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2016年6月 4日 (土)

本306・・検事の本懐

検事の本懐・・柚月裕子著

51uyvjnflkl_sx230__2∇「樹を見る」・・県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める。嫉妬心と功名心でライバルを蹴落とそうと謀る男に対し、実直ではあるが負けん気のため森が見えなくなっていた男・南場。若い検事・佐方に目を覚まされる。
∇「罪を押す」・・出所したばかりの累犯者が起した窃盗事件の、裏に隠された真実を抉る。己の弱さのため家族も失った窃盗累犯者・小野。成人した息子からの手紙でせめて時計を贈ろうとし、店で時計を盗んだ少年に幼い息子を重ねた小野は罪を被るが、佐方にそれでは少年の“罪を押す”事になると諭される。
∇「恩を返す」・・10年振りに佐方を訪ねて来た結婚真近かの弥生。荒んでいた中学時代に強姦されたビデオをもとに現役警官に恐喝されていた・・訳ありではぐれ者同士だった高校生の佐方と弥生。不良等に絡まれ弥生は持っていたナイフで相手を刺し、自分のナイフだと庇った佐方。不良等を殺してしまいそうな佐方を弥生の絶叫が止めた。その後それぞれに懸命に生きようと約束し、佐方は借りは必ず返すと・・佐方はヤクザ紛いの警官に対峙し、弥生に返金しビデオと念書を渡し、警官を辞める確約を取る。
∇「拳を握る」・・東京地検特捜部を舞台に、“検察の正義”と“己の信義”の狭間でもがく。政財界を巻き込んだ汚職事件。地方からの応援要員となった佐方。事件のカギを握る容疑者・葛巻が逃亡し、佐方は容疑者の伯父・岩舘を取り調べる。真摯な岩舘から余命の無い老母を見舞いたいとの嘆願に、本人急病とし病院へ行かせる。老母の死に目に会えた岩舘は、連絡のあった葛巻に佐方の取り調べを受けるよう説得。佐方は裏取りも含め葛巻が無実と知り上層部に異議を申し立てるも退けられ、これを機に事件は解決したが両拳を握りしめ去る佐方。
∇「本懐を知る」・・横領弁護士の汚名を着てまで、恩義を守り抜いて死んだ男の心情を描く。幼い頃死病で父の友人・小田嶋に金銭的に世話になった佐方の父・陽世。後年弁護士となり、妻を亡くし嬰児の佐方を実家に預け、陽世は小田嶋の会社の顧問に。小田嶋が媒酌をした社員同士の清水と妻・亮子。小田嶋は夫が闘病中である亮子と関係し、清水の亡き後亮子は娘を産む。陽世は、亮子と娘の後顧を憂う臨終の小田嶋から極秘として多額の生活資金を預かるが、小田嶋の死後その金が公となり横領として獄中へ。家を売り返金し控訴もせず服役するが、息子に後を託し獄死。小田嶋と陽世の本懐を繋ぐ佐方。

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