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2011年6月13日 (月)

本191・・おばあさん

おばあさん・・ボジェナ・ニェムツォヴァー著

61z7hcqff4l__sl500_aa300_チェコの近代小説の基礎を作ったと云われる著者が、チェコがオーストリアの属国だった100年前に書いた作品で、自分のおばあさんについて書いており、その他の登場人物もほぼそのまま。著者は一番上の孫娘のバルンカに当たる。

物語は、おばあさんが嫁いだ娘の家に住むようになり、忙しい娘に代わって家の中を切り盛りし、孫たちには沢山の物語を語り聞かせ、彼等はその物語の中から人間として生きていく上で大切なことを自然に学ぶ。特別なことが描かれるわけではなく、物語そのものにもそれほど起伏もない、ごく平凡な日々の情景が綴られる。その淡々と描かれる日々が幾重にも味わい深く、チェコの農村風景の長閑で限りない美しさが鮮やかに脳裏に浮かぶ。実際にはおばあさんが折り合いの悪いテレスカと暮らしたのは5年程で、その後は他の娘と暮らしたそうだが、物語の中では、教育は無いが神様への信仰心に厚く、深い知恵と勇気と温かい心を持ち、他人の不幸には熱い涙を流し相談相手になって来たおばあさんが、孫達も育ち上がり愛された皆に見守られて亡くなるラスト。

戦争中に夫のイージーを亡くしたおばあさんが、3人の子供達を連れ苦労して故郷に帰ったのは、子供達がチェコ語やその文化をを失わないようにするため。プロシア王に留まることを勧められ、子供達に立派な教育を約束されながらも、おばあさんは故郷に帰ることを選ぶ。国境を越えれば他国というヨーロッパに於いて、祖国や母国語というのはいつ失うかも知れないという危険に晒されており、一度戦乱の渦に巻き込まれれば国境の線など簡単に書き換えられ、国の名前が変わったりする環境の中で暮らすことの過酷さは歴史の中に今も新しい。

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