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2014年3月 2日 (日)

本268・・桜の森の満開の下

桜の森の満開の下・・坂口安吾著

Img_977043_28707186_0_2ある峠の山賊と、妖しく美しい残酷な女との幻想的な怪奇話。桜の森の満開の下は怖ろしいと語られる説話形式で、花びらに掻き消えた女と、花吹雪の中の男の孤独・・女とは、肉体と魂とは、人間存在の本質に付き纏う悲哀を描く。
昔、鈴鹿峠に山賊がいた。旅人を襲い、連れの女が気に入れば自分の女房にした。山も谷も全て自分の物と思っていたが、桜の森だけは怖ろしく、満開の時に下を通れば気が狂うと信じていた。ある春の日、一人の美しい女を連れ帰る。女は、女中代りの醜い一人を除き他の女房を殺させる。山賊は我が儘な女の望みを叶え都に移り住むが、女は山賊に狩らせた生首で遊ぶ日々。嫌気の差した山賊が山に帰ると言うと、女も追いて来る。
女を背負い山に戻ると、桜の森は満開だった。冷たい風の中、桜の下を行く山賊が振り返ると、背中にしがみ付いていたのは醜い鬼婆で、山賊の首を絞めたためこれを振り落とし逆に鬼の首を締め上げる。我に返ると、女が桜の花弁に塗れ死んでいた。山賊は、桜吹雪の中で声を上げて泣き、女を揺さぶるといつの間にか花弁だけになっており、それを掻き分けようとする山賊自身の手も身体も、延した時には最早消えていた・・そこには、花びらと冷たい虚空が張り詰めているばかりだった。

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