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2010年11月27日 (土)

本168・・世界最終戦争の夢

世界最終戦争の夢・・H・G・ウェルズ著

60706☆「盲人の国」・・エクアドルのアンデス山脈の奥深くの谷間に、土砂崩れに因り外部世界から隔絶された場所があり、時間を経る内に奇病が流行り、村人は徐々に視覚を失い終には盲人だけになる。長い時を経て、 壮健な登山ガイドのヌネスが滑落し村に迷い込む。村人の全員が盲人であることを知ったヌネスは、英国の諺である「盲人の国では片眼の者でも王様だ」を思い出し、自分の優位性を考え自らを王様となるべき人間と考えた。この社会の特徴は一日が昼と夜でなく、暖時と寒時に分けられ、暖かい暖時に眠り寒い寒時に働くのが村の習慣、全員が盲人となって久しいため「見る」という言葉が無く、生活や労働の環境は視覚でなく聴覚や皮膚感覚などを前提とする。これは主人公ヌネスが持つ視覚を活用するのには不都合で、灯りの無い夜間は視覚に頼り難いため移動等に不利で、闇夜に歩道を外れるなどの失敗もあり馬鹿者扱いされる。この村社会では「見る」という概念を認識させることが不可能で、彼は逆に社会的ハンディキャップを負う。ヌネスはその国の一人の美しい女性と愛し合うようになるが、彼女は皆から「あの男は白痴で、妄想ばかりで何一つまともなことは出来ない」と反対される。彼等は眼と呼ばれる奇妙なものは顔に柔らかい窪みを作るために在るだけで、ヌネスの場合はそれが脳に悪い影響を与えるとし、簡単な外科手術でその物体を除去し、二人を結婚させようとする。手術が行われる直前、ヌネスはこの村を独り脱走する。

☆「故エルヴシャム氏の物語」・・ロンドン大学の医学生・イーデンは、幼くして両親を亡くし叔父に養子として引き取られるが、その叔父も四年前に死亡し、その遺産と奨学金でかろうじて医大に通う。住居は下宿先の小さな二階部屋で、隙間風が吹き通る有り様。貧乏学生のイーデンに、ある日見知らぬ老人が、自分の遺産を総て相続して欲しいと申し出る。一つだけ条件があり健康状態を調べさせてくれと。イーデンはその条件を承諾し、老人の指示に従って徹底した肉体の検査を受ける。その検査結果に老人は大いに満足し、初めて自分の身分を明らかにする。老人エルヴシャムは世界的に有名な哲学者。イーデンは遺産と共に、その大哲学者の名前までも受け継ぐことに。死期が近いと悟った老哲学者は、自分の総てを若くて頑健な医学生に譲渡することにしたのだ。その祝いの席で、老人はポケットから小さな紙包みを取り出し、天国(ヒンメル)になるからとピンク掛かった粉を酒のグラスに入れ、二人は乾杯。怖い夢で目を覚ましたイーデンは自分が老人の家にいることに気付き、自身があの老人そのものになっていることに愕然とする。老人は自身の知識や知恵をイーデンの若い脳に移し換えその若い身体を乗っ取り、イーデンには老人の家の鍵も貨幣一枚も証拠さえも残さなかったのだ。唯一残されていたのは「解放」と書かれた薬の小瓶だけ・・老人の遺産はイーデンに寄贈されていた。が、エルヴシャム(イーデン)が自殺を遂げる少し前、イーデン(エルヴシャム)は辻馬車に撥ねられ即死していた。

 

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