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2012年3月 8日 (木)

本219・・時の娘

時の娘・・ジョセフィン・テイ著

51k9issn1vl__sl500_aa300_怪我で入院中のヤードの警部が、ふと手にしたリチャード三世の肖像写真を見、安楽椅子ならぬベッド探偵として博物館で働く青年の助けを借り、その風貌(聖者のように苦しみに満ちた)のミステリーを追う。

リチャード三世・・兄王エドワード四世亡き後、その二人の王子を、自らが無理に王位を継ぐため殺させた悪王とされる。

ヘンリー七世の下で存外に出世したモートン(カンタベリー大僧正)に、ボズワースの戦いで裏切られ惨殺されたリチャード。リチャードは兄王指定で二人の王子の摂政をするはずが、王子達が庶子である事の暴露により継承権が無くなり、リチャードが殺させる必要も無かった。むしろ同様に庶子であったヘンリーにも継承権は無く、ロンドン塔に幽閉されていた二人の行方を隠す必要があった。本来リチャード亡き後の継承者は、兄ジョージの息子であるウォーリック伯。二人の王子が殺されたことが当時何らの問題提起も記述もなされず、後年になってリチャードを敵とするヘンリー配下のモートンが記したのであって、それをトーマス・モアが写したものが現在まで教科書等に載る記述の元に。リチャード・・保釈の権利承認と脅迫防止を成す。ヘンリー・・薔薇戦争の一方であるヨークの家系を根こそぎ殺し、陪審を置かない不公正な高等裁判所を設けた。ヨークの町民がボズワースの戦いを記録している。「この日、我等の良きリチャード王は、無残にも惨殺されたもう。我等が町の大いなる悲しみなり」と。

チュードル朝後の17世紀スチュワート時代にリチャード擁護論が著わされ、18と19世紀にもされるが、未だ勝者の歪んだ論を歴史学者達は採る。歴史とは、著わす者によって如何様にも継がれるもの。

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