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2011年6月26日 (日)

本194・・父と子

父と子・・イワン・ツルゲーネフ著

61ezx15t3xl__sl500_aa300_農奴解放前後の、古い貴族的文化と新しい民主的文化の思想的相克を描く。若き主人公バザーロフに「ニヒリスト」なる新語を与えて嵐のような反響を巻き起こした作品だが、一切の古い道徳・宗教を否定し、破壊を建設の第一歩とするこのバザーロフの中に、当時のインテリゲンチャの一端が現れているが、世の青年子弟が挙げて悉く実行的熱情に燃えた緊張状態の中、バザーロフの冷淡で気難しい嘲笑的態度は、読み手の彼等にとって侮辱と受け取られた。バザーロフに於ける社会的理想の欠如は、思想が未だ成熟していないだけでなく、自己内部の自由を何よりも優先したため。斜陽の貴族の中にあって、平民であり新しい知識階級であるバザーロフは、あらゆるオーソリティを否定し、自ら選んだ科学でさえ無条件では信じず、「骨の髄からデモクラート」であり徹底的な個人主義である。恋をしても、軽蔑していたロマンチストの潜在を自身の内部に感じるや、憤りながら打ち勝とうとするが思うに任せず、かといって何らかの主義や理想に隷属し得なかったように愛の虜となることも肯んじられない。父母や友人達からの愛情も持て余し、死に望んでさえ、虚無に対する動物的恐怖に因って自我を蹂躙されまいとしながら死んで行く。人道主義的理想を持ち自然や芸術に愛着を感じる美学派と、既成権威を否定する物質主義の科学者のせめぎ合いが表現される。

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