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2015年2月12日 (木)

本284・・行人

行人・・夏目漱石著

51wkuokx73l_sy344_bo1204203200_語り手・二郎。その兄・一郎は学究の徒であり、気難しいとして妻や肉親からも理解されず敬遠される。孤独に苦しみながら我を捨てられず、理知の他に信じる事の出来ない一郎は、次第に神経過敏になり周りを巻き込んでいく。
慮った二郎は、兄の朋友・Hさんに旅に連れ出してくれるよう依頼する。
旅先からのHさんの手紙には、二郎達の識るそれとは違う兄の言動が綴られていた。具体的に思い悩む不幸な家庭人としてではなく、知識人の運命である極限的な孤独や知性そのものであり、禅の公案に置き換えられる様な水準で人間の「本体」を問う姿であった。知を持って問うても当然ながら得られる答えではなく、「多知多解」の煩いから悟りへの高遠さ・・
凡庸な者の前に頭を下げて涙する正しき人、それを敢えてする勇気を持つ人、それを当然だと判断出来る識見を具えた人、明晰過ぎて意識との不調和が起こるところに彼の苦悩がある。その不調和が、人格的には隙間となり成功の中に潜む破滅なのだ、と。
雲で包まれている太陽に、何故暖かい光を与えないのかと迫るのは酷だろう、この旅で自分もこの雲を払おうとしているが、家族もそうしたらいいでしょう、もしその雲を散らせないなら、本人のみならず誰にとっても悲しい事だろう、と。
手紙を認める傍らで眠っている一郎を見て自分を顧みる・・彼は眠りから覚めなかったらさぞ幸福だろう、しかし眠りから覚めなかったらさぞ悲しいだろう、と。

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