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2010年4月

2010年4月29日 (木)

本142・・蟹工船、1928・3・15

蟹工船、1928・3・15・・小林多喜二著

Kanikousen1☆「蟹工船」・・カムチャツカ沖で蟹を獲り、それを缶詰に加工する蟹工船の博光丸。様々な出稼ぎ労働者を安い賃金で酷使し、高価な蟹の缶詰を生産する海上の閉鎖空間で、彼らは自分達の労働の結果、高価な製品を生み出しているにも関わらず、蟹工船の持ち主である大会社の資本家達に不当に搾取される。情け知らずの監督者である浅川は労働者たちを人間扱いせず、彼らは劣悪な環境の中で懲罰という名の暴力や虐待、過労と病気(脚気)で次々と倒れて行く。初めのうちは仕方がないと諦める者や現状に慣らされた者もいたが、やがて労働者達は人間的な待遇を求めて指導者のもと団結し、サボタージュしストライキに踏み切る。漁期が終わって函館に帰港した時、それらをしたのは博光丸だけではなく、監督や雑夫長は漁期中にストライキのような不祥事を起こし損害を与えたとして首になる。

☆「一九二八・三・一五」・・2ヶ月に渡って500名以上の労働者や社会運動家が逮捕され、労働組合や労農党、無産青年同盟が解散させられた、3月15日のいわゆる共産党事件を扱い、小樽に於けるその事件の検挙を中心として、闘士達のそれぞれの長所も欠点も含めたタイプと生活が描かれる。発表した「戦旗」は、多くの削除や伏字を使ったものの発禁となるが、日本の特高警察の残虐を初めて徹底的に暴露・・著者は、自家の窮迫した境遇や、当時の深刻な不況から来る社会不安などの影響で労働運動への参加を始める。「一九二八年三月十五」の発表により、作品中の特別高等警察に因る拷問の描写が特高警察の憤激を買い、後に拷問死させられる引き金となった。享年29才。

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2010年4月26日 (月)

本141・・O・ヘンリ短編集(一)

O・ヘンリ短編集(一)・・オー・ヘンリ著

207201☆「警官と賛美歌」・・若いホームレスが、冬に備え3ヶ月ほど刑務所に収監されるべく、軽犯罪をあれこれ試すが相手にされず、教会に辿り着いて賛美歌を聴くうち改心を誓った時、警官に職質されて御用。

☆「振子」・・結婚して2年のジョンは、在り来たりの生活の中で、今日も妻に難詰されながらも玉突きに出かける積りで家に帰るが、義母の急病で妻がいない。すっかり反省し、今後は妻を労わり遊ばないと誓うが、その落ち込んでいる矢先に予想外に早く妻が戻ったことで、いつもの生活に戻る。

☆「アラカルトの春」・・貧しい仮住まいのタイピストであるサラーは、貸主のレストランの訳の判らないメニューを秩序よくタイプして渡して以来、3度の食事にありつくことに。去年の夏に田舎へ出掛け、一人の農夫ウォルターと恋をし、タンポポの首飾りを貰い春に結婚の約束をするが、その春になって彼から便りが無く、淋しく唯一の仕事のメニューのタイピングをする生活を送る。そんなある日突然彼が現れ、彼女からの引越しの手紙は届かず探していたところ、レストランに辿り着き、彼女のメニューを見て飛んで来たと言う。タンポポのメニューの蘭には「ゆで卵付き、いとしいウォルター」と打ち間違えられていた。彼女のタイプライターの癖である「W」が行を飛び出して・・

☆「運命の衝撃」・・女性問題で富豪の叔父の顰蹙を買い、無一文になったヴァランスは独り公園のベンチに。一人のホームレスが傍らに座り、数年来音信の途絶えていた叔父から以前の豪勢な生活に戻るよう連絡があったことで、気ままに暮らしていたため今や不安になり、一晩一緒にいてくれとヴァランスに頼む。翌日も弁護士の所へ付いていってやると、昨日の話しが無かったことになり大喜びの男は去って行く。その弁護士から、叔父の心変わりで、ヴァランスに元の生活に戻るよう伝えられる。

☆「ラッパの響き」・・億万長者が殺され、その犯人がぶらついている所を刑事と出くわす。二人は知り合いで、過去に刑事は犯人から1000ドル借りがあったため、見逃すはめに。犯人は調子に乗り、新聞社に電話し自分が犯人だと挑発。高飛びは翌日なので、二人はその夜飲み明かす。朝、刑事が新聞を読んでいると、何かニュースでも? と問う犯人。刑事はメモを書き犯人に読ませる。それは新聞社宛で、逮捕の賞金1000ドルの受取人を犯人名義に指定し、支払いを求める内容。そして、刑事は犯人を引き立てて行く。

☆「自動車を待つ間」・・ある公園のベンチで、一人の女が本を読んでいる。本を落とし、一人の男が拾って渡したことで会話。女は上流階級に属しその生活に飽き飽きしている様子を語り、庶民風の男を煙に巻くように、外れに待たした車で帰ると告げ去る。男が追けて行くと、女は車を通り過ぎ、在り来たりのレストランに入り夜番のレジの仕事を始めた。男は公園に戻り暫くぶらついた後、待たせていた車に乗り込み運転手にクラブへと行き先を告げる。

☆「多忙な仲買人のロマンス」・・株式仲買人のハーヴェイは、忙しさの余り新しい速記者を雇うよう秘書に告げたことも忘れる始末。仕方なく、今日も仕事をする現速記者。束の間一段落した時、開けた窓からかぐわしいライラックの香りを嗅いだハーヴェイは、その香りの元である速記者のレズリーに慌しく求婚するが、仕事に埋もれ彼女と夕べ結婚したことも忘れているのを、彼女に窘められる。

☆「黄金の神と恋の射手」・・やり手の富豪アンソニイは、息子のリチャードを心配し訊ねると、金ではどうにもならない貴族の娘への結ばれぬ想いを打ち明けられる。旅立つ娘と最後に一目逢うリチャードは、叔母から母の形見の幸運の指輪を貰うが、彼女を送る途中の馬車でその指輪を落としてしまい、その間に辺りは凄まじい交通渋滞に。その時間に彼女に想いを伝え許婚になるリチャード。その渋滞を引き起こすべく尽力したのは、他ならぬ彼の父だった。

☆「桃源郷の短期滞在者」・・ブロードウェイにある、隠れた優雅な避暑地風のホテル。品のいい客達ばかりだが、ある日このホテルに相応しい一人の女性が現れ、誰もが彼女の孤高の美しさに酔う。その3日後に一人の青年が現れ、彼女のハンカチを拾ったことで食事を共に。風雅な会話を交わしていくが、彼女は旅立つ前夜に、実はデパートの売り子で、この1週間のために1年倹約し憧れて来たことや、最後の1ドルを見せドレスの支払いに宛てるのだと打ち明ける。青年はその1ドルを受け取り受領書を書き、自分もローン会社の社員であり同じように休暇を過ごしたと話す。二人はこの土曜日に、自分達に見合ったデートの約束をする。

☆「水車のある教会」・・忘れられたような小さな村にある唯一の教会は、エイブラハム神父と呼ばれる男が建てたもの。彼は今は別の地で大きな粉屋を経営しており、この村に何か災害がある度、教会を通して無料で小麦粉を振舞っているが、その昔、かの水車小屋で粉屋をしていた時、幼い娘アグレイアが行方知れずになり、見つからぬまま別の地に移ったが妻も喪った。今回も想い出の村で過ごしていたが、ある日一人の孤独な自立した娘が現れ、その優しさから二人は良い話し相手に。水車小屋で、彼は娘に過去を話し、娘も、想う相手がいるが自分は実は孤児なので求婚を受け入れられないと。それぞれの思いに浸っていた時、古い屋根から粉が落ち、彼は白く粉塗れになったことで昔アグレイアと歌った粉屋の歌を口ずさむ。それを聞いた娘は思い出したように、アグレイアが当時いつも夕食に父を呼びに来て言うフレーズを口にする。

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2010年4月25日 (日)

本140・・トリコロール/青の愛/白の愛/赤の愛

トリコロール/青の愛/白の愛/赤の愛・・キェシロフスキ&ピェシェヴィチ著

51gikibs4vl__sl500_aa300_☆「青の愛」・・パリ。愛する夫と娘を車の事故で失ったジュリーは、全てがブルーな(子供部屋の色やシャンデリア)色合いの中で自己を回復するために家も別荘も売り払い、マットレスしかないがらんどうの部屋で、夫との共通の友人であるオリヴィエと一夜を共にする。次の日から独り移り住み、夫に愛人がいて身重であることを知る。今はオリヴィエのところにある青いマットレスへ・・

☆「白の愛」・・ワルシャワ。雪のように白い肌のドミニクは、美容師であるポーランド人のカロルの、髪への指使いに惹かれ結婚。カロルは、ポーランドを捨てドミニクと暮らし始めるが、フランス語が出来ないためアイデンティティを失いがちで不能になる。ドミニクはそんな夫が物足りず離婚裁判に持ち込み、カバン一つでカロルを追い出す。何とかポーランドに戻れたカロルは、以前の店で働きながらドミニクの気を惹くために非合法まがいで金を貯めたり、ドミニクの気持ちが戻ってこないと知るや、自分が死んだことにし遺産を譲ると連絡させるが、殺人の罪をドミニクに被せるためだった。自分の葬式で泣くドミニクを見て計画を取りやめようとするが、ポーランド語が出来ないドミニクは捕らえられる。二人のアイデンティティは・・

☆「赤の愛」・・ジュネーヴ。優しい赤が似合うモデルのヴァランティーヌは、あちこちを飛び回るジャーナリストのミシェルと恋に落ちるが、なかなか逢えないため擦れ違い始める。判事を目指す学生のオーギュストには年上の恋人がいるが、合格した頃恋人の裏切りに遭う。ヴァランティーヌは犬を轢いてしまった事で知り合った、その飼い主の盗聴マニアの元判事に惹かれて行くが、ミシェルに逢うためロンドンに向かう。元判事も、ヴァランティーヌと出合ったことで盗聴を止めるべく自首し・・

エピローグ・・イギリスとの間のドーバー海峡で、大型フェリーが沈没し大惨事に。救助された7名の名は、フェリーのバーテンの他、ジュリー、オリヴィエ、カロル、ドミニク、ヴァランティーヌ、オーギュスト。ニュースでは、ヴァランティーヌとオーギュストの映像が大写しに。

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2010年4月24日 (土)

本139・・青い鳥

青い鳥・・モーリス・メーテルリンク著

51zmhp3gmcl__sl500_aa300__2クリスマス前夜、貧しい木こりの小屋に、小さなベッドを並べてチルチルとミチルの兄妹が眠っており、ストーリーは二人が辿る夢物語である。

妖女に頼まれて、二人は<青い鳥>を探す旅に出る。ダイヤモンドの付いた魔法の帽子を貰った二人は、光や犬、猫やパン、砂糖や火、水たちと賑やかで不思議な旅をする。「思い出の国」で祖父母に出会い「夜の御殿」「森」「墓地」「幸福の花園」「未来の王国」と青い鳥を探し続けるが、見付けても色が変わったり死んでしまったりで、青い鳥は手に入らないまま一年の月日が流れる。二人は家に帰ることになり、そこで夢から覚めるのだが、そこへ隣のおばあさんが来て、病気の娘がチルチルの鳥を欲しがっているからと言い、あげる事にする。振り返って二人の鳥を見ると青く変化していて、随分遠くまで探しに行っていたが、その鳥はここにいたんだ、と気付く。隣の娘の病気が治り、チルチルと青い鳥に餌をやろうとすると、青い鳥は逃げて飛んで行く。

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2010年4月21日 (水)

本138・・女ごころ

女ごころ・・ウィリアム・サマーセット・モーム著

18495693原題は「丘の上の別荘」。

若い美貌の未亡人メアリイを巡る三人の男。少女の頃からの彼女を知っていて一筋に思い続けて来た、地位も名誉もある大人の男エドガー。オーストリアから亡命して来た年下の貧乏青年カール。出は良いが仕事もせず風采も上がらない、女誑しの悪評の高い同年輩のロウリイ。面白いが放蕩であった夫を亡くして一年のメアリイは、エドガーに求婚されロウリイにも誘惑される。ある日思いがけなくカールに出会い、女のロマンティシズムとヒューマニズムの満足のためカールと一夜を過ごすが、失望したカールに、エドガーから渡されていた拳銃で自殺される。窮地に陥った彼女はロウリイに助けを求め死体を処分するが、ロウリイを愛しているわけでもなく、エドガーの心理的負担になるのを承知で事の顛末を彼に告白してしまう。エドガーが去り、彼女は自分らしく振舞える相手だとしてロウリイに屈する。

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2010年4月19日 (月)

映画101・・グリーンフィンガーズ

グリーンフィンガーズ(2000・イギリス)

51tck14v3tl監督・ジョエル・ハーシュマン、出演・クライヴ・オーウェン、ウォーレン・クラーク・・

「グリーンフィンガーズ(天才庭師)」の才能を持った一人の囚人を巡る、 実話を基に描く。

人生を諦めた男コリン(オーウェン)は、イギリスのコッツウォルズにあるエッジフィールド更生刑務所(塀、檻、厳しい束縛など無い、画期的な方針)に移送、快適な環境にも心を閉ざし、仲間達とも馴染もうとしない。同室の老人ファーガス(クラーク)に貰った花の種が土が悪いのに花を咲かせ、所長はコリンに庭造りを命令。所長が名指した仲間は、園芸に向かない連中ばかり。コリンは植物を育てる楽しさを知り、ガーデニングの才能に目覚める。彼は次第に心を開き、更正の一環として仲間達と協力、刑務所の敷地内に花満開の見事な庭園を作る。彼等は「囚人庭師チーム」となり、陛下も鑑賞する由緒あるガーデニングコンテスト「ハンプトン・コート・パレス・フラワーショウ」へ出場の話が。その栄誉に奮起した囚人庭師達は一致団結で入賞を目指すが、民間の庭造りをした先での盗難事件で話が流れる。刑期を終えたコリンは、彼等を応援してくれた人の娘のもとに行くが、満足な仕事も無い所へ、再び囚人達がフラワーショウに出品出来ると聞き、彼女への花を盗み刑務所に戻る。ファーガスが死に、彼へのオマージュとして野性の庭を作り、賞は取れなかったが陛下が彼等の作品を気に入り宮殿に招待される。その後、囚人達の作品が次々と賞を取るように。

過去に犯した衝撃的な事件が原因で虚無的になる主人公と、温厚な老囚人との(2人とも殺人囚)関わり合いがほのぼの。

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2010年4月17日 (土)

本137・・ロレンス短編集

ロレンス短編集・・D・H・ロレンス著

51n48d84q5l__sl500_aa300_☆「プロシャ士官」・・二人の男子間の同性愛的要素が、意識面に於いてはその反対の憎悪として相互に感ぜられ、結局は部下の上官殺しの果て、その場から逃れるように彷徨い情死の如き形で行路死する。

☆「春の陰翳」・・美しい田園風景を背景に、都会に出て学問を身に着け出世した男が、連絡を絶やさずにいた女の下を訪れるが、女は森番の男と婚約していた。二人の男とその狭間にいる女との、それぞれの気持ちの行き違いが描かれる。

☆「薔薇園に立つ影」・・結婚前に恋人がいて(別れて戦場に行き、熱射病に罹り数ヶ月後に死亡とされる)その頃知り合った今の夫と結婚した女。彼女は、懐かしい薔薇園に行きあの頃の余韻に浸る日々だが、ある日、ふと以前の恋人が現れる。意外なことに、その恋人が今は狂人になっていて、自分のかつて愛した女に気が付かない。薫り高い輝くばかりの薔薇園と、ショックで打ちひしがれる妻と、彼女の心ここに有らずの姿にうろたえる夫との対比が無残。

☆「馬で去った女」・・メキシコのある鉱山町で、単調な結婚生活に飽きた女が、夫の留守を狙って子供も何もかも置き去りにし、独り馬に乗ってインディアンの部落を目指す。不思議な体験を味わい、インディアンが太陽と月を取り戻すため、自ら進んで人身御供に捧げられる。

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2010年4月16日 (金)

映画100・・プレッジ

プレッジ(2001・アメリカ)

20110625_594053原作・フリードリッヒ・デュレンマット 、監督・ショーン・ペン、出演・ジャック・ニコルソン、ロビン・ライト・ペン、ベニチオ・デル・トロ、アーロン・エッカート・・

ある雪の夜、一人の少女の遺体が発見。その日が引退の刑事ジェリー(ニコルソン)は、少女の母親に懇願され、何かが憑依したように犯人捜しを約束。ワデナ(デル・トロ)というインディアンで知的障害者の男が逮捕され、若い刑事スタン(エッカート)の誘導的な取り調べで自白し、助手の拳銃を奪い自殺。事件は落着かに見えたが、定年後のジェリーは一人で事件の足跡を辿り始める。少女の通っていた学校で、殺される直前に描いた絵を手に入れる。彼は犯人が最も姿を現わしそうな地点を推測し、そこに立つガソリンスタンドを買い取る。近くのダイナーで働くウェイトレスのロリ(ペン)と知り合い、彼女とその娘の3人暮らしが始まる。少女に付き纏う奇妙な男を怪しく思ったジェリーは、その男が事件の犯人だと確信。彼は応援を呼んで、少女に犯人が近付くのを見張るのだが、殺人鬼は現われず応援は引き上げる。その頃、容疑者は事故で死亡していたのだ。娘を囮にされたロリは出て行く。ジェリーの確信は妄想となり、酒に溺れ取り憑かれたよう・・普通の人生に引き返すためのターニングポイントは幾つもあったのだが、常に間違った選択をする悲劇。

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2010年4月14日 (水)

映画99・・フル・フロンタル

フル・フロンタル(2002・アメリカ)

445監督・スティーヴン・ソダーバーグ、出演・ジュリア・ロバーツ、デヴィッド・ドゥカヴニー 、キャサリン・キーナー 、メアリー・マコーマック、デヴィッド・ハイド・ピアース、ブレア・アンダーウッド、エンリコ・コラントーニ・・

ロサンゼルスのショービジネス界とその周辺で生きる8人の男女の24時間を描く群像劇。

金曜日のロサンゼルス。ストレスを抱える会社人事部長の女性リー(キーナー)は、脚本家兼雑誌ライターの夫カール(ピアース)に離婚を告げる置き手紙。カールはそれに気付かぬまま出勤。リーに愛人がいて、映画スターのカルヴィン(アンダーウッド)なのも知らない。しかも編集長に解雇通告される。カルヴィンは、女優フランチェスカ(ロバーツ)と映画を撮影中。劇作家のアーサー(コラントーニ)は、今夜が舞台の初日でヒトラー役の俳優に悩まされ、インターネットで知り合ったリーの妹のマッサージ師リンダ(マコーマック)とデートの予定。マッサージを頼まれたリンダがホテルの一室を訪ねると、映画プロデューサーのガス(ドゥカヴニー)が偽名で待ち、500ドルで別のマッサージをと。今夜はガスの誕生パーティー。招待客達が集まるが、ガスは現れず、リンダが訪ねると部屋でナルシスト自殺。パーティーは潰れ、帰宅したリーは、自分への愛情を示すカールとの仲を修復。アーサーとリンダは、お互いを約束のデートの相手と知らぬまま、飛行機の中で意気投合。

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2010年4月11日 (日)

本136・・ルーヂン

ルーヂン・・イワン・ツルゲーネフ著

9784003260838田舎の地主・ラスンスカヤ邸に偶然現れた、30代半ばのルーヂン。沈滞し切った古い環境の中で、彼は泥沼に舞い降りた鶴のような颯爽たる感じを与え、縦横に発揮される溢れるばかりの才気や鋭い警句、情熱的な雄弁は周囲の者達を感嘆させ、殊に夫人達は彼を天才だと思うまでに。このような輝かしい人物は、さぞかし社会的にも立派な活動をしているように想像するが、実際には彼の生活は失敗の連続で、一見素晴らしい才気に富んだ男はただ人生の落伍者に過ぎない。ルーヂンの大きな欠陥は、現実を直視してこれに適応する能力を欠いていることで、いたずらに思想や計画を空に弄ぶばかりで、実行するための不屈の意思を持っていないこと。やがてラスンスカヤ家の令嬢ナターリヤにも、見掛けと違い意志が弱く現実に適応出来ない無責任さを見抜かれ、彼は邸を後にすることに・・時は移り、学生時代からルーヂンを知っていたレジネフは、初めこそ快く思わず疎遠であったが、年月を刻むうちルーヂンの良さをも認めるに至る。ラスト、レジネフはある宿でうらぶれたルーヂンと再会し、酒を酌み交わし、心のうちを話し合い別れる。その後、ルーヂンはパリでの国民暴動で、軍に撃たれ死亡。

ルーヂンのように憐れな惨敗者として消えていくロシアの知識人は多かったようで、本人の欠点もさることながら、封建的な社会機構が、その才能を活用し得る舞台を与えなかったこともあるそうな。

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2010年4月 8日 (木)

本135・・チェーホフ短編集

チェーホフ短編集・・アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ著

51d7jrvqwpl__sl500_aa300_☆「芝居がはねて」・・未だ恋を知らない思春期の少女が、芝居から帰ってその影響で、“思われる”という人生最初の拙い喜びに浸る。

☆「イオーヌイチ」・・若い男女の、相手に対する至らぬ振る舞いや、人間的力量の不足、想像力の欠如から来る小さな行き違いにより、取り返しの付かない不幸に陥る。

☆「中二階のある家」・・社会の変革に根本的に取り組むべきか、身近なところから始めるべきかの、男女の葛藤ともいうべき意見の対立に絡んで、女主人公の妹と主人公が引き裂かれて悲恋に終わる。

☆「知人のところで」・・互いに惹かれ合って、やがて結婚するだろうと思われていた二人だが、時の移ろいに妨げられて行く。相手の姉妹やその連れ合いなどの、現実を見ずに享楽し没落していく姿に長年振り回されるが、時が経ちやっと解き放される。

☆「かわいいひと」・・一見、不幸な結婚生活の連続でありながら、晩年になって血の繋がらない(愛人の息子)少年に対する母性本能に目醒め、新しい愛の人生が開かれる。相手に全面的に影響されるため自分の意見を一切持たず、絶えず身近な誰かに愛を感じ無私の愛を注がずにいられない、運命が変われば以前のことはすっかり忘れ、目前の対象に打ち込む女性。

☆「犬をつれた奥さん」・・初めは軽い気持ちで関係を持った所帯持ち同士が、次第にその愛情が真剣になり、現実が解っていながら引きも出来ず、のっぴきならぬところに追い込まれようとして行く。

☆「アリアードナ」・・不相応な暮らしを望む驕慢で破廉恥な女、その彼女との困難な生活に於いて、幻滅し破綻を感じるものの振り回され続け、彼女と他の男との結婚を夢想する主人公。

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2010年4月 3日 (土)

本134・・決闘・妻

決闘・妻・・アントン・パヴロヴィチ・チェーホフ著

400326231x「決闘」・・夏の黒海を舞台に、異なるタイプのインテリの対立とその収束を描く。

意志の薄弱な無為の夢想家である役人のライェフスキイと、強固な信念の持ち主であり実行家の動物学者フォン・コーレン。フォン・コーレン曰く、「ライェフスキイは、この2年来この町に遊びと酒を教え、公然と人の女房と暮らし、役所でまともな仕事もせず不相応な暮らしで借金を重ね、嘘と愚痴を言い続け、それ等の原因を自分以外に押し付け、嫌気が差すと逃げ出す」。ライェフスキイ曰く、「フォン・コーレンは、頑固で強烈な専制的な幻想家で、皆に監視の目を光らせ一々干渉する。自分を憎むのはそれに従わないからだ」。

一方、町の女性と違って見かけも知性も上だと信じ、ひたすら無為に暮らすナヂェージダは、欲望に負けて警察署長のキリーリンと関係を結ぶ。自分の思惑とは違い、良くしてくれた唯一の女性から「慎みが無く、立場を世間に恬として恥じず、身なりも商売風で料理も掃除もせず、男の身なりも構ってやらず、悪い人間ではないが無分別過ぎる」と諭される。彼女は、ライェフスキイに内緒で店屋に借金をし、そこの息子やキリーリンに付き纏われ、やがてキリーリンとの密会を暴かれる。

やがて、借金話で感情の行き違ったライェフスキイとフォン・コーレンは決闘することになるが、ライェフスキイは狙えず、フォン・コーレンは邪魔が入って外す。3ヶ月後、ライェフスキイはナヂェージダから逃げ出せず、結婚し窮乏しながらも真面目に仕事をし出し、二人の友人でもあったサモイレンコに促されたフォン・コーレンは、ライェフスキイに別れの挨拶をし予定通り冒険の旅に出発。

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2010年4月 2日 (金)

機織り・・その37

091105_36_0023セット、その6の②

山に地模様、暈しの雲。

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2010年4月 1日 (木)

本133・・かもめ・ワーニャ伯父さん

かもめ・ワーニャ伯父さん・・アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ著

419t62nyeml__sl500_aa300__2☆「かもめ」・・名声に憧れ家を出て劇団に加わり、流行作家の男に身を任せて子供を産み、後に男にも捨てられ、子供にも死なれて絶望に陥るニーナだが、やがて自分の仕事にとって大切なものが、かつて夢見た晴れがましい名声や栄光ではなく、忍耐力であることを知る。ニーナに去られた、芸術の革新を夢見る若手劇作家トレープレフは、現在の生の儚さやうつし世の無常を思い、それは同時に思索の停止に繋がり、長い人生が無意味なものに見え、ニーナとは違って、人生の過程を耐え忍んで行くことを信じ切れずに自殺。

☆「ワーニャ伯父さん」・・人間の労働という社会的な問題を踏まえて、対照的な人物配置の上に静劇の世界が築かれる。引退した通風病みで気難しい老教授と、若く優美だが何も果たさない生活をするその後妻。一生を領地の経営に捧げたワーニャ伯父さんと、その姪ソーニャ。ロシアの森の将来を気遣う医師アーストロフ。何故か亡き娘の婿を信頼し、周りの動静に無頓着なワーニャの母親。怠惰な老教授とその妻が移り住んでのこの一夏、田舎屋敷の生活の秩序は乱れ、誰もが振り回され、仕事のペースを乱されて行く・・アーストロフへの失恋の痛手を押し殺しながら、それでも生きねばと、ソーニャはワーニャ伯父さんに訴える。一生汗水流して領地の経営に従事した努力が老教授によって無視され、領地の売却を言い出されたワーニャ伯父さんは、動転して老教授を撃つに至るが果たされず、何とか和解し夫婦が発って後、自殺もならず、残された人生をじっと耐え忍んで生きて行かねばならぬとソーニャに諭される。

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