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2016年3月

2016年3月19日 (土)

本302・・自分の感受性くらい(詩)

自分の感受性くらい・・茨木のり子

―――
ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな
  みずから 水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
  しなやかさを失ったのは どちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな
  なにもかも 下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな
  そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな
  わずかに光る 尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ
  ばかものよ
―――
 
 

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2016年3月12日 (土)

本301・・北の海辺

北の海辺・・テーオドア・フォンターネ著

01572143_119世紀中頃の北ドイツ。デンマークにほど近い海辺の地に館を構えるホルク伯夫妻。侍従としてデンマーク宮廷に仕える夫。揺るぎ無いプロイセン精神に惹かれる教養豊かな妻。その厳めしい美徳から逃避する如く、伯爵は宮廷の奔放な女官に靡いて行く。
伯爵夫妻の信条の相違や互いの性格の違いが大きな役割を演じるが、幸福さえ伴いつつ17年も持続した夫婦の絆が脆くも崩れてしまう。
「冷たい風で彼を自分の下から追い立てた」とする夫。結果的に夫の不倫は実らず、周囲の進言もあり時を置いて夫妻は縁りを戻すが、一旦外れた箍は最早戻し様がない。
再縁して後も、夫婦の心情の行き違いを正視できない夫と、掛け替えの無いかつての愛しき日々と現在の在り様に孤独に向き合う妻。
古き民謡「世にあまた幸あれど、安らぎにまさるものなからん・・げに悲しきは憎む者、さらに悲しき愛する者」
・・夫にその言葉を残し、妻は海に身を投げる。

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