングランドのマナーハウス(寄宿学校)で、自分と同じ日に入学した同姓同名の双子のような少年と出会い、その後もずっと光と影のように付き纏われる。やがて、堪えきれなくなったウィルスンは、その男の胸に剣を刺すが、鏡に向かって行く自分が血塗れ。二重人格というだけでなく、良心と原罪との戦い。

・・近代の新しい美と戦慄を創造し、劇的で悲惨な短い生涯を送った著者は、母国アメリカよりもフランスで高く評価され、酒と麻薬の乱れた生活を送り、奇矯な振る舞いで有名でもある。

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2010年2月 6日 (土)

映画96・・サイドウェイ

サイドウェイ(2004・アメリカ)

Fsa0142k_l原作・レックス・ピケット、監督・アレクサンダー・ペイン、出演・ ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラー・オー ・・

英語教師のマイルス(ジアマッティ)は、小説の出版を巡り編集部からの返事を待つ。1週間後に友人のジャック(チャーチ)が結婚するため、2人は前祝いにワインの試飲旅行へ。マイルスは相当のワイン通だが、ジャックの目的は独身最後にハメを外すこと。対照的な性格の中年独身男2人のワインと女性を巡る珍道中がユーモラス且つしみじみと綴られる。前妻との離婚を引き摺るマイルスに、ウェイトレスのマヤ(マドセン)を誘うよう嗾け、自分はワイナリーで働くステファニー(オー)を口説く。マイルスとマヤも惹かれ合う。金曜日の試飲会に行かれず、止むを得ずマイルスはマヤにジャックの結婚を打ち明けるが、怒ったマヤに振られ、ジャックはステファニーに鼻を折られる。事故で鼻を折ったと装い帰る2人。無事にジャックの結婚式は終えるが、前妻は妊娠中、出版社からは断りの返事。取って置きのワインを独りで飲み、やがて普段の生活に戻るマイルスだが、マヤに送った手紙への優しい返事が留守番電話に・・マヤを訪れるマイルス。

色、味、香り、その性格は千差万別のワイン。至福の喜びを与え、時にはがっかりさせられ、好みの「彼女」に出会えるかは恋人探しと同じ位に難しい。何処にでもいそうなキャラクター達の何気ないドラマの中に、ちょっぴりロマンティックな要素が。

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2010年2月 5日 (金)

映画95・・バラキ

バラキ(1972・伊、米)

Img_1197043_32604416_1_2監督・テレンス・ヤング、出演・チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラ・・

1962年、ジョージア州アトランタの連邦刑務所。バラキ(ブロンソン)は同房の囚人を鉄パイプで殴り殺す。バラキの告白が始まる序章・・所内で命を狙われていることに気付き、看守に独房へと頼むが叶わず、ジェノベーゼ(バンチュラ)の理解を仰いだ結果、彼の指令で狙われていた事が判明。彼が殺した男は無関係、自責の念と彼のボスで絶対権力者のジェノベーゼへの復讐心から、所属していた組織「コーザ・ノストラ」の秘密を係官ライアンに話し始める・・

1904年、ハーレム生まれのバラキは不良少年としてシンシン刑務所に。ベンダー等と知り合いマランツァーノ一家に入る。マランツァーノは、ニューヨーク暗黒街最大のマッセリアと勢力争い中。この抗争が「カステラマレーゼ戦争」と呼ばれバラキは認められる。より大きな組織に入り、レイナと血の誓いで「兄弟」になるがレイナは殺される。ルチアーノの招待でレストランに現れたマッセリアは、彼の部下に殺され平和が戻る。マランツァーノは全国からボス等を集め、「コーザ・ノストラ」の組織を整える。ニューヨークは5大ファミリーに分れ、ルチアーノが1つのボスに。マランツァーノは全米24ファミリーの大統領、バラキはその親衛隊に属し、ジェノベーゼはルチアーノのアンダーボス。再び緊張が起こり、マランツァーノとルチアーノが反目。1931年、マランツァーノは警官を装った4人の男にナイフで刺され死亡。バラキは身の危険を感じレイナの未亡人に匿まわれ、娘マリアと結婚。彼はジェノベーゼの部下になり、スロット・マシン20台分の権利を。ルチアーノが売春容疑で30年のイタリア追放。ジェノベーゼがボスになるが、戦いが激しく彼もイタリアへ。1946年、アメリカに戻ったジェノベーゼは組織の立て直しで、アナスタジア等の邪魔者を殺し再びボスの地位に。1960年、レストラン経営し家庭を持つバラキも権力争いの麻薬取引きで捕まり、ジェノベーゼも麻薬大量所持で逮捕。ベンダーの陰謀でジェノベーゼはバラキも仲間とし、2万ドルの賞金で刑務所内のバラキを狙う。1963年、上院審問委員会は、組織犯罪史上最も重要な証人バラキの証言を聞くも、委員等は自分達の売名のため、時代錯誤なギャング物語を求める。独房に戻ったバラキは仲間を裏切った後悔と、信用したアメリカなる組織に絶望し自殺を図るが、FBIのライアンに発見され一命を取り止める。

バラキは、ジェノベーゼの死後まで完全警備の独房の中で生きた。逃亡を防ぐのではなく、外から入り込めない独房で。そして、ジェノベーゼの半年長く生きた。

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2010年2月 4日 (木)

機織り・・その35

090903_35_0063セット、その5の③

ベージュ地に、七宝柄。地紋も。

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2010年2月 3日 (水)

本111・・お菓子と麦酒

お菓子と麦酒・・ウィリアム・サマセット・モーム著

Maugham_oakshitobeer普段からそれほど親しくしていない、同じ作家仲間のオルロイ・キアから、思いがけなく電話があり会うことに。それを切っ掛けに昔のことが思い出され、過去の回想と現在の事件が織り合わされていく。

文壇の大御所ドリッフィールドの妻であるロージーの恐るべき男性遍歴。娼婦型女性の性的無軌道と無邪気で憎めない女性像を描きながら、イギリス文壇の偽善的内幕と俗物性を、痛烈に暴露し風刺。殊に、ロージーの「銀色に輝く太陽」の如く天衣無縫な明るさは、事実の不潔さを超える。

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2010年2月 1日 (月)

本110・・イワン・デニーソヴィチの一日

イワン・デニーソヴィチの一日・・アレクサンドル・イサエヴィチ・ソルジェニーツィン著

51pnwielmkl__sl500_aa300_スターリン暗黒時代の、悲惨極まる強制収容所のある一日を、自身の収容所での8年間とその後の追放時代の経験により、リアルだが温もりを込めて描かれる。

主人公イワン・デニーソヴィチ・シューホフは、ドイツ軍の捕虜となりながら脱走するが、母国当局の信用を得られず、「祖国を裏切ったという署名を拒めば、経帷子(かたびら)を着せられる」ため署名し、10年の強制収容所送り。登場人物達は、そのままソ連社会の各階層(百姓、軍人、インテリ、オールドポリシェヴィキ、パブティスト信者、富農、官僚)を代表し、仲間内では、スターリンに対する批判、朝鮮戦争を巡る世界政治の動向、ソ連経済の現状などや、神や宗教、芸術についても論議され、収容所内での密告や裏切り、処罰やささやかな反抗、過酷な状況下での高潔な行為等が展開される。衝撃的で悲惨な環境でありながら、極めて抑制の効いた静かな文章のため、「午前5時、いつものように、起床の鐘が鳴った」で始まり、「シューホフは、すっかり満ち足りた気持ちで眠りに落ちる・・幸運な一日だった。営倉へもぶち込まれず、自分の班がそこそこの作業場で仕事を終えられた。昼飯の時に割りのよい粥が食べられた。班長がうまく切り盛りしてくれた。皆で楽しくブロック積みが出来た。必要な欠片が身体検査で見つからなかった。晩には仲間にささやかな稼ぎをさせてもらった。煙草も買えた。どうやら病気にならずに済んだ・・で終わる、密度の濃い一日が、その語り口によってともすれば民話風の趣さえ醸される。ソ連という国家の長い歴史と、そこに住む人々の深刻な苦悩が浮き彫りになりつつも、彼等の、逆境の中にあっても絶望せず足元を見て生きる、明日という日を信じて止まない楽天的な気質が、ほろ苦いユーモアとなる。

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