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2012年5月 4日 (金)

本228・・ヘンリ・ライクロフトの私記

ヘンリ・ライクロフトの私記・・ジョージ・ギッシング著

18815547南イングランドの片田舎に隠栖して、独り古典と田園の世界に心豊かに生きるライクロフトの一年を綴る。主人公に仮託して描く、ギッシング(1857~1903)最晩年の作。

大抵の人に備わっているある平衡感覚が、初めから明らかに欠けていた。知的な頭脳はあったが、それは人生の日常の問題の処理には何の役にも立たなかった・・貧しくロンドンの屋根裏で記していた生活から一変、50歳を過ぎた頃、遠い親戚からの遺産でデヴォン州の外れに始めて自分の住処を見つけ、生活のために働くことなく暮らせる境遇になり、今、四季の移り変わりを楽しみながら、静かな余生を思索に耽りつつ平和な死を望む・・

懐疑があり、迷いがあり、抑圧された悲しみがあるが、それらを貫いて流れているもの。人間の愛情に飢え雑踏の中を放浪し、しかもなおその雑踏を敵視し孤立する。現実のなまの生活から自分を断ち切れず、しかも古典へ沈潜しないではいられない。無常観を克服しようとするストイックな精神が内部に存在し、内的相克と苦しみを赤裸々に露呈してみせる。貧乏に苦しみ、様々な挫折に苦しんできた自分の姿を・・牧歌的な情緒が、ライクロフトが体験した醜悪な都会を背景に理解され、反社会性も、矛盾し対立し、アンビヴァレンスを体験した人格が最後に自分に忠実になろうとして叫んでいる告白。

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