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2011年1月14日 (金)

本173・・ヴィヨンの妻・人間失格

ヴィヨンの妻・人間失格・・太宰治著

Neobk550931★「ヴィヨンの妻」・・元男爵の次男とされる帝大出の詩人・大谷。小金井の家はボロ家で、3人家族の家計はよく熱を出す育ち遅れの子供を医者に連れて行けない有様。大谷は数日も帰らないこともあり、ある時、入り浸っている中野駅の飲み屋から運転資金を盗み、追って来た経営者夫婦に辻褄の合わない言い訳を並べ逃げる。妻も金が入るから返すと嘘をつくが、その夜大谷が女連れで現れ金を返す。妻はそれ以前の借金の肩代わりにとその小料理屋で働き出すが、自分もある客と出来てしまう。翌朝店に行くと大谷がコップ酒を飲んでいて、新聞に人非人と書かれたが違うと言うと、人非人でもいいと妻は言う。詩人・矢野目源一がモデルとされ、「ヴィヨン」の云われは大谷がフランソワ・ヴィヨンについて論文を書いたというだけの繋がり。

★「人間失格」・・他人の前では面白可笑しく道化て見せ、本当の自分を曝け出せない男の人生(幼少期から青年期まで)をその男の視点で描く、自伝的小説。

①はしがき・・第三者の視点に依る、ある幼年時代や学生時代、奇怪な写真の感想。

②第一の手記・・恥の多い生涯を送って来ました、で始まり、まともに人と会話が出来ない自分は、人間に対する最後の求愛として道化を行うが、その本性は、女中や下男に犯されるという残酷な犯罪さえ語れず力なく笑っている人間で、結果的に欺きあう人間達に対する難解さの果てに孤独を選んだ、とする。

③第二の手記・・中学校時代、自分の正体を隠蔽し得たと思った矢先、竹一という白痴のような少年に「ワザと」失敗したと見破られ、発狂しそうな恐怖を覚える。東京の高校時代、画塾で知り合った年長の与太者・堀木にたかられ酒や煙草、淫売婦を覚え、堀木自身は興味も無い共産主義の会合に連れて行かれ、信奉者ではないがその非合法が逆に居心地よく、参加を続けるが忙しくなるに連れ気持ちが離れ、果ては人妻との情死事件を起こし自分は助かってしまう。

④第三の手記・・父の子飼いだったケチな渋田に引き受けられるが、逃げ出し堀木のもとを訪ねて邪険にされ、漫画家として売れ始めるとまたぞろ近付かれる。最後に求めた無垢な女性が出入りの商人に犯されても咎めも出来ず、堀木には罪人で死に損ないと見られ抗議も出来ず、絶望しアルコールを浴びるように呑み、ある晩、見付けた睡眠薬で発作的に再び自殺未遂。 その後は体が衰弱し更に酒を呑み、遂に喀血し薬屋で処方のモルヒネを使い中毒に罹る。実家に無心すると渋田と堀木が現れ、脳病院に入れられ狂人としてのレッテルに「人間、失格」と確信。父亡き後苦悩する能力さえ失い、故郷に引き取られるが27才にして廃人同然で、不幸も幸福も無く一切は過ぎて行く、という自覚の自白で終わる。

⑤あとがき・・第三者の視点に戻り、友人を訪ねた千葉の喫茶店のマダムから、葉蔵が送ってきた古いノートと写真を借り、狂人の綴った手記を寝ずに読む。翌日マダムを訪ね、自分達の知っている葉ちゃんは素直な神様みたいな子だったと聞かされる。

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