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2010年10月 9日 (土)

本162・・失われた時を求めて

失われた時を求め・・マルセル・プルースト著

41iq7zbraul__sl500_aa300_全10巻。1913年~27年まで掛かって刊行。

物語は、ふと口にした紅茶に浸したマドレーヌの味から、幼少期に家族揃って夏の休暇を過ごしたコンブレーの町全体が蘇ってくる、という記憶を契機に展開して行き、その当時暮らした家が面していたY字路のスワン家の方とゲルマントの方という、二つの道の辿り着く所に住んでいる二つの家族達との関わりの思い出から始まり、自らの生きて来た歴史を記憶の中で織り上げて行く。第一次世界大戦前後の都市が繁栄した時期、ベル・エポックの世相風俗を描くと共に、社交界の人々のスノビズム(俗物根性)を徹底的に描いた作品でもある。記憶と時間の問題を廻り、単に過去から未来への直線的な時間や計測できる物理的時間に対して、円環的時間、それがまた現在に戻ってきて今の時を見出し、円熟する時間という独自の時間解釈「現実は記憶の中に作られる」という見解を提起。

第1篇「スワン家のほうへ」・・三部から成る。夏の休暇を郊外のコンブレーで過ごした少年期の回想が描かれる。隣人スワンの娘ジルベルトに恋をする。 スワンが結婚するまでの物語を描いた「スワンの恋」の章は独立した小説としても読める。「私」が生まれる前の時期のヴェルデュラン邸のサロンが主な舞台。

第2篇「花咲く乙女たちのかげに」・・二部から成る。主人公が、スワン家に出入りでき有頂天になるが、ジルベルトとは次第に気持ちが擦れ違う。夏の避暑地バルベックでシャルリュス男爵と知り合い、同地で出会った少女達の内、孤児ではあるが後ろ盾のあるアルベルチーヌに恋する。

第3篇「ゲルマントの方」・・一家がゲルマント家のアパルトマンに引っ越す。サロンの社交界に出入りするようになり、シャルリュス男爵とも度々顔を合わせる。初めてアルベルチーヌにキスする。

第4篇「ソドムとゴモラ」・・主人公は偶然、シャルリュス男爵が同性愛に耽っているのを目撃しショックを受ける。ゲルマント公爵邸の夜会に出席。恋人アルベルチーヌの行動に次第に疑惑を持ち、別れを考えるが結局結婚を決意。

第5篇「囚われの女」・・パリの自宅でアルベルチーヌと暮らす。ヴェルデュラン邸のサロンで行われた演奏会に出席。

第6篇「逃げさる女」・・アルベルチーヌが突然いなくなる。その後、彼女は落馬し命を落とす。主人公はアルベルチーヌの過去を調べ、同性愛者であったことを知る。彼女を失ったことで後悔と苦悩の日々を送るが、ある日その悲しみが薄れているのを自覚。

第7篇「見出された時」・・第一次世界大戦の前後、パリの社交界も様変わりして行く。療養生活を送る主人公は芸術について思考を重ねる。ある日出席したサロンで、旧知の人々がすっかり年老いた姿を見て「時」について考える。主人公は自分の経験を書物に著すことを決意。

☆プルースト・・フランスの知識人で、作家でエッセイスト、批評家で美食家としても有名。パリ郊外のオートゥィユにある母方の伯父の家で、ブルジョワの高名な医師の息子として生まれる。喘息の持病を持ち就職せず、後に審美家として名声を成す。この作品は自伝的要素が色濃く、プルースト自身も含む同性愛が重要なテーマの一つで、秘書を務めた「恋人」が飛行機事故死したことが、主人公の恋人アルベルチーヌの死に置き換えられていると云われる。

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