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2012年4月24日 (火)

本227・・回想のブライズヘッド

回想のブライズヘッド・・イーブリン・ウォー著

4003227735第二次大戦中、英国本土に駐屯する一連隊の寒々とした生活。語り手のチャールズ・ライダーは由緒ある邸宅を描く画家だが、今は軍務に服し中隊長。その日、連隊は移駐してブライズヘッドという大邸宅の敷地に駐屯。部下に訊かれたライダーは「ここには来たことがある」と・・

ブライズヘッドはマーチメイン侯爵の所領で、代々敬虔なカトリックだったが、今信仰を継ぐのは侯爵夫人と長男ブライズヘッド伯爵、次女のコーデリア。侯爵は一次大戦で部隊を率いヨーロッパ戦線に出ると、戦後は愛人とヴェニス暮らしで故郷に寄り付かず、長女のジューリアは社交界の花で信仰とは無縁に見え、次男のセバスチアンは奔放な生き方を求め監督する人々の圧力に絶えず悩まされる。ライダーはオクスフォード時代にセバスチアンと出会い、ひと夏をブライズヘッドに過ごし邸宅とその一家との関わりが始まる。

「古昔ハ人ノミチミチタリシ此都イマハ凄シキ様ニテ座シ・・」という、エルサレムを嘆く挽歌が、物語全体の情感の底に絶えず流れ、ブライズヘッド邸と一族の人生の崩壊を暗示。その崩壊の過程が、かつて人間が達成した文化の水準や趣味の高さとして華麗に描かれる。セバスチアンの運命は、意識にも浮かばない信念ゆえに、滅びていく姿を浮き彫りにし滅びるものの美しさを印象に残す。

公爵夫人や伯爵より、真の信仰を求めて得られず苦しむセバスチアンやジューリアの方が神に近いのか。アフリカに姿を消して以後消息を絶ったセバスチアンとの交渉も途絶え、大西洋の豪華客船上で、数年振りにジューリアと再会したライダーは、国会議員の妻となっていた彼女と激しい恋に落ち、互いの配偶者と別れ結婚を決意・・ブライズヘッドでの二年の生活後、侯爵が戻り臨終の床で無意識に十字を切ったかに見えた時、ジューリアは翻然と自分の非を悟り「神を相手に、神と対抗出来るほどの幸せを選ぶ」ことは出来ない、「悪いことをすればするほど、神が必要なの」と、ライダーに婚約解消を告げる。対し、不可知論者だがそれを理解したライダーは「それだけのことを言うのに、ずいぶん時間がかかったね」と。

再び舞台は駐屯地。ブライズヘッド邸(今は、夫人部隊として外地にいるジューリアの所有)にいるライダーに戻り、その再開された礼拝堂を訪れ、戦火にも消えなかった青銅のランプの灯が悲劇を見守ってきたのだと理解する。

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