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2015年3月 5日 (木)

本285・・谷川俊太郎の詩・・

「死んだ男の残したものは」・・谷川俊太郎

死んだ男の残したものは ひとりの妻とひとりの子供
  他には何も残さなかった 墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは しおれた花とひとりの子供
  他には何も残さなかった 着もの一枚残さなかった
死んだ子供の残したものは ねじれた脚と乾いた涙
  他には何も残さなかった 想い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは こわれた銃とゆがんだ地球
  他には何も残せなかった 平和ひとつ残せなかった
死んだかれらの残したものは 生きてるわたし生きてるあなた
  他には誰も残っていない 他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは 輝く今日とまた来るあした
  他には何も残っていない 他には何も残っていない

「夕暮れ」・・谷川俊太郎
 
夕方、家へ帰ると 
   戸口で親父が死んでいた
珍しいこともあるものだと思って 
  親父をまたいで中へ入ると  台所でお袋が死んでいた
ガスレンジの火が付けっぱなしだったから 
  火を消してシチューの味見をした
この調子では 兄貴も死んでいるに違いない
  案の定、風呂場で兄貴は死んでいた
隣の子供が嘘泣きをしている 
  そば屋のバイクのブレーキがきしむ
いつもと変わらぬ夕暮れである 
  明日が何の役にもたたぬような

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