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2016年9月

2016年9月29日 (木)

本310・・谷間の百合

谷間の百合・・オノレ・ド・バルザック著

200501_lフェリックスは王統主義の名門貴族生まれだが、野心家の母に蔑ろにされ育ち、モルソーフ伯爵夫人も似たような環境を過ごした。ある舞踏会でフェリックスはモルソーフ夫人に出会い、深い意味も知らずに夫人の肩に接吻する。その時、フェリックスは20歳、夫人は29歳。
その後、フェリックスが静養で訪れた明媚な谷間のある地の近所に夫人の館が有った。再会する二人。夫人には虚弱な息子と娘が有り、夫の伯爵は病的な自己中心的人物だった。フェリックスは夫人の大きな愛に包まれ、今後の社交界での様々な心構えなどを教わる。夫人は美しい谷間の白百合だった。
パリに引き戻されたフェリックスは国王に面接する機会を与えられ、一番閉ざされた社交界にも紹介される。その成功の陰には夫人の有力者への推薦と遠くからの忠告が有った。
数年後、夫人とのプラトニックな愛のもどかしさに耐えかねたフェリックスは、ダッドレイ侯爵夫人を愛人とするに到る。その後、その関係を知ったモルソーフ夫人は、彼等が彼の地を訪れた時、自分の嫉妬と闘いながら絶望しその死を早めてしまう。
パリに帰ったフェリックスはダッドレイ夫人と別れる。彼は最早彼の地に戻らない。彼がこの物語を執筆する時、夫人より26歳も年上だったモルソーフ伯爵はまだ生きており、その娘は結婚し、息子はその前年に死亡。
フェリックスは現在、伯爵夫人ナタリイに想いを寄せ、これはこの女性への書簡に始まり、次いで彼女に過去の秘密を解き明かす一種の告白の形をとるが、亡きモルソーフ夫人への追憶の深さを知ったナタリイは、彼の愛を受け入れず、その気持ちを伝えた彼女の書簡が小説の終わりに添えられる。
全編はさながら「田園交響曲」であって、谷間は清らかな愛の情熱に相応しい静かな宗教的な舞台である。

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