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2011年5月16日 (月)

本186・・リトル・ドリット

リトル・ドリット・・チャールズ・ディケンズ著

61iympwwvjl__sl500_aa300_人は牢獄の子供・・とする著者が、19世紀の華やかなロンドンの裏に潜む悲惨な生活や社会の矛盾、不正のしわ寄せを背負い込まされる貧しい者や弱い者達の姿を描く。

中国帰りの資産家アーサー・クレナムは、母親の家でお針子として働く、か細い体付きで酷く怯えた若い女性リトル・ドリットに出会う。興味を持ったアーサーは、ある夜彼女を尾行しマーシャルシー監獄に入っていくのを見る。リトル・ドリットの父ウィリアムは、破産し長いこと債務者監獄暮らしを家族と共にしていた。アーサーは不憫なリトル・ドリットを何とか助け出せないものかと奔走し、その結果、ウィリアムが親戚からの莫大な遺産を得、25年の監獄生活から開放される。ウィリアムとその家族は、何人もの女中や従者を連れ果てない豪華な旅に出る。監獄暮らしを思い出させる暗い影を帯びたロンドンから、明るい陽光のイタリアへ。宮殿での宿泊、上流社会での晩餐会・・環境の変化に一人適応出来ないリトル・ドリットは、戸惑いや不安をアーサーへの手紙に託す。その後ウィリアムの急死で彼女はロンドンに戻る。愛するアーサーは破産をし、マーシャルシー監獄で後悔と熱病の中にいた。クレナム家の崩壊により、アーサーの家系に関するかねてからの疑念が明らかにされる(リトル・ドリットはアーサーの母の頼みでアーサーに未だ知らせず)。アーサーに献身的な愛を捧げるリトル・ドリット。ウィリアムに因りアーサーと同じ投資で資産を失くしたリトル・ドリットとアーサーは、アーサーの債務が解けたことで結ばれ、現実の喧騒と濁流の中に足を踏み出して行く。

★アーサー・・母により、愛無く自由な意思を拘束され、積極性の欠如と優柔不断になり、親の犯した罪(弱者への搾取)への不安と恐怖に囚われている。

★クレナム夫人・・冷たく強情な女で、結婚したアーサーの父(その叔父に因り、アーサーの性格と同じ)に女と子供がいることを知り、女から子供(アーサー)と財産を奪い幽閉し死に追いやる。叔父の遺言書の補足を故意に隠し、女やその世話をしたウィリアムの弟(リトル・ドリットの叔父)への遺産も全て我ものに。

★ウィリアム・・マーシャルシーに入ったばかりの頃はまだ人間らしい気概を持っていたが、その環境の汚れに見事に染まり堕落。自分は他の囚人とは違い紳士であり獄内の大先輩として、取り巻く現実を誤魔化し、周囲の人々に平然とたかり、リトル・ドリットの自己犠牲にも目を塞ぐ。出所するとアーサー等への恩も忘れ過去を切り捨てるが、昔の知り合いが現れた途端平静を失い、自ら過去を曝し死んで行く。

★リゴー(ブランドワ)・・単なる無教養な悪人ではなく、下卑てはいるが社会的な洗練を受けた紳士的悪人で、ラストは我欲のためとはいえクレナム家の秘密を暴く。

★リトル・ドリット・・母の死後、詰まらぬ見栄に狂奔する父とどうしようもなく俗物の兄・姉の世話をし、自身は影の中で目立たぬよう暮らすが自分の信じることには強く、恋ゆえに年の離れたアーサーをリード。

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