« 絵画234・・カスパー・フリードリヒ | トップページ | 絵画235・・アントニエッタ・ヴァラッロ »

2013年5月 7日 (火)

本246・・アレクシス

アレクシス・・ユルスナール著

30887777_2副題・・あるいは空しい戦いについて

貧しい貴族の家門に生まれた若き音楽家アレクシスが、一人の子供さえ生したにも関わらず、二歳上の美しく善良な妻モニックの許を去ろうとして書き残す手紙。

その一人称の言語表現は、思慮深く慎重な緩慢さや、自身を捉えた不安と拘束の網を解こうとする辛抱強さ、官能性への敬意を守ろうとする遠慮深さ、精神と肉体を和解させようとする意図が覗えるが、己の徳を良しとする認識には未だ達していない。

アレクシスの内面の性向は不安と秘密の度を弱めていず、ある種の階層の人々を支配する相対的な気安さも、今なお大衆の中では多くの誤解や偏見を産む。完全に女性達に支配されていた清教徒的な幼年時代。愛とは無縁に味わった快楽への偏愛や後を引く執着への警戒。彼は妻の許を去る理由として、生き続けるための自由、嘘で汚されない性的自由の探求を挙げる一方、結婚という既成の安楽さや社会的対面から逃げ出したい思いも。

結婚以来触れていなかったピアノ、渇きを癒す音楽を求め弾き出すアレクシス。「あらゆる可能な音が鍵盤の中に眠っているように、この手の中には未来の仕種が含まれている。その手は肉体の周りで、抱擁のたまゆらの喜びを結び、目に見えぬ楽の音の形を撫でる」。

|

« 絵画234・・カスパー・フリードリヒ | トップページ | 絵画235・・アントニエッタ・ヴァラッロ »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 絵画234・・カスパー・フリードリヒ | トップページ | 絵画235・・アントニエッタ・ヴァラッロ »