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2017年11月

2017年11月19日 (日)

本320・・未来のイヴ

未来のイヴ・・ヴィリエ・ド・リラダン著

9784488070045アリシヤは、その肉体を「夏水仙の暖かい白さ」に被われ、議論の余地なき全く世にも珍しい完璧な美女である。「永久に朽ちざる薔薇」の如く。
だが、造物主のいかなる手違いからか、彼女の魂は現実の「汚穢」によって完全に汚染され、この美女の内部には、あの「勝利のヴィナス」の肉体とは縁もゆかりも無く、気品も知性も無い「俗物の女神」が君臨していた。
アリシヤの非の打ちどころの無い外面の魅力の虜となったイギリスの青年貴族エワルド卿は「久遠の女性」を憧憬するロマンチストであったので、この理想と現実の乖離、異種混成減少に悩まされ、終に絶望のあまり自殺まで思い立っていた。
「あの肉体からあの魂を取り除けたら」と漏らした事で、大発明王エディソンは、かつて自身を貧乏のどん底から救ってくれた恩人である青年貴族のためにその願いを引き受ける。
約束の時、アリシヤと瓜二つの人形は完成する。「恋愛の初期の時間を不動化」し、理想の「時を永久に虜にした」人形ハダリーをエワルド卿に引き合わせるが、卿にはハダリーと分からず、それと知って、地上の愛が痛烈に愚弄され凌辱された様なショックを受ける。ハダリーの感性と品性・知性に触れ、葛藤の後、エワルド卿は「科学と天才の華」である人造人間ハダリーを故郷の城に連れ帰る事にする。
その帰国の途次、ハダリーは不慮の船火事によって海底の藻屑となってしまう。
卿からエディソンへの電文には「ハダリーノコトノミ痛恨ニ耐ヘズ、タダコノ幻ノ喪ニ服セム」と。
・・・著者自身も、ブルターニュの淵源を11世紀に遡れる名門貴族の出であるが、彼自身の時代には零落しており詩人・風刺家として流謫の民であった。

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