« 絵画84・・ホセ・デ・リベーラ | トップページ | 絵画85・・J=ジャック・エンネル »

2010年12月18日 (土)

本171・・幽霊船

幽霊船・・ハーマン・メルヴィル著

51n2bfkyotl__sl500_aa300_☆「バートルビー」・・語り手の弁護士の下に書記として雇われた、遣る瀬無く青白き青年バートルビー。文書の清書には几帳面だが、他の一切の仕事を恭しく拒み、「僕、そうしない方がいいのですが」とのみ言う。ある日曜の朝、事務所に立ち寄ると、バートルビーがそこに住んでいる様子。社会と一切接触せず、殆ど食事も摂らないような生活。仕事に差し支えるため、余所に移って他の職を探すよう言うも、同じ言葉を繰り返し、とうとう本来の清書まで拒み出し壁を見詰めるだけ。埒が明かないので事務所を移転すると、前の所から苦情が来る。その内、前の家主が警察に届け、バートルビーは獄へ。会いに行くが迷惑そうで、ある日再び訪ねると、彼は敷地の窪みで死んでいた・・その昔、ワシントンの郵務省「死に文係り」の下っ端書記であり、政権交代で免職になった、という僅かな風説を残して・・自然の性、世の悲運が因となり、蒼ざめた絶望へと傾斜し易い人間。この本然の絶望感を募らせる、朝から晩まで「死に文」を扱い、区分けし燃やすという生業。不服従は他への抵抗ではなく、自身の実存的苦悩から来る問題の解消方法で、絶望と無為に根ざす。我々が、「私はそうしない方がいい」が口癖のバートルビーの様に言えないのは何故か。このように無責任者流のパラドックスを、穏やかに、清浄に、阿呆のように押し通す人間を前にすると、虚を衝かれ、呆れ返り、相手が神か妖怪か大哲のように見えてくる。

|

« 絵画84・・ホセ・デ・リベーラ | トップページ | 絵画85・・J=ジャック・エンネル »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 絵画84・・ホセ・デ・リベーラ | トップページ | 絵画85・・J=ジャック・エンネル »