« 本128・・ヘルマンとドロテーア | トップページ | 本130・・マタハリ »

2010年3月18日 (木)

本129・・一杯の珈琲から

一杯の珈琲から・・エーリヒ・ケストナー著

50803夏の休暇を音楽の都ザルツブルクで友人と過ごそうと、ゲオルクは国境を挟んで目と鼻の先にあるドイツの町に宿を取る。為替管理の制約から、ドイツ側では大金持ち、オーストリア側では乞食同然の生活(手元不如意)を始めた彼は、友人の助けで国境を往復する毎日を楽しむ。ところがある日、手違いで友人が待ち合わせのカフェに現れなかったばかりに、彼は珈琲代さえ払えない羽目に陥り、居合わせた美女に助けを求め・・

この作品の中には、政治的・社会的な不協和音は無く、良風美俗に反するものも無く、主人公を脅かす脅威は為替管理法である。国境のこちら側(ドイツ)では豪奢なホテルに泊まって大名暮らしをしている裕福なゲオルクが、一歩オーストリアに入ると無一文の生活を強制される。この小説の喜劇的な雰囲気は、一方に於いては主人公の不如意な境遇により、他方に於いては由緒ある宮殿の持ち主であるコンスタンツェの父親が、一夏、喜劇の材料にするために、使用人たちを全部避暑に行かせ、その間家族は使用人に変装して、自宅を金持ちのアメリカ人の一家に貸すという奇矯な思い付きによって醸し出される。芸術的なザルツブルクの古都を背景にして描かれたゲオルクとコンスタンツェの恋愛(成就する)は、心憎いほど軽妙で、優美で、ユーモラスであり実に洒落ている。因みに、為替管理局からやっと認可が下りたのは、夏も過ぎた9月であった。

|

« 本128・・ヘルマンとドロテーア | トップページ | 本130・・マタハリ »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 本128・・ヘルマンとドロテーア | トップページ | 本130・・マタハリ »