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2013年12月

2013年12月29日 (日)

本262・・往復書簡

往復書簡・・湊かなえ著

A0153243_23343273「20年後の宿題」・・高校教師の大場は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行き、彼等のその後を手紙で報告していく。先生は大場を教える前年、他の小学校である事故に遭遇。先生が夫と共に6人の生徒を引率したピクニック(母子家庭で、ラブホテルで働く母親の仕事を作文にする課題の出た古岡と、気遣った積りの、酒乱の父を持つ利恵との喧嘩が拗れ、その仲直りを兼ね)での川遊びで、生徒(良隆)が溺れ、救けようとした先生の夫が溺死。大場は6人の人生を知る内に、漠然とした自分の人生観が変わっていく。泳げない(病も持つ)先生の夫に、パニックでしがみ付き暴れていた良隆を離し、夫を救おうとした先生。それを見た生徒達の先生への不信や、それぞれの罪悪感。喧嘩をしなければ、自分が溺れなければ、たとえ無理でも泳げた自分が救けに行けば・・最後に面会した利恵は、現在の大場の彼女だった。二人の関係が壊れそうになるも、入院中の先生からの手紙で救われる。

「十五年後の補習」・・突然、国際ボランティア隊で発展途上国に赴任する純一に、恋人の万里子は驚く。遠距離で経緯を語り合う中、万里子の記憶喪失で封印されてきた15年前の事故が蘇る。純一の友人である一樹と康孝は、親の素行(一樹の母に貢ぐ康孝の父)をあげつらい仲違い(康孝の侮蔑発言と一樹の暴力)が募る。止めない純一と仲裁する万里子。ある日、倉庫の火事で一樹は焼死、すぐ後康孝は飛び降り自殺。巻き込まれた万里子は事件の記憶を失くし、万里子を救けた純一は火傷を負う。万里子を守るため真実を隠し、嘘を貫き通そうとする淳一。記憶を取り戻していく万里子・・康孝に閉じ込められた倉庫で一樹に襲われた万里子は、一樹を角材で殴り殺し意識が遠のく。駈け付けた淳一は事実を見て取り、倉庫内に火を付け万里子を救う。康孝を自殺へと追い詰めてしまった淳一は、万里子は時効だが、海外赴任で自分の時効は未だである事に満足していると最後の手紙を記していると、外が騒がしく、万里子の幻か・・

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2013年12月26日 (木)

絵画274・・ヴィクトル・マダラース

ヴィクトル・マダラース(1830~1917)

ハンガリー画家。48年のハンガリー革命に従軍。53年からウィーンアカデミー、ヴァルトミューラーの私塾、その後パリでレオン・コニエに学ぶ。

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2013年12月22日 (日)

本261・・鏡子の家

鏡子の家・・三島由紀夫著

51bkqi8vhl無限に自由な少年時代は消えたと自覚する4人の青年は、目の前に大きな壁を感じている。「その壁をぶち破る」と峻吉。「壁を鏡に変えてしまおう」と収。「その壁に描き、壁画に変えよう」と夏雄。「壁自体に化けてしまおう」と清一郎。

世界の崩壊を信じるエリート社員・清一郎、私大の拳闘選手・峻吉、天分豊かな画家・夏雄、美貌の無名俳優・収。彼等はそれぞれに生き方に確信を持ち、ストイシズムを自らに課し、他人の干渉を許さない。名門資産家令嬢・鏡子の家に集まって来る4人の青年達が描く生の軌跡を、朝鮮戦争後の退廃した時代相の中に浮き彫りにする。

物語は、1954年からの2年間に、彼等の運命が上昇し、下降して行く4本の平行線条を描く。鏡子すら彼等の運命に影響を及ぼさず、彼等が自分達を映す鏡の役割のみ。4人のそれぞれの生活圏で、その拡大や収縮が走馬灯式に旋転する。

清一郎は赴任先のニューヨークで妻をゲイに寝取られる。峻吉は日本チャンピオンに成った晩、チンピラに拳を潰され再起不能となり右翼へ。収は自堕落な母の借金で高利貸の女に身売りし、サディスティックな遊戯の内にこの醜女と心中。4人の内、夏雄だけが破滅から立ち直る。青木ヶ原の樹海で虚無に陥り描けなくなるが、ある朝、枕元の一茎の水仙の形象美が彼を現実と和解させる。財産を使い尽くした鏡子は、追い出しその後豊かになった夫を迎える。

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2013年12月19日 (木)

絵画273・・ジョセフ・ライト

ジョセフ・ライト(1734~1797)

イギリス画家。ダービー出身で、ライト・オブ・ダービーと称される。産業革命の精神を表現し、明暗法に優れる。51年からレノルズの師であったT・ハドソンの下で2年、56年から再び15ヶ月学ぶ。65年から芸術協会等に展示し始め、73年からイタリアで研究。84年からRアカデミーメンバーに選出されるも辞退するが、94年まで出品。

The_lady_in_miltons_comus_2 Romeo_and_juliet  The_dead_soldier_2 An_experiment_on_a_bird The_widow_of_an_indian_chief_2

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2013年12月15日 (日)

本260・・贖罪

贖罪・・湊かなえ著

20130526163447015年前、田舎町で女児がレイプ殺害された。一緒に遊んでいた4人の女の子達は、犯人と思われる男と言葉を交わした筈が、何故か顔を思い出せず、事件は迷宮へ・・

3年後、町を去る前に、娘・エミリを喪った麻子は彼女達に告げる。あなた達を許さない、必ず犯人を見付けなさい、出来ないのなら私が納得出来る償いをしなさい、と。

十字架を背負い成長した4人に降り掛かる悲劇の連鎖・・

∇紗英・・一人生理の始まっていたエミリが殺されたことで、大人になったら自分も・・と恐れ生きて来たため、25歳現在も生理が無い。麻子の夫と血縁の孝博に求婚され海外での新生活を始めるが、昔のフランス人形盗難事件の犯人が彼と知り、その異様な性癖に怯え、争った弾みに彼を殺してしまう。

∇真紀・・しっかりした子だと言われ育つが、事件直後、恐怖で家に隠れた事に忸怩たる覚えがあり、長じて小学校の教師に。プールの授業で異常者が暴れ込み、先輩教師が逃げたため、当時の事件の像が重なり犯人をプールの中へ蹴り倒す。自分の刃物で傷ついていた犯人は失血死。

∇晶子・・男っぽく平凡で、優しい兄・幸司を持つが、事件後、引き篭もりに。出来の良い幸司が、子持ち(娘・若葉)で過去のある女・春花と結婚。兄の家を訪ねた時、若葉に性的悪戯(春花が性交渉を拒否し、娘を宛がった)をする兄にエミリの事件が重なり、心神喪失状態で兄を殺してしまう。

∇由佳・・姉・真由を偏愛する母に、事件直後も顧みられない。寂しさから警官に懐き、その警官移動後は万引きに手を染める。姉の夫が警察官でもあったため、一途な思いで身篭る。気侭な真由に知られるのを恐れた義兄に詰め寄られ、殺される恐怖で階段から突き落とし、義兄は死ぬ。

∇麻子・・娘・エミリは、結婚前に妊娠した子。お嬢様育ちで、友人・秋恵を翻弄し、自殺した彼女と相愛だった南篠が父親。

・・麻子が隠していた秋恵の遺書を偶然発見し、当時の経緯を知った南篠は、麻子を恨みエミリをレイプし殺したのだ。実の娘だとも知らず・・

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2013年12月12日 (木)

絵画272・・ギュスターヴ・ドレ

ギュスターヴ・ドレ(1832~1888)

フランス画家。独学で15歳から画家として活躍し、パリ移動後はダンテやミルトン、バイロン、ポー等の挿絵画家。聖書や戦争風刺画等、あらゆるジャンルを手掛け生前から著名、数多の画家への影響多大。

Jacob_and_angelThe_deluge  A_heroine_florine_of_burgundy Elaine Judgement_of_solomon Paolo_and_francescaYoung_beggar  Andromeda_4 The_martyrdom_of_the_holy_innocents

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2013年12月 8日 (日)

本259・・容疑者Xの献身

容疑者Xの献身・・東野圭吾著

20080815233816_2靖子は娘・美里とアパートで二人暮らし。ある日、靖子の元夫・富樫が疫病神のように現れる。暴力を振るい金を無心する富樫を、靖子と美里は喧嘩の末に殺してしまう。今後を思い呆然とする母娘に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神。彼は自らの論理的思考に拠り二人に指示を出す。

3月11日、旧江戸川で死体が発見される。警察は遺体を富樫と断定、花岡母娘に目を付けるが、捜査が進むにつれ、あと1歩で悉くズレが生ずる。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者・湯川に相談。石神と湯川は大学時代の友人で、互いに才能を認め合っていたが、20年が経つ。現在、湯川は大学の研究室に、石神は家庭の事情で高校の数学教師。湯川は当初この事件を傍観するが、やがて石神が絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出す。

「人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのでは、どちらが難しいか」、「思い込みに因る盲点を突く、とは」、「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうか確かめるのとでは、どちらが簡単か」、「無駄な歯車など無い、その使い道は歯車自身が決めること」・・

草薙との友情をフイにしてでも、彼のプライド(人間の価値を内面や頭脳に置き、傍目など気にしなかった男が、自分は彼女に相応しい見栄えではないとする純情)に関わるとして、石神を疑い出した切っ掛けを話そうとしない湯川。

湯川が全てを見抜いたと気付く石神。富樫の死体の始末だけでなく、9日の犯罪を隠すため、10日に新たな殺人を犯してまで自らの退路を断った。靖子に真相を知らせないまま、ストーカーの汚名まで着て彼女の幸せを祈った・・

石神自首を聞いた湯川は、その心情を理解しながらも靖子に真実を告げる。激しく動揺する靖子の下に、美里の自殺未遂の知らせ。

早い起訴を望む石神を、湯川が訪れる。「その頭脳をそんなことに使わねばならなかった事が悲しい、二人といない好敵手を永遠に失った事も」と。靖子が現れ、ひれ伏し詫びる。慟哭する石神・・

過日、生きている意味を見失い自殺を図る寸前に、石神は、引越し挨拶で訪れた靖子母娘の綺麗な目に、数式の説かれる美しさと同じものを見たのだった。

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2013年12月 5日 (木)

絵画271・・エドワード・M・ウォード

エドワード・M・ウォード(1816~1879)

イギリス画家。Rアカデミーに学び、36年ローマに行き、38年聖ルカアカデミーで銀メダル。43年ウェストミンスター宮殿の壁画。フランス革命など描いた歴史画家。鬱病で自刃自殺。

King_lear_and_cordelia_2 The_concealment_of_the_fugitive_3 The_last_sleep_of_argyll_2 Judge_jeffreys_bullying Marie_antoinette_and_her_son

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2013年12月 1日 (日)

本258・・白夜行

白夜行・・東野圭吾著

20100427095750_00_40019年前、大阪で起きた質屋店主殺し。事件は決定的証拠が無く迷宮入り。被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂は、その後別々の人生を歩んで行くかに見えたが、二人の周囲に不可解な凶悪犯罪が次々と起きる。人の心を失った故の悲劇と闇を描く。

∇雪穂・・美貌の少女。小学生時代は暮らしが貧しく、質屋殺しの容疑者に母親がリストアップされた後、その母親を事故(?)で亡くす。その後目指す家の養女となり学業や作法を身に着けてゆくが、関わる人物は必ず不幸に遭う。

∇亮司・・母親の愛が薄く、幼少から暗く沈んだ瞳に感情の無い顔。人と交わることも少なく、学生時代から主婦売春の斡旋やゲームソフトの偽造・ハッカーなど裏稼業を歩む。年代物の鋏を愛用し、切り絵が得意。

∇笹垣・・大阪府の刑事。事件を担当する中、亮司と雪穂の周りで起きる謎の出来事に疑念を持ち、2人を追い続ける。最初の事件で芽を摘んでおけたらと悔いる。

∇今枝・・探偵。一成からの依頼で雪穂の調査。雪穂の生い立ちから亮司との関係に迫るが、青酸カリで殺される。

∇一成・・製薬会社の御曹司。大学時代にダンス部長。入部してきた雪穂を見た時から底知れぬ恐れを感じ、後にその動向を調査依頼。江利子に好意を持つが、ある事件で関係は途切れる。

∇江利子・・中学から、不思議な魅力を持つ雪穂に引かれ行動を共に。大学で一成と恋仲になるが、その直後に雪穂の姦計で、亮司に襲われる。

・・亮司の父は少女性愛者、生活のために娘(雪穂)を売る母。図書館で雪穂と出会っていた亮司は、父親と雪穂との場面を見たことで鋏で父を殺す。その後、雪穂の母がガス漏れ事故(少なくとも雪穂の見殺し。養女になるため)で死亡。

中学時代から、邪魔な女(再婚相手の娘まで)は亮司に襲わせ、排除又は懐柔し、男の良心と弱みに徹底的に付け入る雪穂。何故、レイプに拘るか。自身の経験から、相手の魂を奪う手っ取り早い方法だと信じるため。養母でさえ、仕事に邪魔と死期を早めさせる。最初から主導権を握り、覚悟して死んでいく亮司を、知らぬ人だと見棄てる雪穂。

冷たい闇を抱え、日の当たらない白夜の道を行く・・

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